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千物語 I  作者: 松田 かおる


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99/100

北風と太陽

付き合っていた彼と別れた。


きっかけは大したことではなかったのだけれども、「物のはずみ」とでもいうのだろうか、お互いに引っ込みがつかなくなってしまって…といった感じだった。


そしてどこからともなく「私が彼氏と別れた」という話が拡がりはじめ、あっという間に周りに知れ渡ってしまった。

まぁ、それ自体は事実だから否定もしなければムキになったりもしなかったけれども、その話を聞きつけて早速私にアプローチをかけてくる連中が急に増え始めた。


正直意外だった。

私自身そんなに異性にモテるとは思っていなかったから、周りのそういった反応に少し驚いた。

けれども、別れたすぐ後に次の人と…と言うほど私のメンタルは強くないので、気持ちはありがたかったけれども男たちの誘いをかたっぱしから断り続けた。


誘われては断って。

また誘われては断って。

そんなことを続けているうちに、私に言いよってくる人の数も少なくなった。


けれども「それでも」と食い下がってくる男が二人いた。


一人は陽気な性格で、

「俺が昔のことなんて忘れさせてやる」

と、ことあるごとに私に言ってくる。

「悲しみを上書きする」とでも言えばいいのだろうか、そんな感じだった。


そしてもう一人は大人しい性格で、

「辛いことがあったのは解っているから、それも一緒に背負っていこう」

と、私の「悲しみや苦しみ」も包み込む包容力を見せてくれていた。


周りの人も「この二人のどちらかと付き合うのだろう」と勝手に決めつけているようで、

「残念だけど、僕は手を引くよ」

「ねぇ、どっちと付き合うの?」

という声がかかることが多くなった。

そのせいという訳じゃないけれども、私も二人と食事に行ったりするようになった。


陽気な彼はいつも「賑やかな場所」に連れて行ってくれて、私を少しでも楽しませようとしてくれる。

大人しい彼はその性格通りに「静かで落ち着いた場所」に行って、私の話を聞いてくれる。


北風のように悲しみや苦しさを吹き飛ばそうとしてくる人。

太陽のように悲しみや苦しみを暖かく包み込んでくれる人。


まるで私という旅人の「悲しみ」という上着を脱がそうとする、「北風と太陽」のようだった。


いつか私は、二人のどちらかに「悲しみ」という上着を脱がされる時が来るのだろうか…

それとも北風にも太陽にも負けず、「悲しみ」という上着を脱ぐことなく、ずっと独りで旅を続けていくのだろうか…


そして二人は今日も、私の「上着」を脱がしにくる…

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