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第19話:家族の絆と、震える肩

テラスの夜風は冷たいはずなのに、介抱してくれるシエルとガルドの体温が伝わってきて、私の胸の奥はぽかぽかしていた。


「……シエル、大丈夫?」


私は、隣で石のように固まっているシエルの袖をそっと引いた。


さっきの老騎士の言葉――『暗黒の処刑人』。その言葉を聞いた瞬間から、彼の肩は微かに震えたままだ。


「……なんでもない。君は自分の心配をしていろ」


いつもの毒舌。でも、その声はどこかひび割れていて、今にも消えてしまいそうに弱々しい。


(シエルが、あんなに怖そうな顔をするなんて……。きっと、すごく嫌なことを思い出してるんだ。……よし!)


私は、ガスで張って重たいお腹を抱えながら、「えいっ」とシエルの冷たい両手を自分の両手で包み込んだ。


「シエル、手が氷みたいだよ! ……あ、わかった! シエルもお腹にガスが溜まって、冷えちゃったんだね!?」


「……は?」


「大丈夫だよ、恥ずかしがらなくても! 私がいつもエルナさんにやってもらってる『の』の字マッサージ、今度は私がシエルにやってあげるから! ほら、ここ、おへその周りをね……!」


「待て、ルミナ! 何を……やめろ、ここで服を捲り上げようとするな!」


必死に抵抗するシエル。でも、私の**『敬愛の加護』**が無意識に発動して、私の手から伝わる温かな魔力が、彼の心を包み込んでいく。


「ガハハ! シエル、諦めな。嬢ちゃんの『真心』からは逃げられねぇぜ」


ガルドが豪快に笑いながら、私たちの肩を大きな両手で一つにまとめた。


「暗黒だろうが処刑人だろうが、知ったこっちゃねぇ。俺たちが知ってるのは、方向音痴の嬢ちゃんを放っておけなくて、なんだかんだ理由をつけて隣にいる、お節介なシエルだけだ」


「……ガルド……」


「そうよ。家族に隠し事はなしって言いたいけれど、言いたくない過去があるなら、私たちがそれを上書きするくらい楽しい思い出を作ればいいのよ」


いつの間にか、王宮の厨房から「お腹に優しい特製生姜湯」を持ってきたエルナさんが、聖母のような微笑みで立っていた。


シエルは一瞬、呆然とした顔をした後、深い溜息をついて、私の頭にポンと手を置いた。


「……本当に。君たちの前では、シリアスになることすら許されないらしい」


その顔には、いつもの皮肉めいた、でも心から安らいだような笑みが戻っていた。

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