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第10話:水龍アクアの「恩返し」は海よりも深く

「きゅるる〜ん!」


旅の仲間に加わった水龍のアクアは、今日もルミナの肩に乗ってご機嫌だ。


聖属性の魔力を持つルミナは、アクアにとって最高に居心地がいい「お母さん」らしい。


「よしよし、アクア。今日もいい子だね。……あ、シエル、見て! アクアが私の魔力に反応して、虹を出してくれたよ!」


「……浮かれてる暇があるなら足を動かせ。このペースじゃ、日が暮れるまでに山を越えられないぞ」


シエルの毒舌が飛ぶが、ルミナは慣れた様子で「はーい」と受け流す。


しかし、その日の午後のこと。一行の前に、日照り続きで干からびてしまった小さな村が現れた。


「……ひどい。畑がカラカラだわ。みんな困ってるみたい……」


「そうだな。このままだと、次の収穫は絶望的だろうぜ」


ガルドが斧を背負い直し、沈痛な面持ちで村を見渡す。


ルミナが「何かできないかな」と呟いたその時。肩の上でアクアの瞳がキラリと輝いた。


「きゅる……きゅるるるるーっ!」


アクアがルミナの魔力を一気に吸い上げ、空高くへと舞い上がった。

次の瞬間、空には暗雲が立ち込め、村全体に恵みの雨が……降り注ぐはずだった。


「わあ、雨よ! ……って、えっ!? ちょっと待って、水流が強すぎない!?」


アクアが放ったのは「雨」ではなく、もはや「滝」だった。


空から巨大な水の塊がドッカン、ドッカンと落ちてきて、畑の土を耕すどころか、村ごと押し流してしまいそうな勢い。


「きゅるる!(お母さんのために頑張ったよ!)」


「アクア、やりすぎ! 村が沈んじゃうーっ!」


「……お前ら親子は、加減という言葉を辞書で引いてこい!」


シエルが叫びながら魔弓を構える。


「ガルド、泥を食い止めろ! ルミナ、アクアの魔力を逆噴射して霧に変えろ!」

「おうよ! 斧の風圧で押し戻してやる!」


「分かった! えいっ、氷魔法で固めちゃえ!」


ルミナが慌てて放った氷魔法により、村のど真ん中に「巨大な水の氷像」が完成した。

キラキラと輝く氷のモニュメントは、数日間、村の貴重な水源(少しずつ溶ける)として重宝されることになる。


「……。……。……」


「……お前たちの旅には、破壊神の称号がお似合いだ。……**ガルド、ルミナ。今日の二人の夕飯は抜きだ。アクア、お前もだ。**猛省しろ」


シエルは額を押さえ、アクアの首根っこをひょいと掴んで深い溜め息をついた。


「きゅる……(しょんぼり)」


「ええっ!? そんなぁ、シエル! 頑張ったのはアクアなんだから、私まで抜きにしなくてもいいじゃない!」


「連帯責任だ。……だいたい、君が甘やかすからこのチビ龍まで加減を知らなくなるんだよ。ほら、さっさと歩け! 次の街に着くまでに日が暮れるぞ!」


「……へいへい。嬢ちゃん、シエル様がマジでお怒りだ。ここは大人しく従っておこうぜ……」


ガルドが肩をすくめ、お腹を鳴らしながら歩き出す。


「ごめんね、アクア。でも、ありがとう。……今度は一緒に練習しようね」


私はアクアを抱きしめ、怒ってスタスタ歩いていくシエルの背中を、「ごめんなさい! シエル、やっぱり半分だけでいいから食べさせてーっ!」と追いかけるのだった。

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