第十一幕(二)
「男色って、あれでしょ? 野郎が野郎を好く『おっさんずラブ』ってやつでしょ」
「おっさんとは限らないが、まあ、そうだな」
「そんなことで、地獄に来ますかね? そりゃ問題ですよ、人権問題、大問題です。荒れますよ、荒れる。間違いなく炎上します」
「そうだな。人は他人を欺けば……」
「炎上しているから、火の雨が降り注いでるわけですか?」
「いや、そういうわけではなかろう。ともかく、人というものは……」
「火の雨は、たまりませんね。雨、雨、降れ、降れ、燃えて降れ、わたしのいい男連れてこい、ですか」
「そんな歌詞ではないであろう。まあ、自分を信頼してくれる相手に……」
「ウェルさんも、男色家ですか?」
「何を言い出す……」
「いや、あっしね、ウェルさんは、そっちの気があるんじゃないかとね、薄々気づいていましたわ。手を握ってきたり、首に手を回したり、頬に頬寄せてみたり、間違いない」
「その気は、ありませんよ」
「そっちの気でも、あっちの気でも構わないんですがね。ウェルさんとも、お別れだと思うと、あっしもね、ちょいとは寂しいなと……」
「これこれ、待ちなさい。第七圏に勝手に私を置いていくでない。その先の第八圏には、他人を欺く窃盗や汚職、贋作造りなどの穢れが蔓延しておる。特に信頼を得る者への裏切りを働いたものは、第九圏で永遠に責められている。私が連れていこう」
「さようですか、さようならウェルさん。道理で天国まで案内してもらえないわけです」
「何を聞いておる。私は残らんて」
「そうですか、免罪符でも持ってるんですか。詩人だから特別扱いですか」
「前提が違うようだが、まあ、そういうことでよかろう」
「ゲイは身を助くとは、正にこのこと!」




