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千物語 I  作者: 松田 かおる


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お百度参り

「…99回目、っと」

私はそう呟くと百度石に小石を一つ置いて、最後の一回目を始めようとした次の瞬間、

「何してるんですかー?」

という能天気な声で、99回の努力が粉みじんにされてしまった。




「だからー、ごめんって言ってるじゃん」

声をかけてきた彼女は、本当に申し訳なさそうに謝ってきた。

「あと一回だったのよ?」

私がそう抗議すると、

「『お百度は人に見られちゃいけない』って?」

彼女はそう聞いてきた。

「そうよ。それを解ってるんだったら少しは空気を読んで、最後の一回が終わるまで待つとかできなかったの?」

私がさらに言うと、

「それなら大丈夫じゃない? あたしユーレイだし」

あっさり返してきた。



話を聞くと、彼女はなんらかの理由で幽霊になってしまい、成仏する機会を探っているとのことだった。

で、その成仏する機会と言うのが…

「『人間に百回善行をすること』と?」

私が改めて彼女に聞くと、

「そー。で、ちょうど今あと一回のところまできたのよねー」

「ふーん」

「それに、あなたのお百度を台無しにしちゃったっぽいから、そのお詫びも兼ねて百回目の善行の対象にしたいかな、って」

彼女は少し申し訳なさそうな口調で私に言った。




「でも、あんたが私にする善行って言ったら、私のお百度のお願いを叶えてもらうことになるのよ?」

私が素直な質問を投げると、

「まぁ、これも縁だしね。協力するよ」

彼女はそう言いながら、

「で、あなたのお願いって?」

私に聞いてきたので、

「私を振ったあいつが一生ひどい目に遭うように」

彼女にそう答えた。





「あ、『呪い殺す』とかはナシね?やろうと思えばできるけど、さすがにアウトだし」

彼女はそう聞いてきたが、

「私だって本当に死なれたら気分が悪いから、そこまでしなくても大丈夫」

私はそう答えた。

すると彼女は、

「じゃあこういうのは?毎日何かしら嫌な思いをさせて、ノイローゼにしちゃう」

そう提案してきた。

「…それなら悪くないかも」

私はそう答えて

「で、具体的に何するの?」

と彼女に続けて聞いた。

彼女は少し考えてから、

「『小指をタンスの角にぶつける』とか、『カレーうどんのつゆが必ずシャツにはねる』とか?」

結構真剣な表情でそう言ってきた。

私は思わず吹き出しながら、

「それいいねー。それで行ってみようか」

これで無事、契約成立。


「じゃあ、お互いのお百度成就のため、頼んだわよ?」

私が言うと、

「おー!」

彼女はどこか少し楽しそうな感じで、片腕を突き上げた。

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