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第14話:聖母の微笑み、賢者の裁き

「エルナさん!? 危ないから中にいて!」


私が叫ぶのと同時に、エルナがスッと、いつものお玉……ではなく、美しく輝く純白の杖を掲げた。


「シエル君、ガルド君。少し下がっていてちょうだい。……土や埃が舞うと、お料理が汚れちゃうから」


エルナの声はどこまでも穏やかだった。けれど、その瞬間、大気が震えた。


彼女の足元から、黄金色の魔法陣が幾重にも重なって展開される。その圧倒的な魔力の密度に、シエルが目を見開いて絶句した。


「……っ!? なんだ、この魔力量は……。……王宮魔導師を凌駕している……!?」


「『天の裁き、大地の慈悲グラン・カタルシス』」


エルナが優しく杖を振るう。


直後、空から降り注いだのは矢ではなく、巨大な光の柱だった。


それは盗賊たちを傷つけるのではなく、彼らが立っている崖の足場だけを精密に、そして完璧に粉砕し、彼らを戦意喪失させるほどの光圧で地面に縫い付けたのだ。


「ひ、ひえぇぇぇ! 助けてくれぇぇ!」


「ば、化け物だぁぁ!」


逃げ惑う盗賊たちを横目に、エルナはパチンと指を鳴らした。


すると、街道を塞いでいた巨大な岩が羽毛のように軽々と浮き上がり、道端へと片付けられていく。


「……さて。お掃除完了ね。さあ、みんな。お茶が冷めないうちに街へ急ぎましょうか?」


「………………」


沈黙。


ガルドは斧を落とし、シエルは弓を持ったまま固まり、私はアクアと一緒に口をポカーンと開けていた。


「……エルナさん。もしかして、すっごく強い魔法使い……なんですか?」


「あら、言っていなかったかしら? 私、昔はちょっとだけ、賢者なんて呼ばれていたこともあるのよ。……でも、今はただの『お母さん』よ?」


エルナはそう言って、何事もなかったかのように再び手綱を握り、鼻歌を歌い始めた。


「……シエル。俺、これからはエルナさんのおかわりを断らないことにするぜ」


「……同感だ。逆らったら、この世から消される……」


最強の「お母さん」の正体を知った私たちは、戦々恐々としながらも、どこか誇らしい気持ちで王都への道を再開したのだった。

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