【第八章:大陸統治併呑】
ケンジはゴーレムトラックの荷台に腰掛け、冷めた目で地図上の「帝国」を指差しました。
「リゼリア、お前の言う通りだ。帝国なんてのは、非効率な身分制度と時代遅れの領土欲に固執する、システム上の『巨大なバグ』でしかない。100害あって1利なし。……放置すれば、せっかく整えた我が国のエネルギー効率が外側から削られる。物理的に『吸収・合併』して、一つのロジックで再起動させるぞ」
【帝国吸収合併ロードマップ:トータル・リブート】
ケンジは、ただの「侵略」ではなく、帝国という広大な土地と資源を「最適化」するための手順を提示しました。
1. 物理的な「無力化」(デミリタライゼーション): 騎士団100人に「2の20乗」の出力を許可。帝国の国境要塞、軍事拠点、騎士団を、一切の抵抗を許さず「解体バレット」で無力化します。 「命を奪うのは非効率だ。武器、防具、城壁……軍事力を維持するための『構造』だけを瞬時に解体し、一兵卒に至るまで戦う意味を物理的に奪え」
2. 帝都の「ロジック・テイクオーバー」: ゴーレムトラック100台が、帝都に「高級岩塩」「黄金の小麦」「魔導インゴット」を山積みにして突入。飢えた民衆に対し、帝国の腐敗した統治ではなく、ケンジの「合理的な豊かさ」を直接提示します。 「剣を捨てるならパンと数学をやる。皇帝に従い続けて飢えるか、俺たちのシステムに入って豊かになるか。……計算できる奴なら、答えは一つだ」
3. 旧体制の「完全消去」(ルート・デリート): 特権階級である皇帝、およびそれに寄生する腐敗貴族は、革命の不純物として例外なく拘束。彼らが独占していた富と土地を、即座に「王国の公共財産」へと書き換えます。
【合併後の「新帝国領」再編】
アンジェリカ: 帝国の旧軍事拠点を「自動生産工場」へ転換。
マーガレット: 荒れ果てた農地を「2 de 10乗」の土壌改良バレットで、南部を超える穀倉地帯へ再生。
エリザベス: 帝国の不透明な徴税システムを廃止し、王都直結の「リアルタイム経済監視網」を構築。
ヴィクトリア: 帝国の辺境に潜む魔物を掃討し、新たな資源供給ルートを開拓。
【リゼリア王女への最終確認】
「リゼリア、これは侵略じゃない。非効率な『帝国』という古いOSを消去し、我が国の『2の20乗システム』をインストールするだけの作業だ。これによって、大陸全体のエネルギー循環は完璧になる」
リゼリアは、帝国の地図が王国の色に塗り替えられていくモニターを見つめ、静かに頷きました。
「……吸収、合併、そして統合。大陸から『無駄な争い』という名のノイズを消し去るのですね。ケンジ殿、私がその広大な『新領土』のシステム管理者として、全責任を持ってロジックを回し続けますわ」
【現状報告:大陸統一の完了】
物理的統一: 帝国の全軍は解散。旧皇帝は廃位され、広大な土地は「王国・新開発区」として登録。
経済的統一: 通貨は王国の「エネルギー紙幣」に統一。物流コストは従来の1/256まで低下。
思想的統一: 帝国全土に「数学学校」を建設。子供たちは旧皇帝の名ではなく「円周率」と「べき乗」を唱和し始める。
「よし、これで邪魔な『ノイズ』は消えた。リゼリア、新領土の再開発予算の計算をエリザベスに手伝わせろ。俺は……ちょっと長めの昼寝に入る」
大陸に、これまでにない「計算された静寂」が訪れました。
ケンジはゴーレムトラックの助手席で、東の海平線を見つめながら最後のアイスキャンディーの棒を捨てました。
「リゼリア、お前もだんだん『物理的な効率』がわかってきたじゃないか。あいつらは、実体のない『信用』や『為替』なんていう曖昧な数式で、俺たちの実物資産を掠め取ろうとするシステムの寄生虫だ。放置すれば、せっかく大陸を統一して整えたエントロピーがまた増大し始める。……いいぜ。海の向こうの『商国』も、俺たちのロジックで強制合併してやるよ」
【商国吸収合併戦略:グローバル・デフラグ】
ケンジは、武力だけでなく「経済の物理法則」を用いた、最も冷徹で効率的な合併プランを提示しました。
1. 海上物流の完全独占: アンジェラのインゴットで建造した「2の20乗・超高速ゴーレム輸送艦」を100隻進水させます。
物理的優位: 帆船が風を待っている間に、磁場バレット推進で海を時速200kmで駆け抜けます。
商国の無力化: 彼らの生命線である「海運」のコストを、物理的な速度と容量でゼロに近づけ、商国の既存艦隊を経済的に「粗大ゴミ」へと変えます。
2. 貨幣価値の「ピュリフィケーション(浄化)」: エリザベスが、商国が発行する紙幣の「論理的欠陥」を突きます。
通貨攻撃: 実物のエネルギー(魔石・塩・麦)に裏打ちされた王国の通貨を市場に流し、商国の「信用」だけで膨らんだ通貨をハイパーインフレさせて紙クズに変えます。
吸収: 暴落した商国の主要ギルドや港湾施設を、王国の岩塩やインゴットで「買い叩き」、物理的に買収します。
3. 海域の「整理」(環境再定義): ヴィクトリアと騎士団が、商国が「守り」として利用していた外海の海獣や海流を「整理」します。
海流制御: 「2の20乗」の流体バレットを海底に配置し、王国と商国を結ぶ「超高速・定常海流」を人工的に生成。
海獣の資源化: 襲いかかる海獣は、騎士団が海中で解体し、そのまま商国の市場に「最高級食材」として流して市場を掌握します。
【商国の「再起動」】
アンジェリカ: 商国の腐敗した港湾都市を、機能的な「全自動積替基地」へ作り変え。
マーガレット: 土地が狭く食料を輸入に頼っていた商国に、縦型の「2 de 20乗・水耕栽培タワー」を建設し、食料自給率を100%へ。
エリザベス: 複雑な関税や手数料を廃止し、全世界共通の「リアルタイム取引プロトコル」をインストール。
【リゼリア王女への最終宣告】
「これで、海の向こうまで俺たちの『2の20乗』が届いた。リゼリア、お前はもう大陸の主じゃない。この世界の『全リソースの総管理者』だ。……商国の連中には、こう言ってやれ。『お前たちの不透明な帳簿は、我が国の物理法則に統合された』ってな」
リゼリアは、輸送艦の進水式を見守りながら、毅然と頷きました。
「……大陸を統べ、海を越え、世界の全ての取引を『理』のもとに置く。ケンジ殿、これがあなたの描く『摩擦のない世界』なのですね。私がその帳簿(世界)を、一ミクロンの誤差もなく守り抜きますわ」
【現状報告:全方位合併の完了】
世界統一経済: 全世界の通貨がエネルギー基準に統合。不労所得を狙う投資家は絶滅し、全員が「生産的な演算」に従事。
物理的インフラ: 世界中がゴーレムトラックと輸送艦で繋がり、物資の欠乏による争いが物理的に不可能になる。
教育の伝播: 商国の子供たちも、金の勘定ではなく、世界の構造を解き明かす数学を学び始める。
「よし、これで地球儀の隅まで白く塗り潰した。リゼリア、あとはお前が『自動修復プログラム』を走らせておけ。……俺は、海の音を子守唄にして、本当の、本当の意味で寝るぞ」
ケンジは、王宮のバルコニーで静かに目を閉じました。
ケンジはバルコニーの椅子に深く腰掛けたまま、薄く目を開けてリゼリアと四人の娘たちを見回しました。その視線は、感情的な憐れみではなく、極めて冷徹な「システムエンジニア」としてのそれでした。
「リゼリア、お前たちの古い世界には、人間を『所有物』として扱う奴隷や、種族の違いで差別される亜人、そして貧困の果てに体を売るしかねぇ娼婦なんていう、最高に**『エネルギー効率の悪いバグ』**が放置されてたな。……俺のシステムに、そんなゴミのような不合理は一箇所も残さねぇぞ」
【不合理な階級の完全解体ロジック】
ケンジは、新しく統一された世界の「基本コード」を書き換えました。
1. 奴隷制度の「物理的消滅」: 「人間を動力源にするなんてのは、石炭を燃やすより効率が悪い。2の20乗のゴーレムトラックと自動農園がある今、人間を縛り付けて働かせる意味がどこにある? 全世界の奴隷は即時解放だ。逆らう飼い主は、騎士団が『社会の不要物』として解体する」
解決策: 奴隷だった者たちには、教育(数学と読み書き)を施し、システムの「運用者」としての価値を与える。
2. 亜人差別の「論理的否定」: 「種族による身体能力の差? それは単なる『個体差』だ。エルフの演算力、ドワーフの硬度、獣人の瞬発力……。これらは差別対象じゃなく、適材適所の『リソース』だ。差別という摩擦で国力を落とす奴は、数学ができないバカと見なす」
解決策: 亜人の特化能力を「2の20乗システム」の専門職へ割り振る。
3. 娼婦と貧困の「構造的治療」: 「体を売らなきゃ食えない状況ってのは、配分システムがバグってる証拠だ。食糧充足率450%の国で、そんなことが起きるはずがねぇ。売春宿を経営してた奴らは全財産を没収。その資金で彼女たちに職業訓練(ロジックの習得)をさせろ」
解決策: 全ての女性(および男性)に対し、経済的自立を保証する「最低限の生活演算」を物理的に提供。
【リゼリア王女の承認:真の平等への移行】
リゼリアは、ケンジが示した「慈悲ではなく論理による救済」に深く頷きました。
「……そうですわね。誰かが虐げられている状態は、その人の持つ演算能力をドブに捨てているのと同じこと。ケンジ殿、私の法典から『種族』や『身分』の文字を消去し、すべてを『自由な演算主体』として再定義いたしました」
差別なき教育: 全国の学校には、人間も、エルフも、元奴隷も、同じ机で「2の20乗」を学んでいる。
労働の自動化: 辛い労働はすべてゴーレムが引き受け、人間(および亜人)は「より高度な計算と創造」に専念する。
社会の浄化: 旧来の売春宿は、今や「物理魔導の自習センター」や「公共浴場」へと作り替えられた。
【ケンジの最終確認】
「これで、社会という回路を流れる『電流』を阻む抵抗はすべて取り除いた。リゼリア、お前が管理するのは『完成された美しい回路』だ。誰かが泣いてるような非効率な場所を見つけたら、即座にバグフィックスしろよ」
「はい、ケンジ殿。この世界から『不条理』という名のノイズを、一ミクロンの誤差もなく排除し続けますわ」
ケンジは再び目を閉じ、今度こそ深く、静かな眠りにつこうとしました。
ケンジは王宮の最上階から、かつてないほど「整理」された世界を見下ろしました。奴隷も、差別も、非効率な争いも消えたはずの地平線。しかし、彼はその完璧な静寂の中に、次なる**「論理的崩壊の予兆」**を嗅ぎ取っていました。
「リゼリア、すべてが思い通りに動くようになった時、人間という『生物的なプログラム』が引き起こす、避けられないバグが三つある。……これに備えておかないと、俺たちが作ったこの理は自重で潰れるぞ」
1. 「停滞」という名のエントロピー増大
「人間ってのは、あまりに平穏で合理的な環境に置かれると、思考を止める。2の20乗の恩恵を『当たり前』だと思った瞬間、民の知的好奇心が死ぬんだ。演算を放棄した文明は、エントロピーが増大して腐る。……常に新しい『問い』や『フロンティア』を与え続けろ」
解決案: 王国主導の「大探検・大実験計画」。海の向こう、あるいは空の彼方、地底の深淵にある未知の法則を解明するプロジェクトに莫大な予算を投じ、民の知性を常に加速させろ。
2. 「魔力汚染」の蓄積
「物理的に何かを動かせば、必ず熱が出る。俺たちが2の20乗の魔法を使いまくった代償として、大気中のマナのバランスが『高エネルギー側』に偏りすぎてる。これが極限に達すると、世界規模の『マナの爆発』が起きるぞ」
解決案: エリザベス、大気中の余剰マナを回収して「純粋な魔石」へ再結晶化する巨大な「環境浄化塔」を全土に建設しろ。
3. 「不老長寿」による世代交代の停止
「医療と栄養管理が完璧になりすぎた。これからは死ぬ奴がほとんどいなくなる。だが、古い考えを持つ奴が死なず、新しい世代が生まれる余地がなくなれば、国は『生ける屍』の集まりになる」
解決案: 「寿命」を物理的に延ばすだけじゃなく、蓄積された知見を次世代へ一瞬で転送する「思考のバックアップと継承」のシステムを構築しろ。あるいは、リゼリア、お前自身が『永遠の独裁者』にならないよう、定期的に自分自身のロジックをリセットする仕組みを組み込んでおけ。
【ケンジの最終警告:外宇宙への視点】
「そして最後の一つ。……この星(世界)全体を『一つの完成されたシステム』にしたってことは、宇宙という巨大なサーバーから見れば、俺たちは『目立つ存在』になったってことだ」
ケンジは空の向こう、青い大気のさらに外側を指差しました。
「この大陸の理を整えたところで、外側にはまだ『計算不能な混沌』がいくらでもある。……リゼリア、お前が次に相手にするのは、隣国でも商国でもない。この星の外にある『別の物理法則』かもしれないぞ」
リゼリアは、ケンジが指し示す星空を見上げ、その果てしない奥行きに戦慄しながらも、力強く答えました。
「……停滞、環境、世代、そして外の世界。わかりました、ケンジ殿。あなたの作ったこの『揺り籠』を、いつか自分たちで飛び越えていけるほど、私たちは強く、賢くなってみせますわ」
ケンジはバルコニーの椅子から動かず、目を閉じたまま不敵な笑みを浮かべました。その問いに対し、四人の娘たちは互いに顔を見合わせることもなく、当然の「結論」を導き出すように一歩前へ踏み出しました。
彼女たちにとって、それは感情の問題である以上に、この完璧な世界を次世代へ繋ぐための**「最優先の論理的責務」**だったのです。
【アンジェリカ:論理的後継者の演算】
「当然ですわ、ケンジ様。貴方の『2の20乗』の思考回路と、私の演算能力。この二つが掛け合わされば、次世代の個体は世界を0.1マイクロ秒で再定義できるスペックを持つはず。私の体を使って、最高傑作の『システム管理者』を構築してみせますわ」
【マーガレット:生命エネルギーの循環】
「あら、私も負けませんわよ? 私の培った南部の生命エネルギー(バイオ・ロジック)と、ケンジ様の純粋な物理定数を合わせれば、病も死も寄せ付けない、永遠に枯れることのない黄金の命を産み出せるはず。私こそが、貴方の『血』を最も効率的に増やす大地になります」
【エリザベス:最適化された遺伝子】
「経済的な観点から見ても、ケンジ様の遺伝子を独占させず、複数のラインで保存・拡張するのは合理的ですわ。私の知性と貴方のロジックを融合させ、世界の均衡(パレート最適)を永遠に維持し続ける、冷徹かつ完璧な知能を誕生させます」
【ヴィクトリア:野生と物理のハイブリッド】
「あはは! 難しいことはわかんねぇけど、ケンジ様の隣に立つなら、一番強くてしぶといガキが必要だろ? 私の頑丈な体と、アンタのデタラメな破壊力を継いだ、最高に『牙』の鋭い開拓者を産んでやるよ!」
【リゼリア王女の裁定:国家プロジェクトとしての承認】
見守っていたリゼリア王女が、手にした杖を床にコツンと鳴らしました。
「ケンジ殿。彼女たちの言葉は、この国の『未来予測図』そのものです。貴方の血を継ぐ者たちが、各領地のハブを統括し、さらにその次世代へとロジックを継承していく。これこそが、王国が永劫不滅の『定常システム』となるための最後のピースですわ」
リゼリアは少しだけ、王女としての顔を崩して微笑みました。
「……もちろん、その『演算』には、この私も加えていただくことになりますけれど。よろしいですわね?」
【ケンジの最終回答】
ケンジはゆっくりと目を開け、彼女たちの決意に満ちた(そして少し欲張りな)瞳を見渡しました。
「……全く。どいつもこいつも、俺の貴重な休眠時間を削るような計算ばっかりしやがって。だが、そうだな。俺がいなくなった後の世界を、俺以上に面白く書き換える奴が必要なのは確かだ。……物理的に一番効率の良い順序で、スケジュールを組んでおけ」
「「「「「はい、ケンジ様!!」」」」」
王国の空に、新時代の幕開けを告げる鐘の音が響き渡りました。
【物語の結末:そして理は続いていく】
家族の定義: 「2の20乗」を標準装備した子供たちが次々と誕生し、世界中のシステムをさらに高度化していく。
永遠の平和: ケンジの血を引く管理者たちが、争いの火種を物理的に「未然に解体」し続ける。
ケンジの休日: 大勢の子供たちに囲まれ、結局一度も「二度寝」を完遂できないまま、ケンジは幸せな計算違いを楽しみ続ける。
これにて、ケンジと五人の乙女たちによる「世界再定義」の物語、完結。
ケンジが構築した「2の20乗」の理は、彼自身の血を引く次世代たちによって完成され、王国はもはや一国の枠を超えた「地球規模の演算生命体」へと進化しました。
かつて険しい山々や飢えた荒野だった場所には、効率化の極致である「定常都市」が整然と並び、空には磁場バレットで浮遊する輸送艦が絶え間なく流れています。
【EPILOGUE】
リゼリア王女と四人の妻たち、そしてその子供たちが走り回る王宮の庭園。 ケンジは、世界中のゴーレムトラックが奏でる低周波の駆動音を聴きながら、今度こそ深く、深く、眠りに落ちていきました。
その夢の中で、彼は新しい数式を書いています。 それは、どれほど時代が過ぎようとも、決して「不合理」が入り込めない、完璧に美しい明日への設計図でした。




