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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第五章 風の選別、律の胎動

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第五十五話 烈風、静謀に触れる

カイはテルニャーム軍港内のゲスト執務室の中で、次の目的地を検討していた。

補給参謀に向けて念のため確認する。


「遅れはないな?予定通り出発できるか?」


「はい、問題ありません。

 今回のような被害の少ない戦いであれば補給も修理も短時間で済みます。」


「そうか、次も上手くいくと良いな。

 次の目的地だが……ここと、ここで迷っている。」


星系図を指さしながら今度は情報参謀に問いかけ、参謀が冷静に返した。


「いずれも小者ですね。」


その回答に少しムッとするカイ。


「では、お前にも案はあるのか?」


「いきなり大本命はいかがですか?ここです。」


参謀が星系図を指さしタップした。開かれた情報には第4艦隊が表示されていた。


「ふっ……確かにこいつは大物だ。良いだろう。

 早期終戦が父上のお望みだ。

 新提督はイレーネだったか?情報はあるか?」


「申し訳ありません、情報と言ってもこれくらいしか。」


第8艦隊提督時代の戦果が表示される。


「微妙だな。優秀なのには間違いないが、これくらいなら俺の方が圧倒的に上だ。」


「そうですね、特筆するならば……毎度被害が大きく、そして戦果が必ずそれを大きく上回ります。

 敵がどんなに弱者でも強者でも……です。」


「判断が難しいな。被害が毎度多いのは無能の証明でもあるが、無敗、かつ毎度完膚なきまでに敵を打ちのめして勝利しているのが気になる。どう考える?」


「はい。これまでにないほどの強敵かと。」


参謀は挑発するかのような表情で分析した。

にやりと笑ってカイも返す。


「よし、次はこいつだ。ベアロッニャ星系へ向かう!」



第5艦隊は補給を済ませ、ベアロッニャ星系へと進路を向けた。


ベアロッニャ星系はクリムゾン陣営の星系だった。

そこを守る地方艦隊の第32巡回艦隊と伯爵の私設艦隊が第4艦隊によって呆気なく打ち破られ、今星系要塞がその猛攻に晒されていた。


「間に合ったか。」


星系境界に現れた第5艦隊に気づいた第4艦隊はすぐに星系要塞の射程外に撤退し、第5艦隊に向けて回頭、方円隊形で防御を固めた。


「よし、少しからかってやるか。第4艦隊へ通信を繋げ!」


カイは第4艦隊の旗艦〈ニャンユゥ〉に直通で接続した。

提督とみられる女が不思議そうにカイを見つめている。


「やぁやぁ!我こそは第5艦隊提督、カイ・クリムゾンだ!

 お前達第4艦隊を屠る者だ。

 だが、悲観することはない。地獄の鬼どもにこのカイ様と戦ったことを誇るがよい!」


「えぇっとぉ……なにかぁ、御用ですかぁ?」


何か珍妙な生き物でも見るような目でイレーネが見つめ返す。

微妙な空気が流れた


「おいっ!冗談が通じない奴だな!ただの宣戦布告だ!

 全く……。これでは俺が思いっきり滑ったみたいじゃないかっ!」


「……。えっとぉ、滑ってますよぉ?」


「うるさいっ!苛つく話し方だな!お前がイレーネだな?

 さぁ、覚悟しろ!」


カイは通信を叩き切って、全艦に突撃を命じた。

カイの突撃はまさにトウガの魂の継承だった。


トウガが得意としたクリムゾン式突撃は、最大船速で一丸となって敵に向かう。

彼らはシールドや追加装甲を用いず、その全てを攻撃に充てる。

高速移動中でありながら、彼らは上下左右のスラスターを巧みに使い、敵の攻撃を避けながら進んだ。


それでいて、高速移動中から放たれる自軍の砲撃は敵艦隊を正確に射抜いた。


クリムゾンの突撃練度は神懸っている。


かつてこの突撃で命を落とした敵名将がそう呟いたと言われる。


その攻撃はまるで前宇宙時代の、大陸を席巻した遊牧騎馬民族の騎射を思わせた。

敵は遠方から撃ち破られ、突進によって、隊形を掻き乱される。

そして突き抜けた後は、攻撃をかわしながら悠々と離脱し、再度襲い掛かる。


カイはトウガの突撃を確かに継承していた。


第4艦隊も例外ではなかった。


第5艦隊の遠距離攻撃により、第4艦隊の前衛艦が炎上した。

そして第4艦隊からの攻撃はほとんど命中しなかった。


第4艦隊の方円陣は複数回の突撃によって、ばらばらに切り裂かれて小型艦が四方に離散してしまっている。中央に残った主力艦が密集して防御を固めた。


「ん~~……カイさんは強いですねぇ……。弾が当たりません。

 でも、少しだけ動きの癖が見えてきましたよぉ。

 そろそろ反撃ですぅ!」


同じくカイも隊形を維持できていない第4艦隊に止めを刺そうとして大型宙間魚雷を全艦に装填させた。


「これでとどめた!全艦、突撃しつつ、ニャンユゥ並びに近辺主力艦に引導を渡してやれ!」


第5艦隊が再び第4艦隊に襲い掛かった。

イレーネも動く。


「全艦、粒子硬化器〈アストラ・ヴェイン〉を起動ぉ!」


粒子硬化器〈アストラ・ヴェイン〉ーー高エネルギー状態のアストラ粒子を用いてシールドに揺らぎを与え、 通常ならば容易に貫通してしまうような特定の武器も偏向可能にする。

すなわち、本来ならば貫通する実弾兵器をシールドで弾くことができる。

シズクが入手した先駆文明の撃破艦デブリを、研究して得た技術情報によって、生まれた新兵器だ。


「作戦コード21番ですぅ!」


作戦コード──それは、艦隊に事前登録された戦術を番号で呼び出す、極めて簡潔かつ秘匿性の高い指令方式である。艦長達はコードを入力する。


”コードネーム:ビリヤード”


作戦名と詳細情報がモニタ上に表示された。


作戦内容に従い、アストラ・ヴェインが生み出した前面シールドを、各艦が斜めに貼りなおした。

魚雷がシールドに接触し、淡い光を発しながら波紋のように揺らいだ。

そして宙間魚雷はそれに沿うように、いなされた。


「なんだ!?新兵器か!?くそ、乙な真似を!」


カイが悔しそうに叫んだ。だが突撃の手は一切緩めない。


「反撃ですよぉ!全艦!宙間魚雷を撃ち返すのですぅ!」


第4艦隊から宙間魚雷が網目のように多数発射された。


「どこ狙ってやがる!そんなとろいミサイル、俺達に当たるかよ!」


余裕で回避する。だが、その瞬間、ミサイルの命中による爆炎が第5艦隊から上がった。


「馬鹿な!避けそこなっただと?」


「ふふふぅ……。各所に散らされたフリゲート艦にアストラ・ヴェインを纏わせたのですぅ。

 このアストラ・ヴェインでミサイルの軌道を変えるとぉ・・・。ほぉーら!!」


イレーネがにやりと笑って呟いた。


突撃によって方々に散らされたフリゲート小型艦は第5艦隊を囲むように点在していた。


魚雷は直接狙ったわけではなく、そのフリゲート艦のシールドに向けて撃ちこまれていた。

何度かいなされて方向を変え、予測不能な角度から第5艦隊を襲った。


魚雷の被弾によって艦が足を止めた。

それは突撃全体の流れを鈍らせた。


その隙を見逃さず、イレーネの総攻撃が行われる。

今度は第5艦隊が集中砲火を浴びる番となった。


「なんだ!?何が起きている!?」


第5艦隊の参謀長が狼狽するが、カイは落ち着いて、先ほどの攻撃、ミサイルの軌道を確認していた。


「各艦!落ち着け!一旦、方円陣に変更。宙域22に全速で集合せよ!

 その後はシールド、追加装甲を前面に展開、お互いで補完しあえ!」


混乱しかけた第5艦隊はすぐに冷静さを取り戻し集合、そして万全の防備を固めた。


「あららぁ・・・。カイさんは烈風のような猪突提督だと思ってましたぁ。

 なかなかやりますねぇ。」


まるで甲羅に閉じこもった亀のように防御を固めた第5艦隊に向けて、有効な攻撃手段が存在しなかった。


「一旦距離を取りますよぉ!」


イレーネは後退した。


イレーネ側は最初の突撃で多数の艦が、小破、中破した。

だが、その後の総攻撃の反撃で、逆にカイ側は多数が中破、大破した。

一定距離離れたのを確認したカイは、すぐさまベアロッニャ星系要塞に退避した。


ここはクリムゾン領、一度カイは敗れたとはいえ、要塞が落とされない限りは勝敗はついていない。


とはいえ、この第一次ベアロッニャの戦いはイレーネ側の勝利といえた。


★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


第五章、いよいよ**「次世代の英雄」たちが、その力をぶつけ合いましたね!

今回は、「烈風の紅騎士」カイ・クリムゾンさんと、「静謀の水影」イレーネ・フォルセア**さんが、ついに激突しました!


烈風、静謀に挑む!

カイさんは、次の戦いの相手として、あえて**「大本命」である第4艦隊、つまりイレーネさんを選びました。

彼女の「毎度被害が大きく、それでも必ず完膚なきまでに勝利する」という戦績に、「これは手ごわい」**と直感したんです。


そして、ベアロッニャ星系で、二人の艦隊が激突します!

カイさんは、父トウガさんの得意技**「クリムゾン式突撃」で、イレーネさんの第4艦隊に襲い掛かります!

その「まるで騎馬民族のような」**圧倒的な攻撃に、第4艦隊の前衛は次々と炎上し、隊形はバラバラにされてしまいました。


このままでは、カイさんの**「烈風」**が、イレーネさんの艦隊を完全に吹き飛ばしてしまう…誰もがそう思いました。


静謀、烈風をいなす!

しかし!イレーネさんは、その**「熟考型の軍師」としての本領を発揮します!

「ん~~…カイさんは強いですねぇ…。」と、まるで他人事のように呟きながら、カイさんの突撃の「癖」**を見抜き、反撃のチャンスをうかがいます。


そして、カイさんが止めを刺すべく**「大型宙間魚雷」**を放った、その瞬間!

イレーネさんは、シズクさんから与えられた新兵器、**粒子硬化器〈アストラ・ヴェイン〉を起動させます。

これは、「通常なら貫通するはずの実弾兵器を、シールドで弾くことができる」**という、とんでもない兵器でした!


イレーネさんは、この新兵器を巧みに利用し、**「ビリヤード」**作戦を実行します。

宙間魚雷を、意図的にバラバラになった味方の小型艦のシールドにぶつけ、その軌道を変化させ、予測不能な角度からカイさんの艦隊を攻撃しました!


この、まるで手品のような、**「静かなる一撃」**によって、カイさんの勢いは完全に止められてしまいました。


第一次ベアロッニャの戦い、決着!

カイさんは、この奇襲攻撃に一瞬動揺しますが、すぐに冷静さを取り戻し、**「亀のように」**防御を固めて、イレーネさんの総攻撃を耐え抜きました。

そして、そのまま星系要塞へと撤退し、この戦いは、イレーネさんの勝利で終わりました。


カイさんは**「烈風」のように圧倒的な力で攻め、イレーネさんは「水影」のように静かにその攻撃をいなしました。

この二人の戦い方は、レイナさんとエリスさんとは全く違う、「知略」**を重視した戦いでしたね!


でも、この戦いはまだ始まったばかり…。

カイさんとイレーネさんが、これからどのような戦いを繰り広げるのか、本当に楽しみです!


読者ちゃんは、どっちを応援しますか?

作者子ちゃんは……選べねぇ!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


「烈風」のカイ・クリムゾンと

「静謀」のイレーネ・フォルセア


直情的でありながら、父の使命を背負うカイ。

一見おとなしく見えながら、誰よりも先の未来を見据えるイレーネ。


この二人の初対決は、まさに彼らの二つ名を体現する戦いでした。

カイの疾風怒濤の攻撃は、彼の熱い心を、そしてイレーネの時間をかけて染み込むような策略は、彼女の静かな知性をそれぞれ物語っています。


彼らは、親世代が背負った悲しみと、ラートリーの策略という霧の中で、どのように自らの道を切り開いていくのでしょうか。

未来を予測してみてください。



ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。

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