第八幕(二)
プレギュアースさんの船に乗って、沼を渡っております。
「お前は誰だ!」
突如、沼から顔を出した亡者が叫びます。
「わあっ、びっくりしたな、もう。泥まみれで沼から現れたりして、お前さんこそ誰ですか」
「おれは、この沼で苦しむ者だ」
「そりゃあ、見ればわかるっていうもんです。この沼を楽しんでる奴なんかいやしませんよ。ああ、もう泥だけにして、汚いなあ。洗濯機に服入れてお風呂に入るか、とっとと沼の中に戻りなさい!」
ダンテさんが追い払おうとしますが、泥だらけの亡者は、言うこと聞かずに船べりに両手を伸ばします。
「ほら、汚れるから、あちこち触らない!」
ダンテさんは、亡者の手を解こうとしますが、頑として離れない。
「いい加減、消え失せなさい!」
見かねたウェルギリウスさんが、亡者の顔を足蹴にしました。
亡者は、沼に沈んでいきます。
「ダンテさんが、怒りに満ちた亡者を追い返そうとするとは、立派なことです」
そう言いますと、ウェルギリウスさんはダンテさんの首に手を回し、頬に祝福の口づけをします。
「何すんで……い」
ダンテさんの心の奥で、何かが目覚めたようでございます。
「あいつが、ひどい目に遭うところ見てみたいです」
ダンテさんが、頬を赤く染めながら呟きます。
「フィリッポ・アルジェンティをぶちのめせ!」
ダンテさんの言葉に応えるように、泥まみれの亡者たちが、先ほどの泥まみれの亡者に飛び掛かり、寄ってたかって責め始めました。泥まみれの亡者が、泥まみれの亡者たちに、体中をまさぐられております。
「おっ、願い叶いました……が……全員泥んこまみれで、誰が誰だかわかりませんね……エロくもないので、ちっとも、おもしろくありません」
船は進み、泥レスも見えなくなりました。
それと引き換えと言っては何ですが、前方からいくつもの尖塔が見えてきました。
「ウェルさん、あれは、ハリーポッ……」
「違う、違う」
ウェルギリウスさんは、慌ててダンテさんの口を押えます。




