表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第五章 風の選別、律の胎動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/69

第五十九話 紅水の盟

フートニャム星系――


イレーネの第4艦隊が次々と星系境界にFTLジャンプして現れた。

すぐに情報士官が星系内情報を整理する。


「提督、第5艦隊の存在を確認!

 敵はこちらに向けて前進中です。」


「カイさん、せっかちですねぇ。

 もう戦う気満々ですかぁ。私達のことを待ってましたねぇ?

 射程に入る前に通信を繋いでくださ~い。」


4度目のカイとイレーネの対決が始まろうとしていた。

それぞれが射程ギリギリの所で停止し、様子を伺っている。


カイの第5艦隊は既に鋒矢隊形を取り、いつでも突撃に移れる臨戦態勢だ。

対するイレーネは魚鱗隊形でカイの突撃に対して防御の構えを見せている。


今回はイレーネの側からカイへと通信を繋いだ。

イレーネの顔を見ると気合を入れて睨んできた。


「出たな、巨乳お化け。」


「……セクハラ…。

 ふぅ。まぁいいです。

 では。やぁやぁ~!遠からん者は音に聞けぇ〜!

 近からん者は目にも見よぉ〜!

 我こそはぁ、ニャニャーン神聖帝国第4艦隊提督ぅ、静謀の水影〜!

 イレーネ・フォルセアと申す者なりぃ〜!

 いざ尋常にぃ〜、ふわっと勝負ぅ〜!」


「……。おい、ふざけてるのか?」


「いえ~?カイさんの真似をしただけですよぉ。」


「お前、バカにしてるだろ?」


「あー?カイさん、自分のやってたことぉ、バカだなぁって思ってたんですかぁ?」


「もういい!今日で決着つけてやる。切るぞ!」


「あぁ、ストップストップ~!!!

 待ってください。これですぅ。

 降参しますぅ。1勝3敗、カイさんの完全勝利ですぅ。」


ニコニコ微笑みながら用意していた白旗を、モニタの前でぱさぱさと振る。


「……お前、やっぱりふざけてるじゃないか!」


「大真面目ですよぉ。勝ちを譲るので一つだけお話を聞いてほしいんです。」


「ん?」


「今から私一人でカイさんのトゥルローニャッドに行きますぅ。

 撃たないでくださいねぇ?丸腰で行きますぅ。」


「待て!?おい、どういうつもりだ?!何の策略だ!」


カイが慌てて顔をモニタに寄せるが、それを無視してイレーネ側から通信を切断した。


「提督、お一人で大丈夫なのですか?」


心配そうにイレーネの参謀が声をかけるが、イレーネはにっこり微笑んだ。


「大丈夫ですよぉ。彼は騎士様ですぅ。

 こちらは何があっても攻撃したらだめですよぉ?」


「は!」


そう言うとイレーネは本当に一人で移動用小型ビークルに乗り込み、トゥルローニャッドに向けて移動を開始した。


迫りくる非戦闘用ビークルを見てカイの参謀が不安げにカイに確認する。


「提督、大丈夫でしょうか?相手はあのイレーネです。

 何を企んでいるかは分かりません。

 あの中に反物質爆弾でも入っていたならば、こちらのクルーに対する被害が甚大なものになります。」


カイはビークルを見据えて、首を横に振った。


「ダメだ!あの女は白旗を上げた。

 そして一人でこちらに向かうと言っている。

 それを策と恐れて攻撃してみろ。

 末代までの恥と思え。

 これが策で、我々が致命打を受けたとしても、それまでのことだ。

 むしろ、俺達の命と引き換えに、シズク陣営の名は地に落ちる。」


「ビークル到達します。」


「誘導ビーコンを発信、迎え入れろ。」


トゥルローニャッドの格納庫内にイレーネのビークルが着地した。


取り囲むように第5艦隊陸戦隊が包囲した。

カイが少し離れたところから指揮を執りつつ、見つめていた。


ビークルのドアが開き、イレーネが頭に手を当てて下りてきた。

同時に陸戦隊員が取り囲んで銃口を向ける。


「約束通り、丸腰ですぅ。

 ビークルの中も見てもいいですよぉ?

 でも、帰るときには返してくださいねぇ?」


いつも通りの様子のイレーネが、遠くにいるカイを見つけて、手を振った。

それと同時に陸戦隊が一斉にイレーネに向けて引き金を引きかけたため、慌てて再び頭に手を当てる。


「ごめんなさぁい、何もしませんよぉ。」


「銃口を下ろせ!」


遠くからよく通る声で指示をだし、カイがゆっくりと歩み寄った。


「こんな奴でも神聖帝国軍大将だ。礼を忘れるな。」


指示に従い隊員は銃を握ったまま、取り囲みつつ、背筋を伸ばして礼を示す。


「ありがとうございますぅ。手を下ろしてもいいですかぁ?」


「構わん。俺がカイ・クリムゾンだ。」


「イレーネ・フォルセアですぅ。」


ゆっくりとイレーネが握手を求めたため、照れくさそうに握手に応じる。


「で、何の用だ。わざわざこんな危険を冒して。」


「はい、ここでは何ですからぁ。

 カイさんのお部屋で二人きりで話しても良いですかぁ?

 もちろん、身体検査していただいて結構ですよぉ。」


「不要だ。武器を持っていようが、お前に遅れは取らん。ついてこい。

 ビークルを見張るもの以外は持ち場へ戻れ。」


カイに先導されてイレーネは第5艦隊指令部、カイの執務室へ向かって歩いていた。


「なんで信用してくれたんですかぁ?

 私はぁ、実は個人戦もかなりやりますよぉ?」


カイは無言のまま、一気に全身に闘気を纏い、隙を消した。


「嘘ですぅ。私はとても鈍クサイので実戦成績は常に”D”判定でしたぁ。」


「……おい!からかうのはやめろ!何のつもりだ!」


振り返って、怒りを露わにして怒鳴りつけると、イレーネが目を丸くして驚いた。


「えぇ?カイさんと仲良くなりたいからぁ、雑談してるだけですよぉ。」


今度はカイが焦る。


「……。

 ……黙ってついてこい。」


「はぁい。」


イレーネを執務室に招いて、応接間のソファーに座らせた。

自身も向かい合って座った。


「ここには、盗聴器は存在しない。

 また密偵の類も侵入はできん。話せ。」


「単刀直入に言いますねぇ。

 私と同盟を結びましょう~!」


「……無理だ。

 クリムゾンとアジュールは、相容れない。

 何より父上が同意しない。」


「もちろん、最終的にはぁ、両家の同盟は必須ですぅ。

 でも今、私が言ったのはぁ、私とカイさんの同盟ですぅ。」


「は?俺とお前の?」


「はぁい。敵の敵は味方ですぅ。」


「ラートリーとセリオンか?」


「おぉ!カイさんも敵を見抜いてましたかぁ!

 やはり私が尊敬する人ですねぇ!」


「な!?そっ尊敬?!」


ニッコリ笑って、少し前のめりでカイの目を見つめながら自信満々にイレーネが続けた。


「はぁい、カイさんは私達の世代での最高の英傑ですよぉ。」


カイは、さすがに照れくさくなるのを我慢して、真面目な顔で受け流した。


「せ……世辞は不要だ。続けろ。」


「トウガ様とシズク様の真の敵はぁ、ラートリーとセリオンですぅ。」


「それは我々も薄々感じてはいる。だが証拠はない。

 むしろ、シズクが義姉上の仇であることの方が事実だ。」


「証拠は二つありますぅ。

 一つ目、ニャケンプ星系の軍港副司令の身柄を私が確保していますぅ。」


「ニャケンプの副司令?」


「彼はセリオンに買収されていてぇ……、

 レイナ殿にニャーニレム星系への迂回を強制させましたぁ。」


「どういうことだ?」


「セリオンはニャーニレム星系にレイナ殿を向かわせることで、エリス様にレイナ殿がリオ様を狙っていると思わせましたぁ。」


「なんだと!?それは確かか?義姉上の件は父上からも聞いたことがある。

 義姉上がレイナを襲撃したのはリオを守るためだったと。」


「はい、残念ながらエリス様はセリオンの計略によって、レイナ殿を討ってしまい、結果としてご自身も戦死なされました。」


「セリオンが義姉上を謀っただと?確かなのか?」


「はい、間違いありませ~ん!

 副司令を徹底的に痛めつ……、根気よく説得した結果、ようやく教えてくれた事実ですぅ。

 嘘発見器でも、真実と断定されていますよぉ。」


「……。いや、信じよう。ここでお前が嘘をつくとは思えん。

 副司令とレイナの通信記録を確認したら、副司令がレイナの進路変更に関与していたかどうかは、事実確認ができる。」


「ありがとうございますぅ。

 二つ目ですが、ノア様を討った仇のセフィはラートリーに雇われていましたぁ。」


「は?なんだって!?ノアの仇が!?」


「はい、あの後、セフィはイリアキテルア聖王国で復権しましたぁ。

 その際の関係者の一人であるイリア人を拉致していますぅ。」


「……、お前達。かなりえげつないことをしているな。」


「いえいえ、とんでもないですぅ。

 言葉を間違えましたぁ。丁重にお招きしていますぅ。

 そのイリア人からの情報によると、復権にはぁ、ラートリーから多大な助力を受けていたそうですぅ。」


「……これも正しい情報ということだな?」


「はい、随分衰弱されていますがぁ、そのイリア人を提供することはできますよぉ?

 直接聞きますかぁ?」


「いや、いい。信じる。お前達のやり口の真似はしたくない。」


「つまり敵はラートリーとセリオンなのですぅ。

 ここまでは良いですかぁ?」


「あぁ。」


「最後にぃ、セリオンを排除したらぁ、陛下の所在を見つけられますぅ。」


「な?!なんだと!?陛下を!?」


「はい、陛下はラートリーとセリオンによって、巧妙に隠されていますぅ。

 私とカイさんでセリオンを第6艦隊ごと排除出来たらぁ。

 その隠蔽に綻びが生じてぇ、必ず陛下の所在も判明しますぅ!」


「陛下を取り戻すことが出来れば、この戦いを終わらせることが出来る……。」


「はぁい!その通りです。さすが、カイさん!

 それが、この紅水の盟の最大の目的なのですぅ!」


カイは静かに考え込んでいたが、やがて結論に至り、イレーネの目を真っ直ぐに見据えた。


「わかった。盟を結ぶ。両家の同盟には時間がかかる。

 まずは俺達二人が手を組み、最速で第6艦隊をセリオンごと打ち砕く。

 そのための策と準備が出来ているということだな?」


イレーネがにやりと笑った。


「はい、もちろんですぅ。」


身を乗り出して両手で包み込むようにカイの手を握った。

カイは急に手を握られたことで一瞬の焦りを見せた。


「カイさんと仲間になれて、とっても嬉しいですぅ!!」


イレーネの屈託のない笑みを見て、カイはつい目を反らした。


「あぁ、よろしく頼む。作戦を教えてくれ。」

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


今回は、イレーネさんとカイさんがついに“紅水の盟”を結びました!


これまで何度もぶつかり合ってきたカイさんとイレーネさん。

でも今回は、イレーネさんが“白旗”を振って、まさかの単身乗り込み!

「丸腰で行きますぅ」って、あまりにも大胆すぎて、作者子ちゃんも心配になりましたぁ…。


でも、カイさんは「俺は騎士だ!」と、イレーネさんの誠意を受け止めてくれました。

この“騎士道”が、今回の鍵だったんですね。


イレーネさんが語った“真の敵”──それは、ラートリーさんとセリオンくん。

そして、レイナさんやノアさんの死に関わっていた“証拠”も提示されました。

この情報を受けて、カイさんはついに決断します。

「俺達二人が手を組み、最速で第6艦隊をセリオンごと打ち砕く」

この一言が、紅水の盟の成立を告げるものでした。


紅水の盟は、ただの戦術的な同盟ではありません。

それは、次世代の英傑が、過去の因縁を乗り越えて、帝国の未来を選び取るための誓い。

イレーネさんの「カイさんと仲間になれて、とっても嬉しいですぅ!」という笑顔は、

この物語の中で最も“希望”に満ちた瞬間だったかもしれません。


次回、紅水の盟はどんな作戦を展開するのか?

そして、セリオンくんはどう動くのか──

作者子ちゃん、ちょっと落ち着きつつも、心の中ではドキドキが止まりません!


【あとがき】

この二人、結構良い感じなのかもしれませんね!

ラートリー陣営がどうでるか?


この赤青の内乱の行方は!?

先を推理出来ましたら感想をお願いします。



ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ