第1.5話:神様との約束
「……優しい子ですね」
その声は、頭の中に直接響くというより、心に直接染み込んでくるような、不思議なほど清らかな響きでした。
「神様……なんですか?」
私が尋ねると、眩い光の中から一人の男性が微笑みながら現れました。
「いかにも。貴女は己の命と引き換えに、尊い未来を救いました。その尊い魂を、ただ無に帰すのはあまりにも惜しい」
神様は、私の手を取るようにして優しく語りかけました。
「ルミナ。貴女にはこれから、剣と魔法の息づく異世界へ行ってもらいます。そこでは、貴女の魂の強さがそのまま『魔力』となり、貴女の『優しさ』が最強の武器となるでしょう」
「あの……私に、そんなすごいことができるんでしょうか? 私、ただの普通の高校生だったのに」
「ふふ、案ずることはありません。貴女には、三つの特別な『ギフト』を授けましょう」
神様は指を一つ、二つと立てました。
「一つ目は、『至高の聖剣エトワール・ベル』。貴女の魔力に呼応し、あらゆる闇を浄化する白銀の刃です。
二つ目は、『全属性適性の魔力』。この世界のあらゆる魔法を、貴女は呼吸するように使いこなせるでしょう」
「……えっ、それって……いわゆる『チート』ってやつですか!?」
私が目を丸くすると、神様はいたずらっぽく笑いました。
「そして三つ目。これが最も重要です。それは**『敬愛の加護』**。貴女が誰かのために力を使うたび、その真心は相手に伝わり、貴女の周りには自然と温かな絆――『新しい家族』が、集まってくることでしょう」
「新しい……家族……」
その言葉に、胸が熱くなりました。前世で残してきてしまった家族への想いが、一瞬だけ溢れそうになります。
「はい。貴女が望む『温かい居場所』を、今度はその手で作り上げるのです」
「……神様。ありがとうございます! 私、せっかくもらったこの力、大切に使います。困っている人を助けて、今度こそ、みんなで笑い合えるハッピーエンドを目指します!」
「その意気ですよ、ルミナ。……ああ、そうそう。あまりに強大な力を与えすぎてしまったので、少しばかり『うっかり』な部分が残るかもしれませんが……まあ、それは貴女の愛嬌ということで」
「え? うっかり……? それ、どういう意味ですか、神様ーっ!?」
聞き返そうとした瞬間、足元に魔法陣が広がり、私は光の渦に飲み込まれていきました。
これが、私と神様の「契約」の全貌。
……そして、草原に降り立った私が、その「うっかり(方向音痴)」の洗礼を受けるまで、あと5分のことでした。




