【第五章:国土再定義】
【王国の新しい形】
神殿勢力を一掃したことで、リゼリア王女は名実ともに王国の全権を掌握しました。
ケンジは神殿のふかふかなクッションに深く沈み込みながら、さらなる「演算の深淵」をアンジェラたちに提示しました。
「10段階じゃまだ甘いな。……いいか、さらに倍々でいけ。2の20乗までだ。2048、4096、8192、16384、32768、65536、131072、262144、524288、1048576。……ここまでを一つの『単位』としてイメージに叩き込め」
アンジェラはその数字の羅列を聞き、一瞬息が止まりました。「1,048,576」。それは一個師団どころか、この世界の全人口を数え上げるような、想像を絶する巨大な数字です。
【100万の同時演算:超並列思考の完成】
思考の限界突破: アンジェラは目を閉じ、脳内にあるイメージの「フォルダ」を高速でコピー&ペーストしていきます。1024個のバレットを一つの「小隊」とし、その小隊を1024個並べる。 「……100万。一発のマナで、100万発の弾丸……。ケンジ様、これではもう、戦争という概念すら成立しません。一人が軍隊に勝つどころか、世界そのものを書き換えられてしまいます」
王女の震え: 隣で聞いていたリゼリア王女も、その数字の持つ意味に顔を蒼白にしました。 「100万の『光』を放てば夜は昼に変わり、100万の『氷』を放てば海すら凍りつく……。ケンジ様、貴方は私たちに、神の権能を計算式で与えてしまったのですね」
ケンジの冷徹な助言: 「ま、100万発も撃つ必要はねぇよ。だが、『100万発撃てる』という余裕を持って1発を撃つのと、必死に1発を放つのじゃ、精密度が違うんだ。……イメージの解像度を落とすな。100万個の粒が、全部お前の指先一つに繋がってる感覚を忘れるなよ」
【新体制:知識による支配】
神殿から没収した莫大な資金を使い、王女は「国立魔導演算アカデミー」を設立。ケンジの教えた「算術と物理」を基盤とした、新しい教育を始めました。
旧時代の魔導師: 「マナを増やす修行」に一生を費やす。
新時代の騎士: 「計算の効率化」と「イメージの解像度」を磨く。
【そして、動き出す「世界」】
王都から放たれた「1024人の影縫い」や「1700倍の爆発」の噂は、瞬く間に近隣諸国へ伝わりました。特に軍事国家として名高い「バルドール帝国」は、この「無血開城」の裏にいる謎の男――ケンジを、自国の覇道のために奪取、あるいは抹殺しようと動き始めます。
王宮内庭での発表会、そして神殿の制圧を経て、リゼリア王女の次なる標的は王国を内側から食い荒らす「腐敗貴族」たちでした。彼らは地方の徴税権を悪用し、私兵を蓄え、影で帝国と通じて甘い汁を吸い続けてきた連中です。
ケンジは王宮の最高級ソファに寝そべり、ポテトチップス(アイテムボックス製)をかじりながら、作戦を練るアンジェラに助言を与えます。
「いいか、物理的に壊すのは簡単だ。だが、腐った根っこを引き抜くには『情報の非対称性』を突くのが一番だ。奴らの金庫、証拠、隠し通路……全部『2の20乗』の索敵で暴いちまえ」
【腐敗貴族粛清作戦:超広域同時制圧】
ケンジが教えた「2の20乗(1048,576発)」の理論は、攻撃だけでなく**「索敵」と「精密拘束」**においてその真価を発揮しました。
【粛清の夜】
逃げ場の消失: アンジェラは王宮の尖塔に立ち、全属性のイメージを極限まで広げました。彼女の意識は、2の20乗の演算によって王都中の全貴族邸へと浸透します。壁の裏の隠し金庫、地下の密談室、枕元に隠された密書。そのすべてが「座標」として彼女の脳内に浮かび上がります。
100万の沈黙: 「……いけ。『2の20乗・精密ダークバインド』」 夜空を埋め尽くした目に見えぬ「影の糸」が、王都中の腐敗貴族たちの屋敷に降り注ぎました。 「なっ、何だこの影は!」 「隠し金庫の書類を焼こうとした手が動かん!」 証拠を隠滅しようとした者、私兵を動かそうとした者、逃亡を図った者。その全員が、指先一つ動かせぬまま影に縫い付けられました。
証拠の強制回収: 「土のバレット」を応用した「サンドバレット(研磨・運搬)」が、邸宅の壁を傷つけずにすり抜け、隠されていた裏帳簿や帝国との内通証拠を次々と王宮へと運び出します。
【朝の断罪】
翌朝、王都の広場には、影に縛られたまま転がされた数十名の有力貴族と、その横に積まれた山のような「証拠書類」が並んでいました。
民衆の驚愕: 「あの強欲な公爵が、一晩で……」 「兵士一人死なず、街も壊れず、ただ悪人だけが捕まっている……」
王女リゼリアの布告: 「民の血を吸い、国を売ろうとした者たちに情けは無用。これら没収した財産は、すべて公共のインフラと新たな教育の糧とします!」
【ケンジの不敵な笑み】
ケンジは、神殿から没収した最高級の紅茶を飲みながら、忙しそうに走り回る騎士たちを眺めていました。
「100万発のバレットってのは、単なる弾幕じゃない。世界をスキャンする『目』であり、100万人を個別に扱う『指』なんだよ。……ま、これで少しはマシな国になるだろ」
アンジェラは、汗を拭いながらケンジの前に膝をつきました。 「ケンジ様……100万のイメージを維持するのは、まるで神の視点を得たような感覚でした。……ですが、疲れました。少しだけ、お隣で休ませていただけますか?」
「ああ、座れよ。このソファ、2の1乗(2人分)なら余裕だ」
【そして、波紋は外へ】
王国内の腐敗が瞬時に一掃されたというニュースは、ついに「バルドール帝国」を本気で怒らせました。彼らの協力者たちが一晩で全滅したからです。
ケンジは、ソファから身を起こして、空いた手のひらをスッと水平に伸ばしました。
「バレット(弾丸)は、あくまで点の攻撃だ。貫通力と手数には優れてるが、質量が足りない時がある。次は、形状を変えた魔法――**『ランス(長槍)』と『ジャベリン(投槍)』**を教えるぜ。これも『2の乗数』と組み合わせれば、戦場の概念が変わる」
【構造の進化:ランスとジャベリン】
ケンジは空中に、マナの光で透き通った槍の形を描き出しました。
【ケンジの解説】
ランス(長槍):[持続する破壊力] 「ランスは『線』の魔法だ。先端に極限の硬度(土)と、回転(風)のイメージを加えろ。バレットは当たった瞬間に終わるが、ランスは『突き抜けるまで消えない』。巨大な防壁や、何十枚も重なった盾を一度に貫く時に使う。これに『2の乗数』を乗せて束ねれば、山をも穿つドリルになるぞ」
ジャベリン(投槍):[質量の投射] 「ジャベリンは『重さ』と『落下速度』の暴力だ。土のバレットを長く伸ばし、中心に『重力』のイメージを詰め込む。これを上空から放り投げれば、爆発を使わなくても、ただの落下の衝撃だけでクレーターができる。いわば『神の杖』の縮小版だ」
【応用:属性ランスの極致】
「アンジェラ、さっきのスチーム(蒸気)の理屈、覚えてるか? ランスの内部でそれを使ってみろ」
ボイル・ランス(沸騰貫通槍): 槍の先端から常に超高温の蒸気を噴射しながら突き進む。接触した瞬間に敵の鎧を溶かし、内部を蒸し焼きにする。
アイス・ジャベリン(氷結投槍): 巨大な氷の槍を上空に『2の10乗(1024本)』展開。降り注ぐ氷の雨は、着弾と同時に周囲を絶対零度で凍りつかせ、物理的な破壊と広域凍結を同時に行う。
【三日月と薔薇騎士隊の演習】
アンジェラは訓練場の中央に立ち、空を指差しました。
「……2の10乗。『アイス・ジャベリン・レギオン』!」
頭上の空に、1024本の巨大な氷の槍が整然と整列しました。それはもはや魔法というより、空そのものが物理的な凶器に変わったかのような光景です。
射出の音: ヒュオッ!という空気を切り裂く音が重なり、轟音と共に訓練場のダミー標的群が、巨大な氷の柱の下に消え去りました。
王女の溜息: 「……バレットが『個』を討つものなら、ランスとジャベリンは『軍』を滅ぼすもの。ケンジ様、貴方は乙女たちに、あまりにも残酷で、美しい力を与えすぎですわ」
元正規軍の絶望: 遠巻きに見ていたバルザス団長たちは、自分たちの「重装歩兵陣」がこのジャベリン一斉掃射の前にいかに無意味かを悟り、がっくりと膝をつきました。
【ケンジの次の一言】
「さて、槍の使い道はわかったな。次は……これらをさらに『加速』させる方法、つまり**『レール(加速路)』**の作り方を教えるか? 物理的に『音速』を超えさせれば、100万発撃たなくても世界はひれ伏すぞ」
ケンジは王宮の最上階にあるバルコニーの寝椅子に深く腰掛け、空中に広大な「光の地図」を投影しました。
「アンジェラ、敵が来てから動くのは二流だ。2^20の演算能力がありゃ、国境を越える前に『空気の震え』で察知できる」
ケンジは、アイテムボックスから取り出した冷たい炭酸飲料を喉に流し込み、次なるロジックを伝授します。
【索敵の実行】
アンジェラの共鳴: アンジェラは目を閉じ、意識を「2^20」の極小バレット群へとリンクさせました。彼女の脳内には、王国の全境界線から伝わる情報が、滝のようなデータとなって流れ込みます。 「……見えました。北西、帝国の国境付近。地響きのような振動……これは、馬の足音ではありません。巨大な鉄の塊が、地面を削りながら進む音です」
帝国の超弩級戦艦「アイアン・レヴァイアサン」: アンジェラの脳内マップに映し出されたのは、最新鋭の魔導蒸気機関を搭載した、帝国の超巨大陸上戦艦でした。周囲には数千の魔導騎士団と、空を覆う魔導飛行艇の編隊が確認されます。 「数は……正規軍の比ではありません。万を超えます。さらに、彼らの周囲には強力な『マナ攪乱電波』のようなものが展開されており、通常の探知魔法を完全に無効化していますね」
ケンジの不敵な笑み: 「マナを攪乱して隠れてるつもりか。滑稽だな。……アンジェラ、その戦艦の『振動』の波形を逆算しろ。エンジンの回転数から、装甲の厚さ、積んでいる砲弾の数まで全部割り出せるぞ。物理(音)は嘘をつかないからな」
【三日月と薔薇騎士隊:迎撃準備】
索敵によって得られた正確な「座標」と「敵戦力データ」は、即座に騎士隊全員に共有されました。
ガブリエラ(斥候班): 「座標、確定。敵の飛行艇のプロペラ音から、高度と速度を逆算しました。いつでも落とせます」
マーガレット(防衛班): 「敵の主砲の口径から、衝撃波の範囲を計算済みです。着弾前に『相転移』で無力化します」
アンジェラは、空中に浮かぶ1024本の「アイス・ジャベリン」を、さらに鋭く、結晶の精度を上げて再構成しました。
「ケンジ様。敵は自分たちがまだ見つかっていないと信じて、悠々と進軍しています。……このまま、彼らの『傲慢』ごと貫いてもよろしいでしょうか?」
ケンジは炭酸飲料のボトルを置き、ゆっくりと立ち上がりました。その目は、地平線の彼方にうごめく帝国の巨大な影を捉えています。
「20人で2の20乗……。おいおい、合計で2000万発以上のスチームジャベリンか。本気で帝国を『地図から消す』つもりか? ま、いい。あいつらには、物理法則という抗えない神の裁きを見せてやれ」
【戦略級物理魔導:超広域スチームジャベリン掃射】
三日月と薔薇騎士隊の20名は、王都の最も高い城壁の上に整列しました。アンジェラを筆頭に、全員が「2の20乗」の並列演算を開始。王都の上空は、瞬時に展開された膨大な魔法の槍によって、真昼だというのに太陽が遮られ、夜のような暗転に包まれました。
【審判の瞬間】
超飽和攻撃: アンジェラの「放て!」という号令と共に、2000万発を超えるスチームジャベリンが、物理的な限界速度を超えて射出されました。空を切り裂く轟音が重なり合い、王都全体が巨大な震動に見舞われます。
1700倍の破滅: ジャベリンの群れは、帝国の「マナ攪乱電波」など意に介さず、ただの質量兵器として艦隊に殺到しました。着弾の瞬間、ランス内部に圧縮されていた水が「スチーム(水蒸気)」へと一気に相転移。1700倍の体積膨張が2000万箇所で同時に発生しました。
戦術的消滅: 帝国の誇るアイアン・レヴァイアサンは、外側から叩き潰されるのではなく、内部の装甲の隙間から入り込んだ蒸気によって「内側から破裂」しました。空を覆っていた飛行艇編隊も、ジャベリンが通過する際の真空波と水蒸気爆発に巻き込まれ、文字通り粉々に粉砕されました。
【焦土に舞う白煙】
数分後、地平線の先で輝いていた帝国の灯火は完全に消え去りました。残ったのは、1700倍に膨れ上がった莫大な蒸気が作り出した、巨大な積乱雲のような白煙の柱だけです。
アンジェラの静寂: 「……終わりました。敵の信号、すべて消失。マナの反応も、物理的な振動も、何も聞こえません」 アンジェラは指先を下げましたが、その瞳には100万を超える演算を完遂した「賢者」の理知が宿っていました。
王女の祈り: 「これが、ケンジ様の仰る『物理』。……抗う術も、逃げる暇も与えない。帝国は、自分たちが何に敗れたのかさえ理解できずに消えたのでしょう」
【ケンジのあくび】
ケンジは、白煙の向こうに沈む夕日を眺めながら、満足げに背伸びをしました。
「2000万発か。……ちょっとやりすぎたな。ま、これで帝国も『あの方向には死神がいる』って学習しただろ。当分は静かに寝られるはずだ」
ケンジは、驚愕で固まっている元騎士団長バルザスたちの横を通り過ぎ、王宮の奥へと歩き出しました。
「おいアンジェラ、仕事は終わりだ。腹減ったから、アイテムボックスの特製カレーでも食うか。……20人分、2の1乗も用意してやるよ」
ケンジは王宮のバルコニーで、アイテムボックスから取り出したアイスキャンディーを齧りながら、薄く目を開けました。
「2000万発のスチームジャベリンで更地にしたんだ、普通なら諦める。だが、意地になってる奴らはまだいるぜ。……アンジェラ、2^20の演算を『アクティブ』に切り替えろ。今度はこっちから波動を飛ばして、帝国の『隠し札』を暴き出すぞ」
【超広域・高解像度アクティブ索敵:2^20 エコー・ロケーション】
ケンジが教えたのは、反射光や音を待つ受動的な方法ではなく、自ら微弱な物理衝撃を100万発放ち、その「跳ね返り」で世界の形を立体的に把握する手法です。
【索敵の実行結果】
隠された「浮遊都市」の発見: 「……見つけました。帝国の北端、永久欠氷に閉ざされた山脈の上空。雲の中にマナの反応を完全に遮断した『浮遊要塞都市』が浮いています」 アンジェラの脳内には、厚い装甲に覆われ、巨大な推進器を備えた帝国の真の司令塔が鮮明に映し出されました。
「神殺し」の巨砲: 「要塞の中央に、巨大な砲身が見えます。マナではなく、磁場を使って何かを加速させている……ケンジ様、これは貴方の言っていた『レールガン』に近い構造です!」
アンジェラの分析: 「周囲には数万の無人魔導機。有人ではないため、死を恐れずに突っ込んでくる設計です。……どうやら彼ら、自分たちの『本丸』がバレていないと思って、次の超長距離攻撃の準備をしていますね」
【ケンジの冷徹な判断】
ケンジは食べ終えたアイスの棒を指先で回しながら、不敵に笑いました。
「見つかってないと思ってる時が、一番の隙だ。……あいつら、磁場で加速させる砲を作ったつもりか。だが、俺たちの『2^20』の演算による『座標固定』からは逃げられねぇよ」
マーガレット(防衛班): 「敵の浮遊要塞の質量を計算しました。落とすのに必要なエネルギーも割り出し済みです」
エリザベス(風紀班): 「要塞周囲の気流を操作し、あちらの照準を強制的に狂わせる準備はできています」
【最終通告の準備】
アンジェラは、王都の空に再び「2の20乗」のイメージを展開しました。今度は槍ではなく、細く鋭い**「レーザーのような光のランス」**です。
「ケンジ様。相手が『見えない場所』から撃とうとするなら、こちらは『見えない速度』で貫く。……それでよろしいですね?」
ケンジは最後のアイスキャンディーを飲み込むと、鋭い目付きで北の空を指差しました。
「一点収束か。いい判断だ。100万発をバラ撒けば面制圧だが、それを一点に集めりゃ『熱線』になる。帝国の浮遊都市の分厚い装甲も、分子レベルで焼き切れるぜ」
ケンジは、アイテムボックスから取り出したサングラスをアンジェラに手渡しました。
【極限収束魔導:1M・フォトン・収束】
アンジェラはサングラスをかけ、精神を「2の20乗」の極致へと追い込みます。1,048,576発の光のランスを放つのではなく、それらすべてを「同じ軸」に乗せ、一本の極細の光条へと圧縮するプロセスです。
【光速の断罪】
臨界突破: アンジェラの周囲に、直視できないほどの光の球が発生しました。2^20の演算による熱量は、周囲の空気をプラズマ化させ、バチバチと放電が飛び交います。
射出: 「……貫け。『2の20乗・収束光槍』!」 音すらない。放たれたのは、地平線の彼方まで一瞬で到達する「純粋な光の針」でした。光速で進むその一撃は、帝国の「神殺しの巨砲」が発射プロセスに入るよりも早く、雲を蒸発させながら浮遊要塞へと突き刺さりました。
主機の解体: 要塞の数メートルに及ぶ特殊合金装甲は、抵抗する間もなく溶解。収束した100万本のエネルギーはピンポイントで動力主機を直撃し、大爆発を起こさせることなく、その機能を「消滅」させました。
【沈みゆく「鉄の城」】
北の空で、一筋の閃光が弾けました。 動力を失った帝国の浮遊要塞は、その巨大な質量を支えられなくなり、ゆっくりと、しかし確実に高度を下げ始めます。
アンジェラの静寂: 「……コアの消失を確認。要塞、自由落下を開始しました。……もう、あそこから火が吹くことはありません」
帝国の絶望: 最強の隠し札を、姿すら見えない距離から「光」で撃ち抜かれた帝国司令部は、もはや戦う意志を失いました。彼らにとって、ケンジとアンジェラは「攻略対象」ではなく、不可抗力な「天災」になったのです。
【ケンジの撤収】
「よし、これで終わりだ。あんなデカいのが落ちたら後処理がめんどくさいが……ま、それはバルザスたちにやらせようぜ」
ケンジは背中を向けて、王宮の寝室へと歩き出しました。
「アンジェラ、お疲れ。100万の収束は脳にくるだろ? 明日は休みだ。俺がアイテムボックスから出した『最高級の枕』、お前にも貸してやるよ」
ケンジは最後のアイスキャンディーの棒を放り投げると、薄っすらと笑いながら北の地平線を見据えました。
「要塞を落としただけじゃ、まだ往き際が悪い奴らが残ってるみたいだな。……いいぜ。本拠地(帝城)をここから直接叩こう。ただし、ただ壊すんじゃ能がない。2の20乗のジャベリンを『全属性混合』で撃ち込む。……帝国という国家の『意志』を、物理的にへし折ってやるんだ」
【戦略級・極限物理魔導:2^20 アルティメット・ジャベリン・ストライク】
アンジェラは王都の城壁の頂点に立ち、20人の精鋭たちと円陣を組みました。20人がそれぞれ「2の20乗(約100万発)」を分担し、合計2000万発超のジャベリンを、一本の**「神の裁き」**へと練り上げていきます。
【世界の書き換え】
射出(発射): アンジェラの号令と共に、王都の上空が真っ白な光に包まれました。2000万発のジャベリンが、ケンジの教えた「真空トンネル」を通り、音速の数十倍――極超音速で射出されます。王都周辺の空気が一瞬で吹き飛び、凄まじい衝撃波が周囲を震わせました。
2000kmの静寂: ジャベリンの束は、成層圏まで到達し、そこから帝都に向けて「死の放物線」を描きます。帝国側がマナで感知しようとした時には、すでに弾頭は帝城の真上に到達していました。
帝城の消失:
衝突の瞬間、火薬も魔力も必要ありませんでした。ただの「質量」と「速度」の暴力が帝城を直撃。一瞬にして数キロメートルに及ぶクレーターが穿たれ、帝国の権威の象徴であった城は、原子レベルで粉砕されて白煙の中に消えました。
【終焉の光景】
遠く離れた王都からも、北の空が不自然に赤く染まり、地響きが伝わってきました。
アンジェラの独白: 「……着弾。帝城の反応、消失。周囲の軍事施設も、衝撃波だけで完全に沈黙しました。……これが、物理が導き出す『絶対的な平和』なのですね」
王女リゼリアの決意: 「これでもう、この大陸に戦火を望む者はいないでしょう。……ケンジ様。この力、私たちが責任を持って管理いたしますわ」
【ケンジのあくび:物語の幕引き】
ケンジは眩しそうに目を細め、ソファに深く沈み込みました。
「ふぁ……。ま、これで『帝国の城を撃つ』なんていう、めんどくさい仕事も終わりだ。……さて、アンジェラ。城がなくなったってことは、明日から帝国の残党が『助けてくれ』って山ほど押し寄せてくるぞ」
ケンジはニヤリと笑いました。
「そいつらの再教育と炊き出し、全部お前らの仕事だ。……俺は今度こそ、誰にも邪魔されずに二度寝させてもらうぜ。いいな?」
「はい、ケンジ様! おやすみなさいませ!」
アンジェラたちの晴れやかな声が響く中、ケンジは心地よい眠りに落ちていきました。
ケンジは王宮の最高級の寝椅子で大きく伸びをすると、隣で帝国の終焉を見届けていたリゼリア王女に向き直りました。
「さて、派手な花火はこれで終わりだ。帝国も神殿も黙らせたが……リゼリア、まだ何か『めんどくさい事』が残ってるんだろ? 王国を回していく上で、あんたが頭を抱えてる問題を全部吐き出してみな。物理と論理で片付くなら、ついでに整理してやるよ」
リゼリア王女は少し驚いたように瞬きをしましたが、すぐに真剣な表情になり、手元の執務机からいくつかの書類を取り出しました。
【王国の残存課題:内政の歪み】
物流と街道の寸断: 「一つは、長年の戦乱と魔物の横行で、地方との物流が死に体であることですわ。街道は荒れ、橋は落ち……これでは没収した神殿の財産を民に分配するにも、運び手が足りません」
深刻な水不足と干染: 「南部の穀倉地帯が、ここ数年の異常気象で干上がっていますの。魔導師たちが雨乞いの儀式(水魔法の無差別放散)を繰り返していますが、マナを浪費するばかりで根本的な解決になっていません」
エネルギー資源の枯渇: 「煮炊きや鍛冶に使う薪や炭が不足し、森が切り崩されています。このままでは冬を越せない民が出てしまいますわ」
【ケンジの解決ロジック:生活インフラの革命】
ケンジは書類をパラパラと眺め、鼻で笑いました。
「なんだ、全部『流体計算』と『熱力学』の問題じゃねぇか。魔法を兵器として使うのは卒業だ。これからはインフラとして使うぞ。アンジェラ、全員集めろ。新しい『バレット』の使い道を教える」
【1. 超高速輸送:リニア・バレット・トラック】 「橋が落ちてるなら、橋を直すんじゃなく『飛ばせ』。風のバレットで気圧差を作って、荷台を浮かせる(リニア)。そこに後ろからスチームバレットで推進力を与えれば、王都から南部まで半日で物資が届くぞ」
【2. 大規模灌漑:フリーズ・結露・システム】 「雨乞いなんて非効率なことはやめろ。上空に『2の20乗』の極小アイスバレットを散布して、空気を冷やせ。空気中の水分を強制的に『結露』させて雨を降らせるんだ。あと、地下水脈を索敵で探して、水のバレットをポンプにして汲み上げろ」
【3. 永久熱源:ボイル・サースタット】 「薪を焼くのは効率が悪すぎる。土のバレットをセラミック状に固めて、その中に『2の乗数』で微小な火のバレットを閉じ込めろ。断熱を完璧にすれば、一度火を入れれば数ヶ月は熱を出し続ける『魔法のコンロ』の完成だ」
【リゼリア王女の希望】
「……破壊ではなく、創造のためにその数式を。ケンジ様、貴方は本当に、この国を根底から作り替えようとなさるのですね」
ケンジは再び目を閉じ、居眠りの体制に入りました。
「作り替えるなんて大層なもんじゃない。俺が快適に昼寝するために、この国を少しだけ『合理的』にしてるだけだ。……さあ、アンジェラ。まずは南部に雨を降らせてこい。計算式はさっき渡しただろ?」
「はい、ケンジ様! 民の笑顔のために、全力で演算いたします!」
アンジェリカ(アンジェラ)は、ケンジの問いに即座に反応し、脳内の「2の20乗」索敵マップを広げました。彼女の瞳には、王国の全土が精緻な等高線と色彩で構成された立体図として投影されています。
「……はい、ケンジ様。最新の索敵データによれば、王国内の『荒野』および『不毛地帯』は、全領土の約**42%**に達しています。特に南部と北東部の境界付近が深刻です」
【王国の土地利用状況:アンジェラの報告】
アンジェラの詳細分析:
南部の「赤砂の地」: 「かつての穀倉地帯ですが、現在は極度の乾燥により地割れが進み、保水力を完全に失っています。先ほど仰っていた『結露システム』がなければ、あと数年で居住不能になるでしょう」
北東部の「塩の沈黙」: 「帝国との旧戦場です。繰り返された魔導兵器の使用により土壌が変質し、塩害が発生。雑草すら生えない白茶けた大地が広がっています」
街道沿いの「岩石地帯」: 「物流を阻む岩だらけの荒野です。ここは起伏が激しく、馬車を通すための整地すら放棄されています」
【アンジェラの提案】
アンジェラは、ケンジから教わった「物理の応用」を必死に組み合わせ、自分なりの解決策を導き出そうと目を輝かせました。
「ケンジ様、この42%の荒野を再生できれば、王国の国力は単純計算で2倍以上に跳ね上がります。……『2の20乗』のジャベリンを撃ち込む要領で、今度は**『栄養と水』**を広域散布するのはいかがでしょうか?」
ケンジの返答案: 「お前、まだ『撃ち込む』ことしか考えてねぇな。……いいか、荒野ってのはな、ただ水を撒けばいいってもんじゃない。土の組成を組み替えるんだ。土のバレットを砂より細かくして、そこに空気中の窒素を固定して混ぜ込む。……名付けて**『耕作・バレット』**だ」




