第3話:騒がしい男と、消えない絶叫
シエルの背中を必死に追いかけて、うっそうとした森を抜けたときだった。
前方から、地響きのような怒鳴り声と、金属がぶつかり合う激しい音が聞こえてきた。
「おりゃあああ! どいてろ、この骨野郎ども!」
そこには、巨大な斧――イグニス・バスターを振り回し、無数の魔物に囲まれている大柄な男の姿があった。
「あれ、誰か戦ってる! シエル、助けに行かないと!」
「……放っておけよ。あの馬鹿力なら死にはしない。それより、あいつが相手にしてる魔物、よく見てみろ」
シエルが指差した先を見た瞬間、私の全身が氷ついた。
大柄な男が戦っているのは、カチャカチャと骨の音を立てるガイコツの騎士や、青白い火の玉のような幽霊。
「ひっ……! 幽霊……ガイコツ……本物のホラーじゃん! 無理、無理無理無理!!」
私は思わずシエルの背中にしがみつき、ガタガタと震え出した。
「おい、離せ。さっき『無双する』とか言ってた威勢はどこに行ったんだよ」
「それとこれとは話が別! あんな不気味なもの、物理で解決できないもん!」
「……はぁ。あいつ、武器の使い方はいいけど、囲まれすぎて背後がガラ空きだ。ほら、ルミナ。聖剣持ってるんだろ。光魔法で少しは援護しろ」
「無理ぃーっ! 見たくないーっ!」
私が目をぎゅっと瞑って、怖さのあまりヤケクソで聖剣エトワール・ベルを振り回した、その時。
『チリンッ!』
聖剣の鈴がひときわ大きく鳴り響き、視界がホワイトアウトするほどの眩い光が溢れ出した。
「うわあああ! 眩しっ! 目が、俺の目がぁーっ!」
魔物だけでなく、戦っていたガルドまで目を押さえて悶絶している。光が収まったときには、あれほどいたホラー系の魔物たちは影も形もなく浄化され、辺りには静寂が訪れていた。
「……あ。消えた?」
恐る恐る目を開ける私。すると、目を真っ赤にした大男が、のっしのっしとこちらへ歩いてきた。
「おい、今の光はあんたか!? おかげで助かったぜ、嬢ちゃん!」
大男はガハハと豪快に笑いながら、私の肩を壊れそうな勢いで叩いてきた。
「あ、痛たた……。あ、えっと……ルミナです」
「俺はガルドだ! 凄まじい浄化魔法だったな。あんた、ただの美人じゃねえと思ってたが、まさか本物の女神様か!?」
「女神……えへへ、それほどでも……」
「……調子に乗るな。ただ怖くて暴れただけだろ、このポンコツ」
シエルの毒舌が飛んでくるけれど、ガルドの明るさと、二人の存在が、なんだか昔の「家族」との賑やかな時間を思い出させて、私の胸は少しだけ温かくなった。




