第4話:聖女降臨?……いえ、ただの迷子です
「いいか、ルミナ。もう一度言うぞ。一歩も、一ミリも、その場から動くなよ。……分かったか?」
ようやく辿り着いた活気あふれる商業都市・グランテ。
冒険者ギルドの入り口で、シエルが親の仇のような形相で私を指差した。
「分かってるってば! 私を何だと思ってるの?」
「歩く災害、あるいは自爆機能付きの天使だな。……ガルド、お前もだ。こいつを絶対に離すなよ」
「ガハハ! 任せとけシエル。俺がこのぶっとい腕で、女神様をがっちりガードしてやるぜ!」
シエルは「それが一番不安なんだよ」と言いたげな溜め息を吐き、ギルドの奥へと消えていった。
「さてと……。……あ、ガルド! 見て、あのお店! すっごく美味しそうな匂いがする!」
「お、どれだ? ……おおう、あの串焼きか! 確かにいい匂いだな……って、おい嬢ちゃん! シエルに動くなって言われただろ!」
「ちょっと見るだけだってば! 行こう!」
私はガルドの腕をすり抜け、吸い寄せられるように人混みの中へ。
……そして、三秒後。
「……あれ? ガルド? シエル? ……ギルドはどこ?」
振り返れば、そこは見知らぬ路地裏。左右を見ても、同じような石造りの建物が並んでいるだけ。
「うそぉ……もう迷子!? 神様、私の方向音痴、やっぱり悪化してませんか!?」
半泣きで路地を彷徨っていると、前方からいかにも「ガラの悪い男たち」が三人を引き連れて現れた。
「おいおい、見ねえ顔だな。こんな裏通りに上等な服着た美少女が一人で……へへ、運が向いてきたぜ」
「えっ、あの……道に迷っちゃって。ギルドに行きたいんですけど……」
私が一歩下がると、男たちは下卑た笑いを浮かべて距離を詰めてくる。
(……どうしよう。戦いたくないけど、ホラーじゃないから聖剣抜いちゃう!?)
恐怖で胸がドキドキと高鳴り、無意識に「助けて!」と心の中で叫んだその時――。
神様からもらった三つ目のギフト、**『敬愛の加護』**が暴発した。
私の体から、柔らかく、それでいて太陽のように神々しい光がふわぁぁっと溢れ出す。
「な、なんだこの光は……!? 温かくて……涙が止まらねえ……」
「俺は……俺たちはなんて汚ねえ心を……。お、お助けください、聖女様ぁーっ!」
「へっ?」
目を開けると、さっきまで凄んでいた男たちが、路地裏で全員土下座をして号泣していた。
「聖女様! 俺たちを導いてください!」
「今までの悪行、全て悔い改めます!」
「えええええっ!? いや、私ただの迷子なんですけど!?」
そこへ、背後から凄まじい怒鳴り声と、光の矢が飛んできた。
「どけえええ! 俺の女神様に指一本触れさせねえぞ!」
「……ルミナ! お前、死にたいのか!? それとも街一つ宗教国家に塗り替えたいのか!?」
「ガルド! シエル! 助けてぇーっ、この人たちが急に泣き出しちゃって!」
シエルは、光り輝きながら男たちに拝まれている私を見て、片手で顔を覆った。
「……もうダメだ。こいつ、やっぱり一秒たりとも目が離せない……」




