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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第三章 花曇(はなぐもり)の刻
33/50

第三十二話 新しき花々

ラートリーが焦燥の中でシズクへの対抗心を燃やしていたことに、

シズクはまだ気づいていなかった。


嵐の予感とは裏腹に、その後約一年間、ラートリーは沈黙を保った。

軍務大臣のトウガ、国務大臣のシズク、外務大臣のラートリー、

この三名が上手く回って神聖帝国は安定した。


廊下には柔らかな陽光が差し込み、磨かれた大理石の床に淡い光の模様を描いていた。

シズクは静かに歩を進めながら、隣を歩くトウガに目を向ける。

以前とは違い、背筋が伸び、どこか威厳すら漂っていた。

彼にとっても今は、順風満帆な日々なのだろう。



「・・・静かね、最近は。」


シズクがぽつりと呟くと、トウガは少し驚いたように顔を向けた。


シズクはこの平和な一年の間に、貴族の義務として、遅めであったが、後継者の娘を出産していた。

母となったことが、彼女に変化をもたらしたかどうかは定かではない。

だが、時には乳母ではなく、自ら授乳したこともあるそうだ。


「おう。そうだな。戦もない、政も荒れない。

 なんだか、夢みたいだ。俺たちがこんな風に、ただ歩いてるだけでいいなんてな。

 なんだ?お前は面白くないのか?」


「お前、私のことを狂犬か何かと勘違いしているんじゃないか?」


「・・・。自覚してたんだな?」


「うるさい! ふっ。だが、陛下にも少し変化が見える。

最近、笑うようになった。」


「あぁ!そうだ!それが一番嬉しいことだ!」


「お前は単純で良いな。狂犬は私だけではないんだぞ?」


「失礼なことを言うな!」


急に後ろからラートリーの声が聞こえた。

実はシズクは、足音が増えたことでラートリーが後ろにいることを察していた。

そのため、嫌味を言ったまでだ。


「お前は人の話を盗み聞きするのは得意な奴だな。」


ラートリーは無視した。


「今日は一つ建設的な議題を用意した。」


トウガは何も気にしていなかったが、シズクは静かに反応した。






ラートリーが顧問制 国務会議の冒頭である提案を行った。


主力艦隊の補充と最高顧問の追加だ。

名目上はジジとシノの穴埋めにあたる。

政治の混乱が収束し、ようやく未来に向けて進み始めた

ちょうど良い頃合いだと思われた。


シズクは無表情のまま最大限の警戒心を示した。

これは、ようやく安定した三大将の均衡を崩す意図が透けて見えた。

ラートリーは新たな段階を迎えた神聖帝国に次なる波紋を投じようとしている。

そのようにシズクは見抜いた。ついに沈黙のラートリーが何らかの野心に動いた。


トウガはあまり気にしておらず、おそらく神聖帝国、ならびにウララの補強と考えて

この提案を歓迎するだろう。


だが、これは間違いなく罠で、ラートリーの息がかかった大将をこの親政会議に送り込む算段に違いない。

いや、二人と言う所が重要だ。

さすがに二人ともラートリー派を送り込むような真似はしないだろう。

そこまで露骨なことをしてはさすがのトウガも気づく。

そうなるとシズクはいかなる工作をしても少なくとも一人、自らの派閥から

最高顧問を推薦しなければならなくなる。


シズクも長い安寧に慣れかけていたが、かつての緊張が走った。


シズクは次の布石としてどのように提案しようか限界まで思考を巡らせた。


考えがまとまらない内にラートリーが発言を続けた。


「それについてだが。」


シズクの警戒心が最大になる。


「残念ながら私には適任者が見当たらぬ。候補は卿らで決めてくれ。

 卿らの部下には優秀な者も多かろう。」


シズクは目を丸くしたが、すぐに表情を引き締めた。


なるほど・・・そう来たか。

ラートリーは、間接的な罠を仕掛ける。

しかも、奴の毒は遅効性だ。

時間をかけて秘密裏に調略して、いずれは私やトウガの背後から襲わせる駒を作る気か。

良いだろう、ラートリー。

お前が用意した剣はお前を貫く可能性があることを忘れるな。


シズクはとりあえず返事をした。


「私は特に異論はない。ウララ陛下にも満足いただける人材を選別する。」


「それは良い。かつてのココ先帝陛下の五大将のように、

 ウララ陛下にも新たな五大将が必要でしょう!」


シズクは念のためラートリーの毒を警告するつもりでトウガに助言した。

おそらく通じまいと半ば諦めながらも。


「トウガ、今度は忠義に厚い誠実な人物を選べ。もう反乱など起きて欲しくはないからな。」


「あぁ!もちろんだ。俺の配下は皆、忠義に厚く、正義をこよなく愛するものばかりだ!」


シズクは、こいつには私の真意は伝わっていないだろうな・・・、と思った。


ウララは結論が出たのを見て、静かに指示を出した。


「それではトウガ、シズク、適任者を探してください。」


「御意!」

「お任せを!」



そしてシズクとトウガは新たな主力艦隊提督にして最高顧問を務める二名を選別し、国務会議で紹介した。

二人ともウララを支えることを念頭にして年の近い、優秀で忠義に厚いものを選んだ。


この二人だ。

新シズク派大将 第4艦隊提督 茶髪のレイナ・ブランウッド侯爵 23歳

挿絵(By みてみん)


新トウガ派大将 第5艦隊提督 桃髪のエリス・ロゼヴェール侯爵 21歳

挿絵(By みてみん)


神聖帝国に、新たな時代の息吹が訪れようとしていた。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


今回、びっくりな事件が起こりましたね!

なーんと、シズクさんがお母さんになってました!

旦那さんは…えっと…作者子ちゃんも知りません!(作者さんもまだ考えてません!)


でも、シズクさんのことだから、高位の貴族の中から素質がありそうな人を選んでそうですよね。次男でも五男でもなんでもいいので。きっと尻に敷いてるに違いない!

あ、これはどうでもいい情報でしたね!


なんだか、平和な日々のおかげで、みんなの雰囲気が少しだけ柔らかくなった気がします。

平和って、いいですね!


さて、今回も政治の話です。

前話で、ラートリーさんが不気味なこと言ってたの覚えてますか?

作者子ちゃんは忘れちゃいました!でも大丈夫!見直してくださいね!

PVが増えて、作者子ちゃんが喜びますから!


今回のラートリーさんの提案は、シノさんとジジさんの代わりに、**五大将を追加しよう!**というものです。


表向きは、ウララさんの政権を強化するため、っていう建前ですよね。

で、普通に考えると、裏向きは自分の派閥を強化するため、っていうのがセオリーです。

「よし、ラートリー派を増やして、国務会議を有利にしてやろう!」って、普通ならそう考えますよね。


でも、ラートリーさんは普通じゃないんです!

まさかの、**「派閥を増やすのは、シズクさんとトウガさんでいいよ!」**って言い出しました。

もぉ〜、複雑です!


シズクさんは頭がいいので、すぐにピンときました。

「これはわざと敵の派閥を強化させて、裏でそそのかして、裏切らせて、後ろからブスゥぅぅぅぅっと刺すつもりだ!」って。

ありえそうですよね!っていうか、ありえますよね!


とりあえず二人は、それぞれ信頼できる人を推薦しました。

この二人が、果たして裏切者になっちゃうのか…!?


…ところで!

二人の新キャラクター、めちゃくちゃ可愛い女性たちですよね!

この物語はめちゃくちゃ硬派だから、むっさいヒゲのおじさん二人を追加してもいいんですけど、やっぱり可愛い子が多い方が良いですよね!

うんうん、賛同の声が聞こえた気がします!


一人目は、茶髪のデコポニテです。なんか、いかにも理知的そうな雰囲気の美女ですね!

二人目は、ピンクのローツインテールです。これは…狙い過ぎですね!めっちゃ可愛いです!

でも…この子、トウガさん並みの暴れん坊だそうです。人生、甘くないですね!


では、二人の主人公を追加して、物語は乙女ゲームに変わりました!

まじ!?


いや・・そんなつもりで読んでいるとシズクさんとラートリーさんの高度な心理戦にズタボロにされますぜ、旦那。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


新たな花々の登場です。

彼女達は若く優秀で、ラートリーの毒の中和剤になるのか

それとも、毒に侵されこの神聖帝国を腐らせるのか。


皆さまはどちらだと思いますか?


そしてシズクの娘、彼女の母性も暗に花々という言葉に掛かっています。


あなたなら、彼女達にどんな未来を託しますか?

彼女達に期待することがあれば、ぜひ教えてください。


感想やご意見、評価、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。



【おまけ】

作者こんな奴です。

私は理系出身です。でも教科として歴史が好きでした。

よく、数学とか物理とか歴史とか・・学校で勉強する意味が理解できん!って方おられますが

社会人になると滅茶苦茶思い知らされます。


お・・こんなところで、あの計算式が!あの物理法則が!って。

では歴史はどうかというと。


実は人類って数千年経っても、倫理観と科学技術ぐらいしか大して進歩してないんですよね。

1000年前の政治家が考えたり、やったりしていることって現代人も同じ事考えてます。

歴史は繰り返すって言葉ありますよね。人って同じ事繰り返してます。


あ・・あの上司・・●●(歴史上の偉人)が言ってたのと同じようなこと言ってる。

上司Aと上司Bのやり取り・・うぁ・・。こりゃぁ、あの内乱みたいに荒れるぞぉ。

うあぁ・・・上司Cえげつない。これは●●(歴史上の偉人)みたいだ・・・・。


とか、あるんですよ。歴史の勉強(学校の歴史授業はそこまでなのかもしれないけど、そこから興味をもって、その裏話的な何かは学べば、心理を読む上で役立ったりしますよ)も意味があったりしますのよ。


私の物語もそれを意識しています。

今ネコ耳SFですが、むっさいおっさん達を主人公にしてクソ真面目なタイトルで中世のファンタジー歴史ものの小説に書き換えたとしても結構通用しますよ、このお話。


ちょっと熱く語ってみました。



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