婚約破棄がやって来る
☆さらっと読めるショートショートです。
ドンドン扉を叩かないでくれます? 公爵家の馬車ですのよ。わずかな傷でも、あなたたちに弁償できる金額ではありませんのよ。今、開けますから。
……あら、賊は三人しかいませんの? よく三人で公爵家の護衛たちを制圧できましたわね。どんな手を使ったのやら。
ほら、ぼーっと見てないで手を貸してください。淑女が馬車を降りますのよ。
さてと、布でマスクして顔を隠してる皆様、逃走用の馬車はどこですの? 馬は?
無い? 馬車無しでどうやって逃げるつもりでしたの?
そもそもこんな真っ昼間に馬車を襲ったら、逃走するのが人目につくと思ってませんでしたの? 無計画ですわね~。
じゃあ、徒歩で行きますか。
どこにって、娼館に売るのでしょう?
ええ、全然嫌じゃありませんよ。
婚約者の馬鹿王子と結婚するくらいなら娼館の方がずっとましです。
知ってます? 王子が御寵愛のマリアンネ様と子供を作りたいと言ったら、国王陛下に私以外と子供を作ってはいけないと厳命されたんですって。迷惑な話ですわ。あの二人で勝手に盛ってくれればいいのに。
まあ、あの二人の子供では頭の良さは期待できないですけど。
じゃあ、参りましょう。
……って、何故馬鹿王子が慌ててやって来るんです。
私が助けを求めないから、出るに出られなかった?
あなたに助けを求めるわけないでしょう。私より弱いのに。
ええ、剣術の訓練であなたが負けると拗ねてしまうので、私が負けてあげてたんですよ。
さて、王子が現れたのであなたたちの下らない計画は明らかになりましたわね。
王子の名で私の護衛を遠ざけて、ご友人たちが私を襲い、王子が助けに来る……。そしたら私が感謝して喜んで王子に嫁ぐと思ったのですか?
「自分を尊敬しないお前が悪い」と言われましても……。馬鹿、いえ、王子に尊敬できる部分がありませんものねぇ。
この浅慮な計画を聞かされた国王陛下は、さぞ頭を抱えるでしょうね。
え? 当然この事は公表しますよ。
私は婚約破棄出来て、王子はマリアンネ様と二人で僻地で新生活が出来て、お友達の皆さんは貴族籍から除籍されて自由な平民となる。
万々歳ではありませんの。
楽しみですわねー。




