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千物語  作者: 松田 かおる


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バタフライ効果

「あなたを殺す」

一生に一度耳にする機会があるかどうか、そんな台詞を聞かされた俺は、

「あまり好みじゃないから、俺は君で萌え死ぬことはできないなぁ」

いささか意味不明なリアクションを返すしかできなかった。


「わたしだってあなたは好みじゃないし。でも殺す」

彼女はため息をつきながら言った。

「じゃあ、どうやって俺を殺すの?」

素朴な疑問を口にすると、彼女は懐から物騒なものを抜き出して、

「物理的に殺す」

淡々と返事をした。


「何で俺を殺そうと?」

さらに素朴な疑問を投げかける。

すると彼女は

「『バタフライ効果』って知ってる?」

と、話をそらすかのようなことを聞いてきた。

「知ってるけど、それが?」

俺が答えると、

「あなたがその『バタフライ効果』の出発点になっているの。だから殺す」

そう答えた。


「話が見えない。もっと詳しく話してくれないか?」

俺が素直な感想を述べると、彼女はそれからたっぷり二時間ほどかけて

・自分が未来の世界から来たこと

・これから俺が起こす行動がきっかけで、結果的に世界が滅ぶ

という話をしてくれた。

「という訳で殺す」

説明が終わった彼女は、少しすっきりした表情ですっきりしないことを言った。

「会話の最後に『殺す』って言うのやめない?モテないよ?」

「そんなことはどうでもいい。とにかくあなたを殺す」

改めて俺に物騒なものを突きつける。


そこで気づいた。

「でもさ、よく考えたら君が俺に全てを話してくれたってことは、俺がきっかけになる行動を起こさなければいいんじゃ?」

思いついたことを言うと、彼女は一瞬はっとした表情を見せて

「…確かに」

と呟いた。

「じゃあ、帰ってもいい?」

俺がそう言うと、

「うーん、じゃあここで一旦解放するけど、くれぐれもわたしが言ったようなことはしないでよね?」

彼女はどこか納得していない感じだったが、俺を解放してくれた。




「しかしまぁ、俺のあんな行動が世界の滅亡に繋がるなんてねえ…」

世の中何がどうなるか、解らないもんだ。


…そうだ。せっかくだから…


俺はスマホを取り出して、

『…信じてもらえないかもしれないけど』

と、今あったことをSNSに書き込もうとした。

すると背後で激しい警告音が聞こえたと思ったら、

「あー!」

と、それに劣らぬ叫び声が続いた。

声をした方を振り返ると、彼女が

「何してくれてんのよ!また新しい『バタフライ効果』が生まれるじゃない!やっぱり殺す!」

そう怒鳴りながら、物騒なものを突きつけてきた。

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