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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第一章 栄光と均衡の終焉
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第十七話 三人の絆

女帝ウララは、誰にも告げず、ただ一人ジジを伴って皇弟ニュクスとの会見を強行した。

それは、雷鳴のように帝国を揺るがす衝撃的な決断だった。

事前の根回しも、評議会の了承も得ず、ただ一人で決断した。


他の四大将が気づけば、忠誠心から止めに入るか、あるいは政敵として動く可能性すらあった。

だからこそ、ウララは誰にも悟らせず、誰にも相談せず、ただジジだけを選んだ。


彼女が信じたのは、幼き日々を共に過ごしたその忠臣の剣と心だけだった。


この会見は、帝国の均衡を揺るがす火種となる。

だが、ウララは迷わなかった。誰が何と言おうとニュクスとは分かり合える。

その歩みは、まるで他の四大将すら置き去りにするほどの速さで、歴史の転換点へと踏み込んでいった。


ニュクスの領土である惑星ポニャルーは国境沿いの辺境星系に存在するが、その星系にはゲートウェイが建造されているため、首都惑星ニャニャーン近傍のゲートウェイと直接接続できる。

ゲートウェイを接続すれば異空間ジャンプにより一瞬で到着するが、突入準備には約10日を要した。


第3艦隊旗艦メルクゥニャムの貴賓室の中でウララとジジは、ゲートウェイ突入のための準備を待つ間、二人並んで銀河に広がる星の海を眺めていた。


「ねぇ、ジジ。ニュクスったら、あの時……」


ウララは楽しそうに、子供の頃の話を語った。

ジジも遠い目をしながら、かつて三人で過ごした日々を思い出していた。


ウララは3歳で神聖女帝に即位した。彼女は物心つく頃から人に囲まれていた。

ノアールの意向もあり、4歳年上のジジが常に一番傍でウララに仕えていたため、

その光景をよく覚えている。


彼女は人から愛され、それでいて自由に成長した。

ニュクスは同じ皇子でありながらウララと比べると周りに侍る人は少なかった。

そのため、ウララの後を常に追いかけていたのをよく覚えている。

ウララと一緒にいなければ自由に遊べなかったのかもしれない。


だが、ウララとニュクスとジジはよく遊んだ。そしてよく学んだ。

常に一緒にいた記憶がある。

確かにニュクスはウララと一緒によく笑っていた。

子供ながらに仲の良い姉弟だなと感じたことも少なくない。


自由気ままにふるまうウララの後をニュクスが追い、ジジがそれを見守っていた。

その時のことを楽しそうにウララが次から次へと語っている。


かつて、父ノアールからこういうことを言われたことがある。


「ジジ、お前は何があってもウララ陛下をお守りしないといけない。」


ジジは言いつけを守り、3人で遊ぶ笑顔の裏で常にウララに目を光らせていた。


「ジジ、ニュクス殿下とも仲良くしなさい。せめてお前だけでもニュクス殿下と友達になりなさい。」


「せめて?」


当時は言っている意味がよくわからなかったが、ジジはニュクスとも友達のつもりだった。



おそらく陛下はわかっておられないと思うが、ジジは今では理解している。


これは格差だ。

これは、満たされた者には決して見えない格差だ。


陛下……。人の心というものは必ずしも表に出ているものが全てとは限らないのです。

そう何度も言いかけながらも、楽しそうに語るウララをみて、口を噤んだ。


ー 愛される者の盲点 ー

彼女には“格差”と“孤独”を理解していただけないだろう。




こうなった以上、陛下は引き下がらない。長年一緒に過ごしたジジはそれもよくわかっている。

変に拗らせるほうがよくない。


ー ノアールの遺志の継承 ー

かくなる上は命に代えても陛下をお守りするだけ。


刺し違えてでも──ラートリーの言葉が、胸の奥で静かに反響した。


また、あの晩の悪夢を思い出した。

手を伝わるニュクスの血。

あの時、夢の中で、子供の姿のウララ陛下は、彼女の目の前でニュクスを刺した大人の姿の私を、

一体どんな顔で……見ておられたのだろう?

思い出せない。いや、それを見たくなくて、飛び起きたのだ。


笑顔で話し続けるウララの横顔が、夢の中の子供の姿のウララと重なり、

それを横で聞く自分の姿が、血塗られた短剣を握る悪夢の中の自分と重なった。

もし、ニュクスを私が刺すことになったら、ウララ陛下は……。

私を許して下さるだろうか?

きっと二度とこの笑顔を──私に向けていただけなくなるだろう。


「ねぇ、ジジ。聞いていますか?」


「え?あっはい。もちろん。あの時、ニュクス殿下が転ばれて、膝から血を流して大変でしたね。」


「そうなのよ。ニュクスったら私の後を一生懸命追いかけてきて。

 可愛かったわ。また、あの時のように三人で笑顔でお話できたらいいわ。

 ニュクスは元気にしているかしら?」


その後もウララの思い出話は止まらず、ジジは笑顔で適度に相槌を打ちながら、会話を続けた。


「失礼いたします。閣下、突入の準備が整いました。」


貴賓室の外から兵の報告が聞こえた。


「陛下、私は艦橋に戻ります。揺れるかもしれません、座ってお待ちください。」


ウララは笑顔でうなずき椅子に腰かけた。


艦橋へ向かうジジの瞳には、ウララの笑顔とは異なる、静かな決意の炎が灯っていた。

そして、ゲートウェイが開かれた。

帝国の均衡を揺るがす会見が、今、始まろうとしていた。



ー 絆とは、同じ記憶を持ちながら、異なる孤独を抱えること ー

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


ここも難しいですよね。今日のテーマは、人の心です。


人って、どれだけ近くにいても、極論を言えば他人なんですよ。


分かろうと努力しなければ、本当の心は見えません。


ウララちゃんは、愛情に満たされすぎて、そのあたりが見えてないみたいです。


彼女が知っているのは、子供の頃の、幸せな「ごっこ遊び」の記憶だけ。


一方、勇者様のジジさんは、その裏にある**「格差」と「孤独」**を、しっかりと見抜いています。


そして、悪夢にまで見てしまうほど、ウララちゃんとニュクスくんの間に立つ、自分の役割の重さを感じています。


波乱の気配しかありませんね。


頑張れ、ジジさん!


あぁ・・お腹減ったな。うんめー!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


3人の絆

──これは人によってとらえ方が違うということを示しています。

ウララは無邪気に語り、ジジは静かに苦悩し、ニュクスはまだ見えない孤独を抱えている。

絆とは、同じ記憶を持ちながら、異なる孤独を抱えること

──皆さまはどう感じましたか?


そして、ウララが感じていない“格差”にジジは気づいています。


皆さまなら、ウララの笑顔を守るために、ジジはどんな選択をすると思いますか?


この3人の未来を、ぜひ先読みして教えてください。



ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。



↓前話を忘れてる人向けの振り返り一コマ

挿絵(By みてみん)

(私の物語はタイトル詐欺と言われます。なので振り返り詐欺も追加で)


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