第17話:鏡の中の「女の子」
「さあ、大変! 城へ行くなら、それなりの格好をしないとね」
翌日、宿の一室はエルナさんの手によって「即席の美容室」へと変貌していた。
「私はいいよ、いつもの服で……」と遠慮する私を、エルナさんは「女の子にはね、魔法が必要な時があるの」と優しい笑顔で鏡の前に座らせた。
数時間後。
「……よし、完璧ね。さあ、二人を驚かせに行きましょうか」
エルナさんに背中を押され、私は慣れないロングドレスの裾を気にしながら、ロビーで待つ二人の前へ出た。
普段の旅装束ではなく、淡い光を放つシルクのドレス。髪は緩く編み込まれ、エルナさんが魔法で咲かせた小さな白い花が飾られている。
「……あの、お待たせ。……変かな?」
私が恐る恐る顔を上げると、そこには石像のように固まった二人がいた。
「………………」
シエルは持っていた本を床に落としたことにも気づかず、目を見開いて私を凝視している。いつもは青白い彼の頬が、耳の付け根まで真っ赤に染まっていた。
「……っ。……ああ、いや。……悪くない。……いや、その……」
語彙力を失ったシエルが、珍しく視線を泳がせながら、片手で口元を覆ってそっぽを向いた。
「じょ、じょ、じょ、嬢ちゃん………………っ!!」
一方のガルドは、叫ぶような声を上げた後、そのまま「ブフォッ!」と鼻血を出して後ろに倒れ込んだ。
「ガルド!? 大丈夫!?」
「あ、ああ……。眩しすぎて、直視できねえ……。俺、今なら死んでもいい……」
「死なれては困るわ。さあ、夜会はこれからよ?」
満足げに微笑むエルナさんに促され、私たちは城へと向かう馬車に乗り込んだ。
狭い車内、私の隣に座ったシエルの肩が、いつもより少しだけ熱く感じられたのは、きっと気のせいじゃない。




