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千物語 I  作者: 松田 かおる


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ポータブル

「あのさ」

「ん?」

「こうして普段何気なく使ってるスマホだけどさ」

「スマホがどうした?」

「よく考えるとすごいよなぁ、って」

「そうか?」

「そうだろ。だってちょっと前まではガラケーだったし、それよりさらに昔は電話を『持ち歩く』こと自体ありえなかったんだぜ?」

「まぁ、そう考えればそうだよな」

「それが今じゃ、こうしてみんなが『持ち歩いていること』が当たり前になってさ」

「確かになー」




「スマホに限らずだけど、いろいろなものが持ち運べるようになったよなぁ」

「そうだなぁ」

「音楽にしても蓄音器からレコード、カセット、そしてCDにダウンロード…すごい進歩だよなぁ」

「こうしてスマホに取り込んで、何千曲も持ち歩けるようになったもんな」

「そうそう、本当に便利になったもんだよ」

「ゲームにしてもそうだよな。昔はわざわざゲームセンターまで行ってたのが、家庭用ゲーム機からネットゲームにスマホゲーム…いつでもどこでもゲームができるようになって」

「睡眠時間は減ったけどな」

「ははは、それは確かに」




「こうして何でもかんでも持ち歩けるようになったのって、今更ながらすごいことだよな」

「そうだなあ、本当になんでも持ち歩けるようになっちゃったもんなあ」

「お金だって、お札や硬貨を『電子マネー』で持ち歩けるようになったおかげで…」

ピピッ。

「財布を出さずにジュースも買える」

「だな。それに電車に乗るときも」

ピピッ。

「切符をもたずに乗れるしな」

「本当になんでも持ち歩けるようになって、便利な世の中になったもんだ」

「そうだなあ」

「できれば俺たち自身も目的地にまで勝手に持っていってくれるようになるといいのにな」

「さすがにそれは無理だろう」

「わからんぞ?そのうち自分を『情報化』して、スマホに取り込んで運んでもらう…なんてこともできるようになったりとか」

「そうなったら本当に便利なもんだけどな」

「いずれは『持ち歩けないもの』なんてなくなっちゃうんじゃないか?」

「もし地球とか宇宙自体も『情報化』できたら、簡単に持ち歩けるようになったりしてな」

「ははは、本当にそうなったら面白いかもしれないな」




「じゃあ、遊びに行ってくるね!」

「また『ポータブル銀河戦争ゲーム』で遊ぶの?」

「そうだよ」

「でも、銀河同士で戦うなんて、ゲームと言ってもどうなのかしら?」

「ゲームの中の話だもん。それにもし僕の『銀河』が滅んじゃっても、また作り直せばいいだけのことだしね」

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