第八幕(三)
「ディースに着いたぞ。全員、集合!」
「ウィース! アチチだよ! 全員、修造!」
「ダンテさん、ディースの都です。ふざけてないで、行きますよ」
船を降りまして辺りを見回しますと、立派な城門の上に、千を超える悪魔がたむろっております。
「いやあ、仰山の悪魔がいますね。これだけ大勢ですと、中には『やさしい悪魔』もいたりしますか。もしかして、キャンディーズの『ディーズ』は、ディースの都の『ディース』と関係ありますか。ランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんはいますか。乱数発生器はエニグマですか」
「ダンテさん、落ち着きなさい」
「いや、落ち着けって言われましてもね、こんなに悪魔が多くいちゃあ落ち着きませんよ。こう話す間にも、次から次へと……ほらあそこ、次の悪魔。あっちにも、次の悪魔。こっちにも、胸に白い三日月マークを付けた奴が!」
「それは、ツキノワグマじゃな。さて、私は城門を開けるよう悪魔と交渉してきましょう」
そう言いますとウェルギリウスさんは、ひとりで城壁に歩き始めました。
残されたダンテさんは、道端の野菊を摘んでは「うまくいく」「いかない」と花占いをしております。
ウェルギリウスさんは、悪魔と何やら話しています。
「……ああ、ダメダメ……うちは、一見さんお断りだから……帰ってくれない……しつこいなあ……」
悪魔の声が、所々聞こえてまいります。
しばらくしますと、悪魔たちは城壁の中へと駆け込んで、城門を閉めてしまいました。
ウェルギリウスさんが、とぼとぼと戻ってまいります。
「どうしました? ウェルさん、あちこちツケで飲んでるから、入れてもらえなかったんじゃないですか。あくまでも推測ですが当りでしょ」
「たしかに、私たちを中に入れたくない輩がおるようじゃ。しかし、心配はいりません、今、助っ人を呼びましたから。その方に入れてもらいましょう」
「えっ、助っ人呼ぶって、ここは地獄ですよ、どうやって呼んだんですか。十四世紀の初めにはスマホもなければ、電話さえも発明されていない時代ですよ。電報だって、ありゃしない。テレパシーですか、ウェル・ゲラーですか」
「ダンテさん、それを言っちゃあ、おしまいよ。私、生まれも育ちもマントヴァです。アンデスでうぶ湯を使い……」
じゃあな、あばよと言って去ろうとするウェルギリウスさんを、ダンテさんが辛うじて引き止めました。




