第十二幕(一)
ダンテさんたち、崖を降りようと険しくそびえ立つ場所にやってまいりました。どのくらい険しいかと申しますと、底を見下ろす顔が股の間に入るくらいの険しさです。
そんな険しい崖でも、岩肌が崩れ岩石が積み重なり、谷底へと降りる道がかろうじて通じております。
「ウェルさん、見てください。都合よく降りる道があります」
「これこれ『都合よく』なんて言うものでない。オリジナルに書いてあることを、そう言ってはいけません」
ウェルギリウスさんにたしなめられ、すごすごと崖を降り始めるダンテさんですが、その先に横たわる牛の頭を持つ怪物を目にします。
「やや、あれに見えるは、バッファローマン!」
「あれは、ミーノータウロスです」
「なんと、あれに見えるは、ミーノータウロスマン!」
ミーノータウロスは、そんなダンテさんを見て、怒りに震え自分の身体を咬んでいます。
「ここにいるのはダンテさんで、おまえを倒したテーセウスではありません。姉さんのアリアドネーの指金でもなく、ただおまえの罰を見にきただけです。さあ、あっちに行きなさい」
その言葉にミーノータウロスは、身もだえして悔しがっています。
「さあ、今のうちに岩場まで走り、崖を駆け降りるとしましょう」
「合点です。都合よく身もだえしている間に進みましょう」
「これこれ『都合よく』なんて言うものでない」
岩場を降りながら、ウェルギリウスさんは話を続けます。
「前に、私がこの層に降りて来た時には、この岩壁は崩れていませんでした。ルチーフェロの手中に落ちた聖者たちをキリストが取り戻しにきたときに、すべての谷が激しく揺れたのです。そのときにこの古い岩壁も崩れ落ちました」
「ほう、キリストさんが助けに来て、都合よく揺れて、都合よく崩れましたか」
「これこれ……」




