第十幕(二)
さて、ダンテさんの一言で一触即発の状況の中、別の墓穴から一つの影が起き上がります。
「あれま、誰かと思えば、生きているお方ではないですか。ひとつお伺いいたします。わたくしの息子をご存じない? あなたと一緒ではない?」
突然現れたこの男、名はカヴァルカンティと申しまして、そう、ダンテさんがいつも一緒に遊んでいるカヴァルカンティ・グイードくんのお父上でございます。
「あら、お三人、やたらピリピリしてるじゃないですか、取り込み中でしたか。もしかして、わたくしお邪魔だった? お呼びじゃない? お呼びじゃないね。こりゃまた、失礼いたし……」
「少し、落ち着きなさい」
ウェルギリウスさんが引き止めます。
「あっし、グイード君の友だちでダンテいう者ですが、天国で待っているベアちゃんのとこに行く途中で、グイードくんとは別行動です。グイードくん、神さんとか信じていなかったから、地獄にも来られないと違いますかね」
男は、この言葉を聞いて、いきなり立ち上がります。最初から立ってれば、焼かれずに済むのにね。
「あんたさんは、今『神さんを信じていなかった』と言いましたか。過去形ですな。『いなかった』ということは、息子はもう生きていない? そんな殺生な、過呼吸ですわ……」
そのまま、墓穴の中に倒れ込んでしまいました。最後まで落ち着きない方でございます。
「何、今の?」
ファリナータさんは、呆気にとられて、ただ立っております。
しかし、張り詰めた空気は、お陰様でもうありません。
「我の一族が、戻ることができぬとは、悲しいことじゃ。しかし、それも致し方ないこと。戻ることや、変えること、止めることは、とても難しいと、ビジネス書にも書いてある。スクラップ&ビルドは、大変なんじゃよ」
ファリナータさん、わかった風に、ひとり納得しております。なんとなくわかった気になるのも、ビジネス書の効果なのでしょうな。
「ところで、なぜ我ら一族は、こうも嫌われているのじゃ」
「そりゃあ、あんたの一族は、暴れ放題でしょ。議会がNOを突き付けたわけですよ」
「結構、フィレンツェ側の味方だったのにな……」
「京王フレンテ仙川の右側ですか? 二階がマックです」




