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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第五章 風の選別、律の胎動

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第五十三話 次世代を担う者 ー 静謀の水影

シズクとトウガ──かつて帝国の両翼と称された二人の私闘は、従属貴族を巻き込み、帝室の沈黙のもとで、ついに新たな相貌を見せ始めた。


両雄の支配を超えて、勢力拡大を狙う各貴族たちが赤と青を背景にして、各々の利権をめぐる全国規模の争乱に発展した。


赤青の内乱──

それは、もはやシズクとトウガの手を離れ、彼ら自身でさえ止める術を失いつつあった。


彼ら同士の激戦による戦力消費で、支配力に陰りが見えたことも一因であるが、それ以上に貴族たちの灯した欲望の焔は、もはや誰にも鎮められず、帝国の空を焦がし続けていた。


彼らは、この内乱を止める手立てを自身の勝利で終わらせるしかないと考えている。

赤、青の決着がつけば末端の名分は失われ、それ以降は彼ら本人の私闘となるからだ。


残念ながらシズク、トウガは失ったものが大きく、現状維持での決着は考えられなかった。


彼らはこの戦争を止めるため、戦力を欲し、主を失った第4艦隊と第5艦隊を接収して、自ら推す新提督を元に再編成を行った。



この件に関しても帝室は容認の姿勢を取った。

というのも、これも全てラートリーの意思であり、ウララはラートリーの情報統制により、現状の把握ができていなかった。


彼女の認識は、あくまで両者の私怨による局地的な衝突──適度なガス抜きが必要な程度のものだった。

神聖帝国が全土にわたり、大乱の渦中にあるなどとは、露ほども知らなかった。


そのため、元々は彼らの部下の艦隊であるため、ラートリーのもっともらしい屁理屈を元に簡単に容認した。これが大乱にさらに燃料を投下する行為とは考えもせず。


シズクはこの動きを察知していたが、今はまずトウガを屈服させることを最優先とし、素直にその決定を受け入れて第4艦隊の再編成を執り行った。


新たな提督には、シズクの最も信頼する腹心の一人であるイレーネ・フォルセア女伯を任命した。

挿絵(By みてみん)


シズクがレイナの後釜として接収した第4艦隊提督に任命したこの者はレイナと同様、人質だった。

彼女は男爵家の三女であり、人質以外の価値を生まれながらに見いだされてはいなかっただろう。


そして水色髪で大人しく口数も少ない彼女は、片目が常に髪に隠れていて表情すらも見えないとても印象に残りにくい外見だった。


男性はついつい胸に目がいって「あの胸のでかい子か」という邪な感想に落ち着き、女性は「何を考えているかわからなくて不気味な子」という印象を持って終わる。


シズクでなければ彼女の才能は埋もれていただろう。

シズクは彼女の内に隠れた才能を見出し、レイナのように重用した。

今は女伯まで引き上げられて下部主力艦隊の第8艦隊の提督として申し分ない戦果を上げ続けていた。


レイナほどではないが、知力、統率力が共に高く、時にシズクでさえ、思いつかない高次元の策を練ることがある。

外見から不気味がられてはいるが、義理堅く、シズクにも忠誠を誓っている。


熟考型の軍師で、シズクとレイナの機関銃のように飛び交う知略の応酬には全くついていけず、蚊帳の外に置かれることが多い。

だが、熟考して練りだした策は二人も感嘆するほど綿密に練られたものが多い。


艦隊戦においては、どうしても相手を見定めてから行動に移す癖が強いため、敵提督は序盤に勝利を確信し、油断する者も少なくなかった。

だが、いつの間にか彼女のペースに持ち込まれ、気づいたときには絶望的な状況に取り残される・・このような場合が多かった。


レイナがシズクの右腕であれば、イレーネは左腕にもなれたはずが、どうして今まで傍においてもらえなかったか。


それは彼女の話調に原因があった。


話し方が特徴的で、語尾を伸ばしつつ、ゆっくり話すため、せっかちな人間からは嫌われる、あるいは苛つかれる。


シズクがレイナの方をより信頼していたのは、イレーネのこの話し方に少し苛ついていたからでもある。


だが、レイナを失った以上、シズクはイレーネを傍に置き、新たな軍師、そして右腕として活用を始めた。



「シズク様ぁ~。お呼びですかぁ~?」


「・・・。来たかイレーネ。艦隊再編成はどうだ?」


「はぁ~い。大丈夫ですよぉ。もうほとんど再編はぁ・・終わりましたぁ!!」


「そうか・・ご苦労。・・その話し方、何とかならんのか?」


「はぁい、気を付けますぅ~。あぁ~でも、いつでも出撃できますよぉ。」


「・・・・・。分かった・・。追って沙汰する。第二戦闘配備で待機せよ。」


「はいっ!承知しましたぁ!」


イレーネが退室した後、執務室でシズクが呟いた。


「・・・・なぜ、あのようになった・・。もったいない。」


溜息とともに頭を振った。




イレーネは胸元を静かに揺らしながらゆっくりと歩いていた。

そしてイレーネらしく先の先までシズクのためになるよう考えていた。


・・・。私はぁ、レイナさんのようにはぁ、なれませーん。

はぁ・・・。でも、シズク様にはどうしても恩返ししたいんですよねぇ・・。


内乱なんて、いつかは絶対終わるんですよぉ。

だから普通に終わらせてはダメなんですぅ。


この流れ、絶対に得する人が居るんですよぉ。

本当はそちらに対抗しないといけないですぅ。


・・・・この戦い、終わるときには・・・。

クリムゾンとは~同盟を結ぶべきです。全て水に流して!


その水は・・・・私ですっ!

レイナさんならぁ、今頃もう数手先を読んでいると思いますぅ。

だけどぉ、私は違う。水は、時間をかけて染み込むんですっ。



イレーネの隠された瞳の奥に強い光が輝いた。

イレーネは遠く未来を、そして神聖帝国の先を見通そうとしていた。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


第五章も、いよいよ本格的に動き出しましたね!

今回は、悲劇のヒロインたちが散った後、**「次世代の提督」**が姿を現しました!


今回のポイントは、**「内乱の拡大」と「新提督イレーネ・フォルセア」**です!


終わらない内乱、燃え広がる火種

「赤青の内乱」は、もはやトウガさんとシズクさんの私怨だけではなくなりました。

彼らの激戦による戦力低下をみた各貴族たちが、**「漁夫の利」を狙い、次々と参戦し始めたんです!

彼らの「欲望」**が灯した炎は、もう誰にも止められません…。


トウガさんとシズクさんも、この状況を打開するため、**「勝利して、この戦いを終わらせるしかない」**と決断します。

そのため、彼らは、主を失った第4艦隊と第5艦隊を接収し、新たな提督を任命しました。


でも、この動きもまた、すべてラートリーさんのシナリオ通りでした…。

ウララ陛下は、ラートリーさんの情報統制によって、この内乱がどれほど深刻なものかを知りません。

そのため、**「ガス抜き」**というラートリーさんの甘い言葉に乗り、この艦隊の再編成を容認してしまったんです。

こうして、ラートリーさんの手によって、この内乱は、さらに大きくなってしまいました…。


新たな花、「静謀の水影」イレーネ

そして、シズクさんは、レイナさんの後任として、イレーネ・フォルセアを新たな第4艦隊提督に任命しました!

彼女は、**「水色髪で口数も少なく、表情も見えにくい」**という、とても地味な外見。

しかも、ゆっくりとした話し方が、せっかちなシズクさんをイラつかせていました…。


でも、シズクさんは、そんなイレーネさんの内に隠れた**「才能」を見抜いていました。

彼女は、レイナさんのような「瞬発的な知力」はないかもしれませんが、「時間をかけて練り上げる、綿密な策」に秀でた、まさに「熟考型の軍師」**でした!


そして、イレーネさんの胸の内には、シズクさんへの**「忠義」と、「この内乱を終わらせる」**という強い意志がありました。

「水」のように、時間をかけて、静かに、そして確実に、すべてを収めようとする…。

彼女の瞳の奥に輝く光は、まるで、遠い未来を見通しているかのようでした。


「本当はそちらに対抗しないといけないですぅ。」


イレーネさんが口にしたこの言葉は、「この戦いの真の敵」、つまりラートリーさん、あるいはセリオン君のことも気づいているかもしれないことを指しています!

彼女は、この内乱の裏にいる黒幕の存在を、すでに察知しているのかもしれません…。


エリスさんとレイナさんという二輪の花は散ってしまいましたが、今、新たな才能を持つ花、「静謀の水影」イレーネが、静かにその花弁を開こうとしています。

彼女は、この悲劇の連鎖を止めることができるのでしょうか…!?


ちょっと癖の強い子を入れすぎちゃいました。

みんな、結構好きでしょ?


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あとがき


新たなキャラクターが追加されました。

レイナとは違う・・というか、この物語では珍しい系統の狙い過ぎたキャラです。

だが、一筋縄ではいかない芯の強さが垣間見えました。


さて、イレーネの今後の活躍どう思われますか?


恒例のゲーム風スタータス紹介です。

挿絵(By みてみん)



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