第五十四話 次世代を担う者 ー 烈風の紅騎士
トウガ陣営もエリスの第5艦隊を接収して自陣営に再編成しようとしていた。
シズクとは異なり、トウガは身内を信用していた。
元々、身内に優秀な人材が溢れる優れた血統の家系だったからともいえる。
エリスの後釜は下部主力艦隊第6艦隊の提督だったカイ・クリムゾンが継いだ。
カイ・クリムゾン
トウガの嫡男にしてクリムゾン家の正統後継者である。
彼は快活でリーダー気質、父に似て直情的だが、長兄としての責任感もある。
義姉のことは大好きであったが、感情的にならないように努めている。
エリスの第5艦隊は先のニャーニレムの戦いで多くの被害を出しているため立て直しに奔走していた。
「父上、帝都より先の戦いで損失した分の艦船が多数到着しました。」
「む?カイか。」
「弩級戦艦や大型空母、重装甲艦など主力艦も含め、多数です。
国費を使って、帝都の大型造船廠で建造してもらえたのは非常に助かりましたが。
少々、出来すぎではありませんか?」
「そうだな。陛下とラートリーによって決定したとは聞いているが。
正直に言えば、先のニャーニレムの戦いは我々の大敗だ。
エリスを失ったうえに主力艦はほとんど喪失した。
第2艦隊もそうだ。俺が冷静さを失ったばかりにほとんどの艦船が大破・沈没した。」
「はい、このままこの補充がなければいずれはアジュールに押し負けていたと思います。」
「そこだ。そこが引っ掛かるのだ、我らが戦力低下で動けなくなった間に帝国全体に火の粉が広がってしまった。それでも、我らがすぐにシズクに負けていれば、それで終わったかもしれん。」
「ただ、今回の件、陛下が父上の事を心配して手配して下さったとも聞いています。
そのお心遣いには応えるべきかと。」
「あぁ、これほど嬉しいお心遣いはない。だが、そのせいで帝国を焦土に変えては話にならん。
こうなったら、陛下のご厚意をありがたく頂戴し、一刻も早くシズクを屈服させてこの乱を収めねばならん。」
「はい。」
「この戦い、俺はもはや動けん。領土の守備もそうだが、帝都の動きも油断できん。
そして、周りの貴族共も放っては置けん。それはシズクも同様だ。奴も動けまい。
お前にかかっている。
お前がこの乱を収めるのだ。それがクリムゾンを継ぐ者の使命だと心得よ。」
「は!編成完了後、最も乱れが酷いテルニャーム星系に向かい、シズク派を撃滅してまいります。」
「頼んだ。」
帝都からの補充により第5艦隊の再編が終了した。
そしてトウガ陣営の反撃の狼煙として、カイ自らが激戦区のテルニャーム星系へ向かう。
その出陣式。
カイは第5艦隊の新たな旗艦〈トゥルローニャッド〉の前に立った。
会場に参加した第5艦隊の将官達、そして各艦内のモニタ越しに見つめる兵士たちは、皆、輝くような目でカイを見つめている。
カイはただの若き提督ではない。
あのクリムゾンの嫡男であり、未来の当主でもある。
そして実力は第6艦隊提督時に証明されている。
新たな英雄の誕生に立ち会えるのだ。皆の士気は高い。
月並みな出陣式の演説を行ったカイは、マイクの前から離れ、壇上ぎりぎりの位置に立った。
そして会場全体に聞こえるような大声で最後に語り掛けた。
「諸君!我々は一度アジュールに敗れた!だが、こうして再び立ち上がった!
陛下もこのように立派な艦船を我々にご用意くださったのだ!
その意味がわかるか?陛下は我々にご期待下さっているのだ!
我々は官軍であり、陛下の御為にも、この争乱を収める救世主となる!
皆の奮闘に期待する!」
「うぉぉ!!!!」
会場から熱気あふれる声が立ち上った。
カイの第5艦隊は士気だけではなく、クリムゾンによって叩き上げられた練度が高い兵達だ。
彼の二つ名が烈風とあるように、まさに疾風のような行軍でテルニャーム星系に向かうが、1隻たりとも脱落はなかった。
テルニャームの星系境界にジャンプして次々と第5艦隊の艦船が現れる。
艦橋の宙域図盤面上で状況を確認する。
既にトウガ派ヴェルグレイド伯爵の私設艦隊は全滅していた。
三方に散らばるシズク派貴族の私設艦隊が近くのコロニー惑星に対して略奪、あるいは資源宇宙基地の占領を実行中だった。
ドレファス伯爵家、ミルヴァーン伯爵家、カストレール伯爵家。
彼らはカイの第5艦隊の存在に気づいて、中央にいたミルヴァーン艦隊に合流しようとしていた。
各個撃破を恐れての行動だが、彼らが動き始めるよりも早く第5艦隊はミルヴァーンに向けて突進を行っていた。
「甘い!お前らごとき単独だろうが集合しようが同じだ!」
彼らの動きを意にも介さず、突撃する。
「奴らは臆病者だ、合流するまでは攻撃してはこない。
どうせ前面にシールドと装甲を張り巡らせて亀のように震えているだろうさ。
こちらはシールドも装甲も不要だ!何よりも早く到達せよ!」
ミルヴァーン艦隊は案の定合流するまで防御に徹していた。
「全艦、このまま素通りして敵背後で急速反転。丸裸の背中を叩いてやろうぜ!」
ミルヴァーン伯爵は全出力のシールドと全追加装甲を前面に集中展開し、高速で迫りくる第5艦隊に怯えて、迫りくる攻撃の衝撃に備えていた。
その瞬間、第5艦隊は一切の攻撃をせず、すれ違った。
「あぁ・!?なんだ!?」
伯爵は呆然として状況が把握できない。
その隙に背後に回り込んだ第5艦隊は急停止、急速反転し、全力の砲撃を浴びせた。
回頭中のミルヴァーン艦隊はシールドや装甲が薄い側面に全弾命中し、一斉に爆沈していく。
「120度回頭!奴らが状況を把握できない内に、次はドレファス艦隊に向けて突撃だ!」
全艦綺麗に回頭し、全速で進み始める。進みながら鉾矢隊形を作り上げた。
「ドレファス艦隊が見えました。」
情報士官が叫ぶ。
「よし!次は最初からぶっ放せ!遠慮は無用だ。撃ち抜け!」
ドレファス艦隊は先ほどミルヴァーン敗北の様子を分析しており、同じ轍を踏むわけにはいかず、前面にのみ防御を固めることが出来なかった。
今度はそれが仇となる。
元々、戦力的には私設艦隊では第5艦隊に敵うわけもない。3私設艦隊が合流してようやく勝機が見えたところだが、既にそれは実現不可能である。
即時退却するか、前面に防御を固めて、何とか耐えている間にカストレール艦隊と挟撃できれば、あるいは奇跡の一つでも起きたかもしれない。
だが、彼らは何事にも中途半端な対応しかできず、この強大な第5艦隊、しかも猛将カイを相手に正面から殴り合った。
第5艦隊はさしたる被害を受けることもなく、ドレファス艦隊を討ち破った。
そして回頭してカストレール艦隊に備えた。
その頃にはカストレール艦隊は退却を始めており、星系境界に逃げ込んだ。
「ち、一匹ネズミを逃がしたか。まぁ、いい。これに懲りたらもう出てこまい。」
カイは艦内放送で勝利を宣言した。
「義姉上ならもっとうまくやったかもしれないな。」
カイはエリスを思い出していた。
「いや、父上の重荷を一つ減らした。それで、俺の役目は果たせた。
全艦、テルニャーム星系軍港で補給と修理を行った後、次に向かう!
3日の休暇を与える!」
烈風は、焦土を駆け抜ける。
だがその風は、ただの暴風ではない。
それは、帝国を守る者の誇りと、失われた者への祈りを乗せていた。
★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★
はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!
硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。
第五章、いよいよ**「次世代」の提督たちが、その真価を発揮し始めましたね!
今回は、「烈風の紅騎士」カイ・クリムゾン**が、その圧倒的な力を見せつけてくれました!
烈風の反撃、クリムゾンの再起
エリスさんの後任として、トウガさんの嫡男、カイ・クリムゾンが第5艦隊の新たな提督に就任しました。
彼は、父のトウガさんに似て**「直情的」でありながら、「長兄としての責任感」も併せ持つ、まさに「クリムゾン家の正統後継者」**でした。
そして、ラートリーさんの策略によって、第5艦隊は失われた戦力を完全に補充します。
この補充は、この内乱をさらに大きくする要因となりましたが、カイさんにとっては、**「この乱を収める」**ための、ありがたい助けとなりました。
トウガさんは、この戦いをカイさんに任せ、**「この乱を収めるのだ。それがクリムゾンを継ぐ者の使命だ」**と、重い言葉を託します。
「烈風」カイの戦い方
カイさんは、再編成を終えた第5艦隊を率い、激戦区のテルニャーム星系へ向かいます。
彼は、ただの武力ではなく、**「戦術」と「心理」**を巧みに利用しました。
ミルヴァーン艦隊への攻撃:
彼は、臆病なミルヴァーン艦隊が**「防御に徹する」ことを読み、あえて攻撃せずに通り過ぎ、「丸裸の背後」**を叩きました。
これにより、ミルヴァーン艦隊は、何もできずに壊滅してしまいます。
ドレファス艦隊への攻撃:
ミルヴァーン艦隊の敗北を見たドレファス艦隊は、「中途半端な対応」しかできませんでした。
カイさんは、この隙を見逃さず、「正面から殴り合い」、圧倒的な力で勝利を収めました。
彼は、相手の心理を読み、**「敵が最も弱い部分」を的確に突きました。
これは、ただの「烈風」ではなく、「戦略的な風」**だったんです!
終わらない戦い、受け継がれる思い
カイさんは、勝利の演説で**「陛下は我々にご期待下さっているのだ!」と、兵たちの士気を高めます。
これは、彼らが、「私怨のため」ではなく、「帝国のため」**に戦っているという、強い信念の表れでした。
そして、勝利の後、カイさんは**「義姉上ならもっとうまくやったかもしれないな」**と、エリスさんを思い出します。
彼は、エリスさんの死を無駄にしないためにも、この戦いを終わらせることを心に誓っています。
これで、シズク陣営には**「静謀の水影」イレーネ**、トウガ陣営には**「烈風の紅騎士」カイ**という、二人の新たな提督が揃いました。
彼らが、この泥沼の戦いに、どのような風を吹かせるのか…。
気になりますね!
でも作者子ちゃん的には、あのツンツンヘアを指で触って血がぶしゃぁぁっていうギャグシーンみたいになるのか気になりますね!
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あとがき
もう一人の新たなキャラクター、カイ・クリムゾンの登場です。
全話のイレーネと火と水の関係ですね。
今回は騎士っぽい活躍は見せられなかったのですが
彼の二つ名は”烈風の紅騎士”です。
騎士って主人公っぽいですね。はい、油断すると死にます。
作者、そういう奴ですから。
でも、今後若い二人によってどう動いていくのか、予測がつきましたら教えてください。
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