第七幕(一)
「パペ・サタン、パペ・サタン、アレッペ」
プルートーさんが、しわがれた声で話し始めました。
「これは、おもしろそうですね。何の呪文ですか。パペ・サタン、パペ・サタン、アレッペ。なんか、こう、陽気になりますね。パペ・サタン、パペ・サタン、アレッペ。ほれ、パペ・サタン、パペ・サタン、アレッペ」
ダンテさん、妙な節回しで唄っております。
プルートさんは、あっけに取られ、何も言えません。
そのまま、退場となります。
大いなる敵なのに。
ダンテさんたちは、第四の圏へと降りていきます。
そこには、大勢の亡者たちが、圏の円周を右側と左側から向かうように、大きな岩を転がしております。
「ウェルさん、大玉転がしです。あっしの得意種目ですよ。オリンピック種目だったら、間違いなくあっしが代表選手なくらいの得意種目です」
「大玉転がしを得意種目と言う人も珍しい。しかし、あれは大玉転がしではありません。よく見てみなさい」
亡者たちは、両側から互いに進み、ぶつかると、それぞれ向きを変えながら罵声を浴びせあっております。
「なぜ、貯めなはる」
「なぜ、使うてしまう」
「ははあ、ここはお銭にまつわる地獄ですね。ケチな番頭さんと浪費癖のある若旦那の噺ですか」
「まっ、そんなところじゃな」
円周を反対側に戻っていった亡者たち、再び出会うと互いに罵りあって、再び戻ってきます。
「ここにいるのは、誰ですかね。うちの大家はケチだから、亡くなったら真っ先に来そうだね。おや、頭を丸く剃っているのは『坊主丸儲け』の坊さんですか」
「これ、これ、指はさすでない。宗教法人は何かと貯めがちなのじゃよ」
ウェルギリウスさん、慌ててダンテさんの腕をおろさせます。
「政治家も大勢いるから、気をつけなさい」




