第十一幕(一)
「くさい、くさい。成人です」
「ダンテさん、なぜ成人?」
「いや何、九歳、九歳で、十八歳です」
「くだらない……」
「なら、くさい、くさいで、太陽にほえそうです」
「ほう、なぜ太陽に?」
「鼻曲がり署です」
「これまた、くだらない……それは、ともかく、たしかにくさいですな。この臭いに慣れるまで、降りるのは少し待つことにしましょう」
「そうですね。マツコと信五で、月曜から夜更かしといきましょう」
ダンテさんが、ダジャレを連発しております。
「あら、ウェルさん、暇なんで何か面白い話でもしてくださらない」
ダンテさんが、鼻を摘まみながら言います。
「そうですな、これから先の様子でも話しておきましょうか。この岩の内側には、同心円状の三つの圏があります」
「高身長の宇津井健がいますか」
「古い、古い。ダンテさん、ひとつひとつが古い。第七の圏は、暴力を振るった者たちが、更に三つに分けられています」
「はあ、どんなです?」
「他人への暴力、自分への暴力、神への暴力です」
「他人への暴力ってぇのは、なんとかハラスメントですね。ウェルさんの嫌がらせだったら『ウェルハラ』。東北沢の手前、代々木ウェルハラです。自分への暴力ってなんでしょう?」
「自ら命を絶つ者、博打で財産を失う者、この世を嘆いてばかりいる者たちのことです」
「なるほどね。神への暴力ってなんです?」
「神や自然、その恵みを蔑ろにする者たちです」
「神さんより、カミさんの方がおっかないですけどね。うちのかかあときたら、ちょっとよそ見してぶつかっただけで、そりゃあ鬼の首を取ったように騒ぎ立てますから。地獄の方が優しいくらいです。自然を蔑ろにするだけで罰せられますか?」
「それはだな……」
ウェルギリウスさん、言い難そうです。
「男色や、高利貸しといった者たちに火の雨が降り注いでいるのだな」
「男色ですか。これは、ヒグマ捕らえて北極に放つ」
ダンテさん、目を輝かしております。
「尾も白くなってきた」
「ヒグマは、ホッキョクグマにはなりませんよ」




