第8話:ちょっと磨いただけなんです! 本当なんです!
「ガルド、その斧……なんだか汚れが目立ってない? 道具は大事にしなきゃダメだよ!」
ある日の野営中、ルミナはガルドが愛用する巨大な斧『イグニス・バスター』を指差した。
「お、そうか? まあ、こいつとは長い付き合いだからな。汚れも勲章みたいなもんだが……」
「ダメダメ! 私がピカピカにしてあげる! 任せて!」
ルミナは「女子力(掃除力)の見せ所!」とばかりに、ガルドから斧を預かった。
そして、自分の聖剣を磨く時と同じように、無意識に「浄化」と「強化」の光魔法をたっぷりと込めて磨き始めた。
『チリンッ……キラキラキラ!』
「え……? ちょ、ちょっと、光りすぎじゃない……?」
ルミナの手の中で、ただの鉄の塊だった斧が眩い白銀の光を放ち始める。
炎を宿していたはずの刃は、神々しい「聖なる炎」を纏い、装飾には見たこともない神聖な紋章が浮かび上がった。
「よし、できた! はい、ガルド、お返しするね!」
「お、おう……サンキュな……。って、重っ!? なんだこのプレッシャーは!」
受け取ったガルドが、試しに近くの枯れ木に向かって軽く斧を振るった。
『ドォォォォォン!!』
「……え?」
ただの枯れ木を叩き割るはずが、斧から放たれた聖なる炎の斬撃は、森の奥まで一直線に突き抜け、雲さえも二つに割ってしまった。
「「………………」」
「……嬢ちゃん。俺、ただの重戦士なんだけど。これ、勇者が持つやつじゃねえか?」
「ルミナ。……君は武器職人の歴史とプライドを一瞬で粉砕するつもりか?」
シエルの冷ややかな、けれどどこか震える声が響く。
「違うの! ちょっと汚れを落とそうと思っただけなの! 本当なんです!」
「……もういい。ガルド、その『神具』を絶対に人前で全力で振るうな。街が消える」
結局、ガルドの武器は「イグニス・バスター・エトワール」へと勝手に進化を遂げ、ルミナの「うっかり伝説」がまた一つ更新されたのだった。




