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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第五章 風の選別、律の胎動

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第六十四話 不気味な譲歩

第4艦隊旗艦。


イレーネはカイとの通信を終えようとした時、

別の通信が割り込んできた。


発信元を見て、彼女は顔を歪めた。


「あ、カイさん、またかけなおしますぅ。シズク様からですぅ。

 ……出たくありませんねぇ」


カイは心配そうに尋ねた。


「大丈夫か?」


「はぁい、なんとかしますぅ……」


通信が切れた。


イレーネは深く息を吐き、艦橋の奥の提督室に入った。

扉を閉め、専用の暗号通信でシズクの呼びかけに応じる。

画面に映ったシズクの表情は、いつもより硬かった。

イレーネは覚悟を決めて口を開いた。


「シズク様、申し訳ありません。

 ロドリクはカイさんが仕留めましたが、セリオンは逃しましたぁ」


シズクは静かに答えた。


「大体のことは把握している。

 大それたことをしてくれたな、イレーネ。

 だが、今回をそれを責めるために通信を繋いだわけではない」


イレーネは目を見開いた。


(え?怒られるどころか……処刑されるかと思ってましたのに……)


「え?」


シズクは珍しく困惑した表情を見せた。


「実は中央の動きが、かなり展開が速い。

 この私ですら頭が追い付いていない状況だ」


イレーネは驚愕した。

あのシズク様が、頭が追い付いていない?


それは一体どういうことなのか。


「シズク様が?どういうことですかぁ?」


「まずセリオンは緊急FTLの影響で行方不明だ。だが、生存は確実」


「はぁい。それは現地でも取り逃がしたのを確認しましたぁ。

 おそらく帰還するにはひと月はかかるかとぉ。

 ですが第3艦隊はタキオンランスで7割程度が蒸発しましたぁ。

 第6艦隊も失った今、ラートリーは軍事力のほとんどを失ったことになりますぅ。

 何か次の一手を打ってくるはずですぅ。

 ……私の命とシズク様の責任問題の追及かとぉ」


イレーネは覚悟していた。

第3艦隊への誤射は、どう言い繕っても重大な軍律違反だ。

ラートリーがこれを利用しないはずがない。


シズクは静かに答えた。


「第3艦隊は7割も消失したのか?

 確かにここでラートリーは次の一手を打たねば政界での力を失いそうだ。

 だがな、イレーネ。奴は今回の損失の件は戦術上、致し方ないと声明を発表した。

 朝敵を討つのが最優先でありそのための尊い犠牲だと」


イレーネは絶句した。


「え?どういう意味ですか?」


シズクは珍しく、苛立ちを隠さなかった。


「わからん、私にも全くだ。お前でもわからんか?」


イレーネは必死に考えた。

だが、どう考えてもラートリーの意図が見えない。


「はい、全く……。

 ここは必要以上に騒ぎ立てて私はもちろん、

 シズク様のお命すらも狙われる恐れを感じてましたぁ」


シズクは頷いた。


「そうだな、この報告を聞いた時、次の一手を考えるため頭が痛かった。

 だが先に奴がこちらの斜め上を仕掛けてきた。

 不気味だ」


二人は沈黙した。

ラートリーが何も追及してこない。


それは、逆に恐ろしいことだった。

何か、もっと大きな策があるのではないか。


イレーネが尋ねた。


「どういうことでしょうか?ちなみに私の処遇は?」


「責任を取って第4艦隊の提督は降りてもらう。だが命までは取らんそうだ。

 しばらくは蟄居だ。ちょうどいい。私の傍で参謀として控えろ」


イレーネは安堵の息を吐いた。


「はい……」


だが、シズクの次の言葉で、再び緊張が走った。


「そして驚くことに第4艦隊の指揮権はまだ私の手元にある。

 次の提督を推挙するよう、ウララ陛下からの達しだ」


イレーネは首を傾げた。


「ますますわかりませんね。

 軍事バランスが崩れた状態でラートリーは何を考えてるんでしょうかぁ?」


シズクは窓の外を見つめた。


「そうだ。何か裏で奥の手を進行していると思うが、見当が付かん」


イレーネは別の疑問を口にした。


「カイさんとウララ陛下の謁見の件はどうなりましたかぁ?」


「それもなのだ、カイ凱旋後の半年後に祝勝会でウララ陛下直々に叙勲をされるそうだ。

 こちらも我らの思惑通りだ」


イレーネは眉をひそめた。


(思惑通り……?いえ、これは罠ですぅ。

 ラートリーが、こんなに簡単に譲歩するはずがない)


「……何かありますねぇ。私はすぐに戻りますぅ」


シズクは力強く頷いた。


「急げ。こちらも諜報網をラートリーに張る。お前はウララ陛下の所在を探れ」


「はーい!」


通信が切れた。


イレーネは一人、呟いた。


「ラートリー……あなたは一体何を企んでいるんですかぁ……?」


不安が、彼女の胸に広がっていった。


ロドリクの反乱は、シズクの思惑さえも斜め上で越えていく不思議な結果となった。

シズクは諜報に専念するため、第4艦隊の後任提督を速やかに推挙した。


挿絵(By みてみん)


選ばれたのは、アルシア・ルナフロスト侯爵。

齢22歳、異名は「氷華の軍師」。

白髪をツインテールにまとめた可愛らしい容姿ではあるが、

決して笑うことはない氷の女王だった。


冷徹な理論派で戦術は完璧。

だが、人心掌握には難がある。

部下からは「冷たいが裏切らない」と信頼されているものの、硬質的な天才であった。


万能にしてシズクの分身とも言えたレイナ。

柔軟にしてシズクを補うことができるイレーネ。


この二人と比べれば、アルシアは「劣化シズク」と評されても仕方がなかった。

シズクからしてみれば少し物足りない。


だが、トウガやラートリー陣営からしてみれば、喉から手が出るほど欲しい優秀な将官であることには間違いなかった。

アルシアはすぐに第4艦隊を引き継いだ。


そして第4艦隊は、ラートリーを牽制するために帝都へと向かった。

その間、シズクとイレーネは諜報に専念した。


だが、この2か月後、神聖帝国を揺るがすラートリーの秘策が発現する。

それは、誰も予想しなかった形で――。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。

第六十四話「不気味な譲歩」、タイトル通り、「ラートリーの不気味すぎる譲歩」が描かれましたね!

今回は、「シズクとイレーネの困惑」と「新提督アルシアの登場」がポイントでした!


ラートリーさんが、何も追及してこないというのが、逆にめちゃくちゃ怖いんです。

シズクさんとイレーネさん、二人とも困惑してるのが、すごく伝わってきました。

そして、新提督アルシアさん!

「氷華の軍師」、白髪ツインテール、決して笑わない氷の女王…。

これ、めちゃくちゃ気になるキャラですよね!

レイナさんとイレーネさんと比べると「劣化シズク」って言われてますが、それでも優秀な将官なんですよね。

アルシアさん、今後どんな活躍をするのか、楽しみです!

そして、ラートリーさんの「秘策」!

2か月後に発現するって、一体何なんでしょう!?

カイさんの叙勲も、何か罠が仕掛けられてそうで怖いです…。

次回、絶対見逃せませんよ~!

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