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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第一章 栄光と均衡の終焉
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第十一話 トウガ・ジジ同盟

気持ちを少し落ち着けたのか、遂にトウガも席を立って退室した。


ジジはその後を追う。

二人は距離を保ちつつ、皇宮内の廊下を静かに歩いていた。


やや猫背で不貞腐れたその姿は、今なお銀河の強敵たちを震え上がらせる猛将とは似ても似つかなかった。


周囲に人がいないことを確認すると、ジジはトウガの元へ駆け寄り、声をかける。


「トウガ殿!」


トウガは元気のない様子で振り返り、無理に笑顔を作った。


「ん?ジジか……」


ジジも自然な笑顔で応えたが、すぐに困ったような表情に変わる。


「今日も荒れた評議会でしたね。……シズク殿にも困ったものです。」


トウガは苦笑しながら、同じく困った顔で答えた。


「あぁ、そうだな。

 うむ、若いお前にみっともない姿を見せてしまったな。

 ……でもな、あいつらの陛下への態度は日に日に悪化している。

 俺は断じて許せん。」


ジジはわざとらしくうなずき、共感を示しながら真剣な表情に変わって力強く言った。


「同感です。そこで、トウガ殿にお願いがあります。

ウララ陛下をお守りするために、この私と同盟を結んでいただきたいのです。」


トウガは驚いた顔をした。


若輩のジジからそんな言葉が出るとは思いもよらなかったのだろう。


「お前と……?」


 だが、考える間もなくトウガの顔に笑みが戻る。


「……そりゃいいな。

 確かに、それくらいしないと陛下をお守りすることはできないかもしれん。」


笑顔のトウガに対し、ジジは真剣な眼差しを崩さず言い切った。


「私はトウガ殿に従属いたします。これは、従属同盟です。」


トウガの表情がくるくると変わる。混乱しているのが丸わかりだった。

彼はとても分かりやすい。


「え?待て待て、落ち着け!

 オブジディアン家を従属させるわけにはいかん!

 年の違いはあれど、対等でいいじゃないか。」


ジジはさらに真剣な表情で、力強く返す。


「なりません!

 シズク殿もシノ殿も、完全に私を舐めています。

 これでは2対2の勢力にはなりえません。

 私や私の勢力を、トウガ殿が使役すれば……

 シズク殿もシノ殿も、手も足も出せなくなるでしょう」


トウガは困惑を隠せなかった。


「いや、それはそうかもしれんが……お前はそれでいいのか?

 俺に臣従するほど、お前の家格は低くはないぞ。」


ジジは力強くうなずいた。

トウガはその姿に、ノアールの面影を見た。

若輩ではあれど、ジジは非凡な才能を持つ──そう確信した。


「よし、わかった。同盟しよう。これは陛下をお守りするためだ。

 俺の指示には従ってもらうが、お前は俺に遠慮するな。

 そして、早く成長しろ。」


これまでにない笑顔で、トウガは続けた。


「俺を超えるくらいにな!そして、対等の同盟を組みなおすんだ。」


「はい、では具体的な方針ですが、私の得た情報は全てご報告します。

 トウガ殿も私と共有をお願いします。

 これより継続審議になっているものを全て洗い出します。

 必ず粗や法的根拠を見つけ出し、却下させるための報告書としてまとめておきます。

 オブジディアン家には歴史と法務に詳しい者がおります。

 報告書は事前にお渡しするので、必ず目を通してください。

 発言はトウガ殿が主に行っていただいた方が重みが出ます。

 会議では報告書をもとに反論してください。」


「お、おう。ま、任せてくれ。」


「また、困ったときは、私の方を見て顎に目線を落としてください。

 それを合図に、私も発言で援護いたします。

 そして新しい議案を彼女たちが持ってきたら、

 どんなものも必ず冷静に保留して継続審議に持ち込んでください。

 私が必ず阻止の目を探してトウガ殿にお渡しします。

 場合によっては捏造の反論根拠もお作りします。

 どうかそこはご容赦ください。

 これも陛下のためです。


 また、陛下を守る法案も任せてください。

 歴史を紐解きどんなことでも法的根拠を捻出してみせます。

 彼女達ばかりが攻勢ではいられないようにしましょう。


 まずは、彼女たちに“やりづらさ”を感じさせることが目標です。


 そして……万が一の場合は我が艦隊はトウガ殿の指揮下に入ります。

 全艦第2艦隊に組み入れてトウガ殿が直接指揮してください。

 私は一参謀としてトウガ殿の旗艦でお供します。」


「わかった。もうあいつらの好きにはさせねえ。


 ところで……本当に対等同盟でなくてもいいのか?」



かくして、強力な親女帝派派閥が確立された。

この同盟は、単にトウガの勢力を増すだけでなく、相乗効果を生んだ。

評議会では、トウガに守られたジジが積極的に発言するようになり、シズクやシノを牽制できるようになった。

また、トウガの発言や、シズク・シノの挑発に対して、ジジがトウガを守る場面も増えた。

つまり、トウガは強力な軍師を得て、ジジは確かな後ろ盾を得たのだ。


シズクとシノは、評議会で強硬な態度を取りづらくなった。


「ジジ、奴は思ったよりも上手くやる。確かにノアールが自慢していた跡継ぎだけはあるな。」


シズクはジジの評価を改め、方針に変更を加える必要に駆られた。


ウララの親政開始は否決されたばかりで、しばらく再審は行われない。

だが、いずれ再び議題に上がることは目に見えていた。


もしこのままウララが親政を始めた場合、トウガやジジはシズクやシノの排除までは行わないだろう。

彼らは好戦的でも暴力的でもない。


だが、ウララとの関係が密なトウガとジジは、彼女に重用されることは確実だった。

そうなれば、シズクやシノは立場的に彼らの風下に追いやられる可能性が高い。


シズクにとって、この神聖帝国を守るために、立場を下げることは許されなかった。

次の一手を模索する必要に迫られた彼女は、ある人物に目をつける。


ウララの一歳下の皇弟──「ニュクス」である。


彼は母に似ず、凡庸で単純、そして自己中心的な性格だった。

ウララが15歳になって以降、彼は辺境に化粧領を与えられ、半ば隠遁生活を強いられていた。

その結果、最近では姉に対して明確な敵意を示し、帝位を狙っている。


彼はウララと同様先代女帝ココの血統である。

現状の帝国法典ではウララが帝位にある以上、ニュクスには合法的に帝位を譲り受ける権利は存在しない。

そのためには、帝国法典の改定から着手せねばならない。

だが、これほどの血の濃さがあれば、シズクにとって本気を出せば不可能ではないだろう。


傀儡候補として、これほど適した人物はいなかった。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!


硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


ここら辺もちょっと難しいんですよね。政治的な駆け引きってやつです。


まず、同盟。これは協力関係のことです。


シズクさんとシノさんが同盟を組んで、政治的に優位に立とうとしています。


で、今回ジジさんはトウガさんに同盟を申し込んだんですが、なんと「従属同盟」なんです!


これ、どういうことかと言うと、貴族社会では「あなたの部下になります!」と自ら言うことなんです。

これって、すごくプライドが傷つくんですよ。


でも、ジジさんはあえてそれを選びました。


なぜかと言うと、シズクさんとシノさんの陣営は、二人ともLv50の勇者なんです。


もし普通の同盟だったら、トウガさんはLv50、ジジさんはLv10で、戦力的にはちょっと不利ですよね?


そこで「従属」です!


これだと、ジジさんが持っているお金も、武器も、兵士も全部、トウガさんが自由に使っていいよってことになります。


ジジさんのレベルは低くても、ノアールさんから引き継いだ財力や兵力は、トウガさんと互角なんです!


つまり、トウガLv50が、2倍の資源を使って戦える!そんな感じですね。


さらに、ジジさんの知力がトウガさんより高ければ、二人のいいとこ取りで、まるでLv50に知力プラスみたいな状態になります!


ジジさん、ウララちゃんのためとはいえ、プライドを捨ててすごい判断しましたね!


最後に…傀儡かいらい。難しい言葉ですよね。


これは、王様を「ただ座らせておくだけのお飾り」にすることです。


「社長をボンクラな息子にして、全部専務の俺様が仕切ってやる!」ってやつですね。


この背景を知ってから本文を読むと、ジジさんの行動がどれだけ重みのあるものか、きっと伝わってきますよ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


遂に動き出した英雄達。

ノアール喪失という歯車の損失は確かに痛手でしたが、息子の若輩ジジにもその英雄性の片鱗が見え隠れしています。

きっと頼もしく感じて頂けた読者も多いのではないでしょうか?


そんな中、波乱定番の「弟」の登場です。


この、弟、争奪戦が発生するのか、密かに排除を目論むのか、皆さまの予想をお聞かせ下さい。


感想やご意見、評価、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。



前話を忘れた方向けの振り返り一コマ

挿絵(By みてみん)


(私の物語はタイトル詐欺と言われます。なので振り返り詐欺も追加で)

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