#32 告白
「……いいよ」
少しいたずらっぽい相原さんの笑顔。
頭の中が真っ白になった。
……今、なんて言った?
いいよ、って言ったよな?俺の幻聴?
「これからよろしくね、ななちゃん――いや、七瀬くん」
現実ですよと証明するかのように、相原さんが口角を上げる。
え、ちょ、嘘だろ!?俺、相原さんと付き合えるのか……!?
「え、あの、その、な、なんで」
「もう、告白したくせになんでテンパってるのよ」
「いやぁ、ダメ元だったもんで……」
まさかオッケーしてもらえるなんて。
最初から負け覚悟の作戦を練ってばかりの俺には、全く描けなかった脚本だ。
相原さんは肩をすくめる。
「ほんと、七瀬くんて情けないわね」
「し、失礼な」
俺がムキになって言い返すと、相原さんはぷっと吹き出した。
「とにかく、今日から私の彼氏なんだから、恥ずかしくないように振る舞ってよ?」
「は、はい……」
自信に満ち溢れた相原さんの声。動揺する俺を面白がっているようだが、想定外な展開に脳が追いつかず、ぎこちない動きになってしまうのも仕方がない。
「あの、相原さん」
「何?」
「どうして、オッケーしてくれたんですか?」
声が震えて、なぜか敬語になってしまう。相原さんは少し首を傾げた。
「どうしてだと思う?」
「ど、どうしてですか?」
「ちょっとは自分の頭で考えてよ」
相原さんはそう言ってから、照れたように俯いた。
「……最初はね、ショックだったんだけど」
「え?」
「私、本当にななちゃんが大好きだったから。中身が七瀬くんだってわかった瞬間ほんとに落ち込んで」
グサっ!
なんという物言い!
全く、相変わらずこの人は言葉を選ばない。歯に衣着せぬってやつだ。
俺は自分の心に絆創膏を貼りながら、「はぁ」と相槌を打つ。
「……でもね、段々好きになってたの。最初はイメージと違すぎて信じられなかったけど、慣れたら意外と受け入れられたし、むしろ面白いなって思って。一種のギャップ萌えみたいなね?」
相原さんが髪を耳にかけながら言う。
……この話、どっかで聞いたことあるぞ。
数ヶ月前の夕方。
俺は憧れの相原さんの「お嬢様」な一面を知ってショックを受けたけど、気づいたら彼女の素の部分に惹かれていた。
膨れた理想が崩れた先に、それ以上の沼があった。
多分、そういうことだろう。相原さんも、同じ理由で俺に恋してくれたんだろう。
「……私、何言ってんだろ。意味わかんないよね、ごめん」
「わ、わかんなくないよ」
自然と声が強まった。
暗闇でもわかるほど、相原さんの頬が赤い。
「どんな理由であれ、相原さんが俺のことを好きになってくれたのがすごく嬉しい」
自分でも驚くほど、まっすぐな言葉が飛び出した。
「……ありがとう」
「ど、どういたしまして」
あれ、今の返し、確実におかしかったな。まあいいか。
俺たちは何も言わず、ただ黙って駅の方に歩き出した。
ネオンの光が見えてきた頃、相原さんが小さく切り出す。
「あのさ、七瀬くんと付き合うとはいえ、たまにはななちゃんになってくれる?やっぱり、ななちゃんの見た目は捨てがたいっていうか」
「はいはい、わかりました」
「ふふ、やったね」
おいおい、結局好きなのは俺じゃなくてななちゃんじゃないか?
まあいい。いつか、ほんとに俺に惚れさせてやる。
俺は心に固く誓った。
「てかさ、相原さんって何がきっかけでメイド喫茶通い出したの?」
ふと浮かんだ疑問を吐く。
相原さんは少しだけ眉を動かし、それからニヤリと笑った。
「それはまだ内緒。もっと仲良くなったら教えてあげる」
「何それ、ずるい」
「別にいいでしょー!……って、きゃっ!」
突然、相原さんが道端の石に躓いた。慣れない下駄で疲れていたのだろう。
俺は咄嗟に相原さんの手を取った。
「……もう、本当にお嬢様は危なっかしいんですから。手が焼けますね」
俺がため息混じりに言う。
相原さんは特大の笑顔を浮かべ、俺の手をぎゅっと握った。
「ななちゃんありがとう!」
七瀬くんと相原さん。そしてときどき、ななちゃんとお嬢様。
お給仕する者とされる者。宿題を押し付ける者と、押し付けられる者。
学年一位と学年最下位。器用貧乏と不器用女王。
俺たちは正反対だ。でも、どこか似てる気がする。
「相原さん」
「何?」
「俺たち、きっと上手くいくよ」
俺が胸を張って言うと、相原さんは呆れたように返す。
「何よ急に。まだ付き合って数分なのに」
「でも俺は運命感じてるよ?」
「はいはい、そういうのいいから」
さすがのリアリスト。俺は笑って、それから右手を強く握った。
「相原さん、今日はありがとう」
「こちらこそ。楽しかったよ、七瀬くん」
「ちなみに俺、夏休みの課題全然終わってないから。明日とか、頼んでもいい?」
「ななちゃんの自撮り送ってくれるならやってあげてもいい」
「いくらでも送りますよ、お嬢様」
2人で同時に吹き出す。全く、俺たちは何をやってるんだ。
普通じゃない関係性。でも、繋いだ手は確かにあたたかい。絶対、この手を離したく無い。
空に浮かんだ満月が、2人の始まりを祝福していた。
無事完結しました♡
前エピソードの投稿から期間が空いてしまったのですが、更新が無い間にも読んでくださった方がいて嬉しいです(߹ㅁ߹)
自分で書こうと決めていたところまで書ききれたので、ここの場面で完結にします♪
いいねやコメント、ブックマークをくださった皆様、本当にありがとうございました⋆*
初めての投稿で右も左も分からない状態でしたが、読んでくれる人がいるということが大きなモチベーションになりました o̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ ♥(もちろん、まだまだいいね待ってますよ!!笑)
大学生になったら、たくさん小説を投稿する予定です♫アイデアだけは腐るほどあります!!笑
そのときはぜひ覗きにきてください꒰՞⸝⸝⊃ ·̫ <՞꒱きっと文も成長しているはずです……笑
最後までご覧いただきありがとうございました♡
好きを極めて、いつか文章でご飯を食べられるよう頑張ります꙳⋆(lllᵔ⩌ᵔlll)౨♪
咲良こと




