第八幕(一)
話は続いております。
ダンテさん一行、高くそびえる塔に着くかなり前から、塔の頂に二つの炎が灯されるのを目にしております。
「灯りがつくと、遥か遠くの塔で合図を返してますね。あっし目がいいので、よく見えます。右目も左目も視力が2・0あるので、両目で4・0あります」
「それは、すごいですな。私なんかは、ちょっと小さなランドルト環でも、シャネルのマークに見えますな」
「そんな奴はおれへんやろ~」
「いや、これがホントでな。ぼやけて二重に見えるのです」
「んなこと言われたらアンタ、往生しまっせ~」
「それ、大木こだま・ひびきの丸パクリではないか」
「チッチキチー」
ダンテさんとウェルギリウスさんが、最近、チッチキチーがアニメ化されましたね、いやそれは地動説をテーマにした「チ。」という漫画が原作ですよ、チッチキチーシールそのままじゃないですか、と言い争いをしている中、一艘の船が水面を滑るように向かってまいりました。
「そこのお前、ここは俺の縄張りだぞ」
船を操る男が叫びます。
「おお、これはプレギュアースよ、久しぶり。息まいても縄張りは、この沼だけのこと。さっさと私たちを乗せて沼を渡りなさい」
またしても、ウェルギリウスさんの方が上手のようでございます。プレギュアースさんは、何も言い返せず悔しそうに歯軋りしております。
「さあ、乗った、乗った」
ウェルギリウスが、すっと乗り込みます。魂なので重みがないのです。
ダンテさんは生身の人間ですので、乗り込むときに重さで船が大きく傾きます。
「これ、危ない! 揺らすでない! 静かに乗りなさい! 揺らすな! 落ちるではないか! ダンテ! 揺らすな! ごらぁ!」
身体を左右に揺すっているダンテさん、ウェルギリウスさんに叱られております。




