第九幕(一)
ダンテさんたち、ウェルギリウスさんが呼んだ助っ人が到着するまで、世間話をしております。
「ウェルさんにお尋ね申します。このディースとやらに来た人って、他にもいるんですか」
「滅多におらんが、いないこともないな」
「いないことはないとは言え、滅多にいないのだから、いないと言えなくもないほどのいない具合ですか」
「よくわからんが、その滅多にいない内のひとりが、私ではある」
「こりゃウェルさん、勿体ぶりましたね。滅多にいないと言っておきながら、自分は来たことあるとマウント取って、底意地の悪さが透けて見えます」
「自慢するつもりはないので、そう責めるでない。私は、魔女エリクトーの呪文によって、ここに呼び出されたことがあるのです」
「ほう、そんなことがありましたか。どこかに書いてありますか」
「まあ、そうだな、書いてあるな」
「あっし、ウェルさんの書いた『アエネーイス』を読んだことがあるって言いましたでしょ。そこには、書いてありませんでした」
「そうだな、ルーカーヌスさんが書いた『内乱』という本にだな……」
「それも読んだことあります。エリクトーは出てきても、ウェルさんのことは、これっぽっちも書かれちゃいませんでした」
「それはだな、つまり……」
ウェルギリウスさんが、答えに窮しております。
その時、ダンテさんの視界の端に、塔の頂に立つ三人の姿が映ります。
「ありゃあ、ウェルさん、あれ見てください。女子三人が蛇を身体に巻き付け、頭から蛇を生やして立ってます。仮面ライダーか楳図かずおかっていう位のへび女っぷりです」
ウェルギリウスさん、魔女エリクトーの話題がスルーされ、内心ほっとしております。
エリクトーに冥界に導かれたことがどこにも書かれていなくても、それは「神曲」の作者であるダンテさんの責任なので、ウェルギリウスさんを責めるのは酷というものです。




