表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第一章 栄光と均衡の終焉
10/37

第九話 シズクとシノ

「シズク様、今日もまたシノ辺境伯に動きが見られました。」


執務室で報告書を受け取ったシズクは、静かにそれを眺めた。

そして報告書を届けた諜報参謀に、独り言とも指示ともつかない口調で語りかける。


「シノはラートリーに比べるとわかりやすい。

 だが妙だな。今回は怪しさを感じるが、何の粗も出てこない。

 それこそがこの違和感なのかもしれない。」


「いかがいたしましょう?

 もう少し強めに諜報しますか?気づかれるリスクはありますが。」


「いや、シノと事を交えたくはない。

 今まで通りシノから目を離すな。」


「はっ!御意!」


参謀が退室し、一人になったシズクは考え込むが、すぐに結論を出した。


「こういう時は、諜報よりも直接会うのが一番良い。」


シズクはそう呟くと、部屋を出てシノを探しに皇宮を散策した。

やがて、忙しそうに早足で自室に向かっているシノを発見した。


「シノ、お待ちなさい。」


「あ、シズク様。何か御用ですか?」


シズクは少し揺さぶりをかけることにした。


「あなた、最近とても忙しそうね。

 私の目を誤魔化せないわよ。

 調略の方は少し苦戦しているようね。」


シノは一切表情を変えずに返答した。


「調略?何のことでございましょう?

 評議会の状況のことですか?

 前にも申し上げましたが、私は出自が卑しいので、政争などという大それたものは理解ができません。 

 私のことは今後も、シズク様のご意向に沿ってお使いください。」


シズクは涼しげな顔でシノの目を見つめた。

……そのまま黙ってシノに対して重い圧力をかける。


沈黙に耐えきれず、シノは自然な笑顔を浮かべて言葉を続けた。


「私はシズク様が他の大将閣下のなかでは一番意見が合うと思い、お慕いしているのです。

 私のことは配下のようにお使いいただいて結構です。

 シズク様のお力で私をお引き立ていただけますよう、お願い申し上げます。」


シズクもまた自然な笑顔を作って返した。


「そうね、私もシノとは気が合いそうだわ。

 何かあれば今後も私を助けてくださいね。」


その後、二人は談笑を交わした。

ただし、まるで仮面のような笑顔で。


一通りの話が終わり、二人は別れた。

ある程度の距離ができたところで、二人は真顔に戻る。

二人の目には暗い光が宿っていた。


シズクは執務室に戻った後、諜報参謀を急ぎ呼びつけた。


(シノの瞳孔が『私の目は誤魔化せない』で微動し、『調略が苦戦』で落ち着いた。私はそれを見逃さなかった。)


「は!何なりとご指示を!」


シズクは静かにゆっくりと指示を与えた。


「もう少し強めに諜報しなさい。

 気づかれるリスクより、見逃すリスクの方が気がかりです。

 シノは間違いなく何かを企んでいて、そして順調に事が進んでいるようです。」


「はっ!承知いたしました!今すぐ指示を通達します。」


「それと……。」


シズクはさらに続けようとした。


「いえ、何でもありません。」


すぐに取り消した。


(ラートリーの身辺も探れ!

 そう命じようとして止めた。ラートリーはシノほど甘くない。

 今、彼に諜報を仕掛けて気づかれでもしたら、自らの焦りを逆に悟らせるようなものだ。)


シズクは人の心を読む能力に長けていた。

これは長年育ってきた環境によるところが大きい。

彼女は表情や口調、目の動きや声の大きさ、あるいは立ち居姿。

そんなところを涼しげに観察しつつ、違和感を見つけ出す。

普通の人間では何も感じないことでさえ、彼女は違和感として感じ取り、感情を推しはかる。


彼女はこの能力に絶対の自負を感じている。

これまで、この直感に従って失敗したことがなかったからだ。


だが、そんな彼女にも読めない男がいた。ラートリーだ。


彼はシズクにでさえ何を考えているか判断がつかなかった。

敵か味方か……。

だが、現状ラートリーに関しては中立と静観を維持しているように思えた。

奴は中道を維持し続けることで、奴なりの何かを企んでいるのだろう。


今は危険性が薄い。


これが今のシズクがラートリーに対してできる評価の限界だった。


今、最も気がかりなシノを相手にしつつ、ラートリーを敵に回すことはシズクにとって得策とは言えなかった。


その後、シズクは最大限の警戒をシノに払い続けたが、彼女は一切の隙を見せることなく、時間だけが進んでいった。シズクは焦りを感じ始めた。


だが、一つだけ変わったことがある。評議会では、シノはシズクに追従するようになった。


まるでシズクと結託してウララを傀儡化するかに見える動きを見せ始めたのだ。


シズクとシノ……見かけ上の連携に対し、トウガとジジの不満と不安は日に日に増していった。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


今回は、お互い悪だくみしてる乙女ゲームの悪役令嬢が二人で談笑してる感じでしたねー。


彼女たち、どっちもヒロインにはなれません!


だって、この物語はサイコパス4人衆のお話ですから。


シノさんも、結局は「悪役令嬢」の仲間入りです!


悪役令嬢二人が、政治の世界で主人公……ジジくんに共同戦線を張る!


こうやって見ると、面白そうでしょ?


続きは、本編でお楽しみください!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


遂にシズクとシノが動き始めました。

ですが、シノには裏がありそうです。

そこまで気づきながら、最後の一歩が届かない。

さすがのシズクも焦りを隠せませんが、評議会はいつも通りすすみます。

次回もお見届け下さい。


##感想や評価等あればお願いします。励みになります。



前話を忘れた方向けの振り返り一コマ

挿絵(By みてみん)


(私の物語はタイトル詐欺と言われます。なので振り返り詐欺も追加で)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ