告白
侵略宇宙人が放ってきた「最後の怪獣」が、街の破壊を続けている。
今まではそれなりの成果を上げていた防衛隊も今回はまったく歯が立たず、ただ蹂躙されるがままになっていた。
「くそ、このままでは奴らに…」
彼はそう呟いて、隊員服のポケットから『変身アイテム』を取り出した瞬間、
「待って!」
彼を呼び止める声が聞こえた。
声のした方を振り返ると、防衛隊の女性隊員が彼の方に走り寄ってきていた。
彼は手に持った『変身アイテム』を眺めて、何かを決意したような表情になる。
そして改めて彼女の目をしっかりと見て、
「僕はね、地球人じゃないんだ。遠い宇宙から地球に遣わされた、『アルティメットヒーローマン』なんだ!」
絞り出すように『告白』した。
彼の『告白』を聞かされた彼女は、ハッとした表情を見せた。
「びっくりしたかい?」
彼女の表情を見て優しい口調で彼が聞くと、彼女は小さく頷いて、
「えぇ」
と、一言だけ返した。
彼は微笑みながら
「そうだよね、まさか僕が…」
そう言い始めると、
「えぇ、まさか気づかれていることを知らなかっただなんて」
彼女は彼の言葉に重ねるように言った。
「…気づいていた?」
彼が聞くと、彼女は
「結構前から」
涼しい顔でそう答えた。
「…具体的には?」
彼が困惑気味に聞くと、
「あなたが最初に『アルティメットヒーローマン』って名前を言った時から?」
彼女はそう答えた。
「…」
「あと、ここぞと言う時にいなくなっていたでしょう?その辺から『怪しいな』って思っていたのよね」
「いや…それだと偶然ってこ」
「あと、通信機のログ」
「ログ?」
彼が腕につけている通信機を見ると、
「『彼』が戦っている時の動きと、あなたの通信機の移動ログが一致していたの」
彼女はそう言った。
彼が何も言えずにいると、
「それとあちこちの監視カメラにしっかりと、『変身』の瞬間が写っていたわよ」
とどめの一撃を彼に告げた。
「…もしかして、このことはみんな」
彼がやっと言葉を搾り出すと、
「もちろん知ってるわ」
「なんでそのことを僕に…」
彼が素朴な疑問を投げると、
「事情があるようだから、気づかないふりをしよう、って」
彼女は返した。
地球人の気配りに、彼は膝から崩れ落ちそうだった。
「最後の怪獣」が、街を破壊し続けている。
彼はなんとか気を取り直して、
「それじゃあ、行ってくるよ」
彼女にそう言い、『変身アイテム』をかざす。
「気をつけてね」
彼女は少し心配そうな表情を浮かべて、彼に言った。




