第七話 平民シノ(1/2)
シノは平民出身だったが、比較的裕福な家庭で育った。
そして幸運にも、彼女は広大な領土、多数の星系を支配するニャニャーン神聖帝国の首都星「ニャニャーン」の、それも帝都「セレニャール」で生まれた。
平民とはいえ、政治と文化、学問の中心で生まれ育ったのだ。
彼女の両親はその商才で多大な財をなし、貴族や学者にも知己が多かった。
教育に熱心な両親は、シノが幼い頃から著名な人物を招き、彼女に学問と教養をつけさせた。
シノは神童だった。
記憶力と理解力、応用力がずば抜けて高く、学師でさえ驚くほどだった。
彼女はあらゆる知識と教養を、まるでスポンジのように吸収していった。
教えを全て吸収し終えると、次の師を探し、その欲求はとどまることがなかった。
向上心も高く、努力を惜しまない天才だった。
貴族の邸宅にもよく招かれた。
何もかもが輝いているように見えた。
貴族たちの話を聞くたびに、まるで夢のような世界だと感じた。
平民でありながらこの環境で育った彼女にとって、「貴族」とは遠く見上げるものではなく、自らが目指すものへと変わっていった。
かつて、一度だけ皇宮に向かう父に連れられて中に入ったことがある。
それは、これまで訪れたどの貴族の邸宅とも比べものにならなかった。
そこでシノは知った。
上には上がある。そして上限は存在せず、どこまでも続くということを。
彼女の向上心に、絶対に消えることがない火が灯った瞬間だった。
彼女の学びは収まることがなかった。
14歳になった時、一人の師が冗談ともとれることを彼女の父に言った。
「シノ君は天才だ。彼女は大学に飛び級で入学できると思いますよ。
それも、あのニャニャーン帝都大学にです。」
両親の喜びは尋常ではなく、彼女に学者になることを強く薦めた。
平民にとって、それは最上級の待遇が約束されているからだ。
だが、彼女はどうしても乗り気になれなかった。
ある時、軍学の師に尋ねた。
「先生、どうしたら私は貴族になれますか?」
下級貴族である師は驚いた顔をしたが、すぐに真面目にその方法を告げた。
「シノ君は貴族になりたいのか?」
「はい!私は貴族、それも大貴族になりたいです!」
「ははは……大貴族か。
そうなったら私もその庇護のもとにおいてもらわないといけないな。
いやいや、からかって済まない。その方法はある。」
「本当ですか!先生!」
「ああ、提督になることだ。
このニャニャーン神聖帝国は軍国主義の国だ。
貴族と同様に軍人は優遇される。
そして軍人には武勲を積むことができる。
つまり、国のために尽くせば、いずれは貴族に取り立ててもらえる可能性があるということだ。」
異様な光がシノの目に宿った。
「具体的には!?」
「そうだな。ニャニャーン士官学校に入学するのだ。
下手をしたら平民の君には帝都大学に入学するよりも難しいかもしれないぞ。
倍率で言うとだな、平民であれば5000人に1人……入学できるかどうかだ。
そこを優秀な成績で卒業したら、宇宙軍であれば艦長待遇から開始できるかもしれない。
佐官から開始だ。
これもニャニャーン士官学校ならではと言うところだが、一筋縄ではいかないぞ。
それにだ。艦長になれたからといって終わりではない。
それからは君の腕次第だ。将官を目指すんだ。
いずれは地方艦隊、さらに武勲をため、下部主力艦隊の提督になり、そこから武勲を上げ続ければ……晴れて主力艦隊の提督に昇格し、大貴族様の仲間入りだよ。
はっはっは。
もし君がそうなったら、儂の授業料は10万倍にしても弟子候補が溢れるぞ!
例えシノ君が優秀であっても、儂が生きている間にはさすがに無理かな、はっはっは。」
最後の方はシノは聞いていなかった。
それほど彼女の頭の中は晴れ渡り、貴族への道筋がしっかりと刻まれた。
彼女は猛反対する両親を半ば強引に説き伏せ、士官学校の入学試験に挑んだ。
全教科、全実技、全論文——面接以外の全ての項目で満点の主席合格だった。
★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★
はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!
硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。
今回は平民美少女、シノさんのお話!
作者子ちゃんもシノさん大好きですよ!だって、努力家で、ある意味すっごく純粋な子なんです。
彼女の夢はただ一つ!
見たことのない世界を見てみたい!
それを実現するために、ひたすら努力を続けたんです。
秀才は努力の結晶、天才は努力なしに開花する花。
じゃあ、努力する天才はなんじゃい!
って話ですよ。
そう、彼女はまさにチートステータス持ちなんです。
そして、このチートステータスが、絶妙にいい感じの家庭に生まれたおかげで、本来なら平民には手の届かない皇宮の奥を夢見ちゃったんです。
そして、彼女は普通にエリート街道をまっしぐら。
さて、この先、シノさんのたどり着く果てとは?
後半へつづく!
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あとがき
平民シノの動力の根源を語っています。
ですが、長くなってしまったので2分割です。
各英雄の骨格を知ることで今後の物語の推理が面白くなると思います。
次回もそのままお見届け下さい。
方針変更で話を深堀細分化してしまったので・・挿絵が間に合ってません。
はい、すみません。挿絵は気が向いたら後から差し込みます。
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前話を忘れた方向けの振り返り一コマ
(私の物語はタイトル詐欺と言われます。なので振り返り詐欺も追加で)




