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第2話:運命の出会いは、絶叫と共に

「ふふん、神様にもらったこの聖剣と魔力があれば、どんな困難も怖くないわ! さあ、ルミナ・ベルシュタイン、華麗なる異世界生活の第一歩よ!」


私は胸を張り、眩しい太陽に向かって意気揚々と一歩を踏み出した。

……はずだった。


「……あ」


スカッ、と。


右足が地面を捉え損ね、身体がふわりと宙に浮く。

見下ろせば、そこにはどこまでも続く真っ逆さまな絶壁。


「いやぁぁぁあーっ! なんでこんなところに崖があるのぉーっ!?」


「……おい。そこで無様にバタバタしてる『自称・天使』、静かにしてくれないか。鳥が逃げる」


その時、頭上から心底呆れ果てたような、冷ややかな声が降ってきた。


「えっ!? ちょっと、誰!? 助けてぇーっ!」


見上げると、崖の縁に一人の少年が立っていた。透き通るような青い瞳を細め、ゴミを見るような目で私を見下ろしている。


「助けて?……ははっ、笑わせるな。あんなにドヤ顔で空中散歩に出かけたんだ、自力で空でも飛んだらどうだ?」


「ひどいっ! 私にそんな能力はないの! 死んじゃう、本当に死んじゃうから!」


少年は盛大なため息をついた。


「はぁ、不燃ゴミの回収は僕の仕事じゃないんだけど」


彼はそう毒を吐きながらも、背負っていた魔弓アストラル・レイを流れるような動作で構え、弦を引いた。


「――『導きの光糸ガイド・ライン』。……おい、重いから暴れるなよ」


放たれた光の糸が私の腰に絡みつき、乱暴に崖の上へと引きずり上げられる。


「……ぷはっ! た、助かったぁ……」


「……ねえ、君。脳の代わりに花畑でも詰まってるの? ここは『断崖の魔迷宮』。普通に歩いてたら辿り着くはずがないんだけど」


「うぐっ……だって、気づいたらここに出てたんだもん……」


私が地面にへたり込んでいると、少年は弓を肩に担ぎ直し、冷めた目で見下ろしてきました。


「……あ、あの。助けてくれてありがとう! 私、ルミナって言います!」


私が慌てて自己紹介をすると、少年は一瞬だけ意外そうに目を見開き、すぐにまた呆れ顔に戻りました。


「ルミナ? 名前まで『光』なんて、おめでたいな。……僕はシエルだ。礼なんていいから、さっさと立ちなよ。不審者と喋ってると思われる」


「不審者ってひどい! ……あ、それ、『アストラル・レイ』……だよね? すごい、本物だ……!」


思わずシエルの背中の弓を指差すと、シエルの空色の瞳が鋭く細められました。


「……は? なんで君がこの弓の名前を知ってるんだ。これはこの辺りの人間が知るはずのない、古代の……」


「え? あ、いや……それは……」


(やばい、神様からチート能力と一緒に『鑑定能力』みたいな知識も流れ込んできてたんだ! でも『神様にもらいました』なんて言っても、この毒舌少年に信じてもらえるわけないし……!)


「えーっと……! 有名な、骨董品かなにかの図鑑で見たことがあったような、なかったような……あはは!」


「……嘘をつくにしても、もう少しマシなのはないのか? 君、顔に出すぎ。……まあいい。君の怪しい正体なんて興味ないし、関わりたくもない」


シエルは鼻で笑うと、背中を向けて歩き出しました。


「ちょっと待ってよシエル! 街まで連れてって! 私、また迷子になっちゃう!」


「……絶望的だな。方向音痴にも程がある。君みたいな『歩く遭難者』を放置して、後味の悪い死体を見つけるのは御免だ」


シエルは私を突き放すような口調で言いながらも、次の街へと続く道に矢を一本、光り輝く道標として放ってくれた。


「ほら、さっさと歩け。……言っておくけど、これ以上僕の時間を無駄にするなよ、このポンコツ天使」


口は最悪に悪い。でも、その瞳はどこか放っておけないものを守るような、不思議な光を宿していた。

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