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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第四章 赤青(せきしょう)の徒花

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第五十一話 赤青の徒花

「くそぉ、あの馬鹿者どもがっ!

 もう付き合ってられん。トウガを屠った後に私だけでラートリーも討ち取る。」


シズクが叫んだ。艦橋のクルー達に緊張が走る。


「全艦、第5艦隊に向けて攻撃開始!」


シズクの通達と共に第1艦隊から一斉にレーザー、そしてミサイルが発射される。

その綺麗に整った射線は光の波のように宇宙を照らした。


第5艦隊から無数の爆発が起こる。

それでもエリスの突撃は続いた。


だが、大きく変わったことがある。

彼女の突撃に合わせて第1艦隊は引き、停滞すれば突く。

攻撃は巧妙で、気づかぬうちにエリスの艦船は一つ、また一つと艦隊から剥ぎ取られて各個撃破されていった。


エリスではシズクに勝てない。

トウガは初めから確信している。


「シズク、やめてくれ!落ち着いてくれ!!」


トウガから情けないほど取り乱した通信が届くが、シズクは盤面を叩くようにして通信を遮断した。


傍目にはエリスの苛烈な突撃は、まるで迫りくる大槌のように勢いがあった。

だが第1艦隊は、まるで武道家がそれを受け流すように、力点をずらし、静かに打ち倒していく。


それは、シズクの子飼いの艦長の力量と第1艦隊全体の練度を物語っていた。


第5艦隊は互角に戦うように見えて、その実、一方的にまるで鱗を剥ぎ取られるかのように削られていく。


遂にトウガの第2艦隊はシズクとエリスの中間に向けて全速で進み始めた。


「第4艦隊、レイナの仇を討つぞ。全艦、ありったけの弾幕を宙域122に集中せよ。

 不定期に反物質ミサイルも混ぜ込んでやれ!全弾討ち尽くしても良い。

 第2艦隊を近づけるな!」


シズクは第1艦隊でエリスに猛攻を加えつつ、レイナから引き継いだ第4艦隊も使ってトウガの足止めをした。いや厳密には足止めにはなっていない。

第2艦隊はまるで豪雨のように降り注ぐレーザーや弾頭を恐れもせず、先鋒から次々と大破しながらも突き進んだ。

まるで花火のフィナーレのように閃光が連続する。そして反物質ミサイルによる一際大きな閃光。

その閃光の中からも、まだなお第2艦隊が突進してくる。

この勢いは止められないだろう。


「くそっ・・トウガめ・・。

 これはラートリーのために取っておきたかったんだが。

 タキオンランスの準備しろ!」


タキオンランス、これは第1艦隊付研究所が先駆文明の旗艦残骸を極秘に回収して研究・開発した秘密兵器だった。


メルエルニャの上部が展開され、極大の砲塔が出現した。

旗艦を守る弩級戦艦が接近し、パイプによって接続され、そのエネルギーがメルエルニャに向かって流し込まれた。


「ま、待て!シズク、頼む!!やめてくれ!!」


再びトウガが通信モニタに映る。

トゥルフニャッドの艦橋にはうっすらと炎が揺れている。

彼は額から血を流していた。

第4艦隊の攻撃に対してよほど無理をして駆け付けているのだろう。


「頼む!シズクぅ!!やめろぉ!!」


彼の絶叫がメルエルニャの艦橋にまで通信越しで響く。


「撃て!」


シズクの冷たい一言がその絶叫をかき消した。


メルエルニャのタキオンランスと呼ばれた砲身から

重エネルギー収束粒子――タキオンビームが発射された。


それは弩級戦艦ほどの太さのビームが何万キロという長さで放出され、先細り消えた。

まるで騎槍のように。


そのビーム上の艦船は弩級戦艦であれ、駆逐艦であれ、一瞬で蒸発した。

先駆文明の攻撃艦が放つ、あの未知のビームが神聖帝国軍を消し飛ばした時のように。


エリスの旗艦 、弩級戦艦〈トゥルニャーカー〉とそれを守る3隻の重装甲艦、2隻の弩級戦艦も例外ではなかった。


エリスはシズクの旗艦 メルエルニャを睨みつけていた。

そしてメルエルニャから閃光が放たれたと同時に、彼女は艦橋の中で迫りくる光を見た。

理解するよりも前に、彼女はこの世から消えた。


苦痛も悔恨も何もかも感じるまでもなく、それがこの戦いを引き起こした彼女に対する唯一の救いかもしれず。


タキオンランスの光が発散して消えた。

その一筋の空洞――そこにいたはずのエリス。


トウガは呆然とその状態を見つめた。


「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」


トウガが膝をつく。


「シズクぅ!!

 お前はやはり人ではない、帝国の敵だ!

 この俺が討ち取ってやる!!

 全艦第1艦隊に向けて回頭!突撃!!」


すぐに第5艦隊に向けて通信を開く。


「第5艦隊、俺に続け!エリスの弔い合戦だ!!」


この戦いは苛烈を極めた。

双方、大きな被害を出した後、砲弾撃ち尽くした両艦隊は

そのまま、ニャーニレム星系から離脱した。


この争いはこの戦いではとどまらず、両陣営の従属勢力を含めて

赤髪、青髪の両雄の間で神聖帝国を焦土と化すまでの争いに発展した。


後世の学者はこの戦いのことを”赤青の内乱”と呼ぶ。


レイナとエリス、この二輪の徒花あだばなが引き起こした、実りなき大戦。

まだまだ終わる様相を見せなかった。


「咲いては散る徒花あだばなよ、

 赤き炎は過去を焦がし、

 青き氷は未来を凍らす。

 その根は忠義にあり、

 その茎は野心に伸び、

 その花は帝国の虚空に咲く。

 だが徒花に実は成らず。

 それでも人は、咲かせずにはいられない。」

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


今回のお話は、もう、本当に言葉になりません…。

「赤青の徒花」…。

「赤」のエリスさんと「青」のレイナさんという、二輪の美しい花が、とうとう散ってしまいました。


復讐の業火、シズクさんの刃、

レイナさんの死によって、シズクさんの心は「怒り」に満ち、「理知」は完全に「復讐」へと変貌しました。

「全艦、第5艦隊に向けて攻撃開始!」

彼女は、エリスさんを「帝国の裏切り者」と断じ、冷酷なまでに打ちのめしていきます。


エリスさんでは、シズクさんには勝てませんでした。

シズクさんの艦隊は、まるで舞を踊るかのようにエリスさんの猛攻をいなし、その力をそいでいきました。


そして、トウガさんが必死に止めに入ります。

「やめてくれ!シズクぅ!!」

トウガさんの悲痛な叫びもむなしく、シズクさんは、とっておきの秘密兵器「タキオンランス」を起動させます。


徒花、散る

シズクさんが放った、あの先駆文明の力をもつ「タキオンランス」のビームは、エリスさんの旗艦を、そして彼女の存在を、一瞬で宇宙から消し去りました…。


トウガさんは、その光景をただ呆然と見つめることしかできませんでした。

彼の心は、「絶望」に突き落とされました。

「シズクぅ!!お前はやはり人ではない、帝国の敵だ!」


この瞬間、トウガさんとシズクさんの長年の絆も、完全に崩れ去ってしまいました。

エリスさんの死は、「復讐」という名の燃料となり、トウガさんとシズクさんという、二人の英雄を敵対させたのです。


赤と青の内乱

そして、物語の結びの言葉が、すべてを物語っていました。

「赤青の内乱」…。

エリスさんとレイナさんという、二つの「徒花」が引き起こした、実りのない大戦。

この戦いは、二人の死によっては終わりませんでした。

これから、この大戦が、帝国全体を巻き込み、焦土と化すまで続くことが示唆されました。


「徒花に実は成らず。それでも人は、咲かせずにはいられない。」


ラートリーさんの策略は、見事に成功しました。

彼は、直接手を下すことなく、エリスさんという「毒」を使い、シズクさんを「復讐者」に変え、トウガさんを「絶望」に突き落としました。


そして、この物語は、まだ終わりません。

この悲劇の裏で、ほくそ笑んでいる「黒幕」がいることを、私たちは知っています。

この大戦の先に、一体何が待っているのでしょうか…!?


作者子ちゃんは応援します!誰を!?

わかりません・・・でもこの内乱を止めてくれる誰かをです!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


今回は、エリスが咲きました。咲き切りました。

そして、散りました。

それは、帝国の感情と構造がぶつかり合った、最初の臨界点でした。


レイナの死が“感情の断層”を崩したなら、

エリスの死は“帝国の構造”そのものを焼き尽くしました。

そしてシズクは、ついに“鬼”として立ち上がりました。


ちょうど物語の中間点です。

どうか後半もお付き合いください。




ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。



おまけ

■■■去りし英雄■■■

静かなる刃 レイナ・ブランウッド侯爵 享年27歳

挿絵(By みてみん)

まるで鏡に映ったシズクのような人物で、冷静沈着、豪胆にして、その知略はシズクにも匹敵すると思われた。だが、心の中心はシズクであり、シズクの娘ミオリでさえ、無関心の対象だった。

自身はシズク同様、愛情というものを理解していないが、シズクの命令によって仕方なくエリスと友情を育んだ。結果、未完成な情は最悪な結果へとつながった。

ミオリの後見をシズクから命じられていながらもシズクの未来を優先して戦死した。

旗艦は弩級戦艦〈メルニャルド〉

挿絵(By みてみん)



紅蓮の烈花 エリス・ロゼヴェール侯爵 享年25歳

挿絵(By みてみん)

トウガの義理の娘。トウガによく似て直情型。

決して愚かな人物ではないが、ラートリー、セリオンの罠には敵わなかった。

士官学校では結構人気者でまるで花のように美しさを称えられるが、実際はトウガの継承者とさえみられるほど、勇猛果敢な猛将。

最後の最後まで家族を守るという恐ろしいまでに純粋な心をラートリーとセリオンに操られて、シズクによって討ち取られた。

旗艦は弩級戦艦〈トゥルニャーカー〉

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
三章、四章の心理戦テーマも圧巻でした。 二章までとはテイストが違って、犯人を読者にはバラした上で抗えない事件に巻き込まれていくサスペンスのようでした。 面白かったです。 レビューを更新しておきます…
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