表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千物語 I  作者: 松田 かおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/100

負け戦の後

今日、俺は「戦い」に負けた。


戦いといっても、戦争とかそういったものではない。

そんなものよりもっと汚くて醜くて血生臭い、「派閥抗争」という戦いだ。


「戦いに負けた者」の末路は悲惨だ。

早速「孫会社の総務課長」と言うポストが打診されたが、どう見ても明らかな報復人事だった。

当然そんな打診を受けるわけもなく、俺はその場で辞表を提出した。

そしてその足で行きつけの居酒屋に飛び込み、いつもと同じメニューを頼んでいた。


だが、負けたといっても「悔しい」と言う感情はなかった。

むしろ清々しい気分に近いものさえあった。

きっと対抗勢力に「あいつ」がいたからなのかもしれない。


同期入社の「あいつ」とは最初の配属の頃からずっと一緒で、何をするにもつるんで動いていた。

楽しい時も、辛い時も、そして悪巧みをする時も…

お互い馬が合ったのか、どんな時でも楽しかった。

だが今回は「敵同士」になってしまい、その結果「あいつ」が勝ち、俺は負けた。

それだけのことだ。


次の道を探すところからのスタートだが、きっと険しい道になるだろう。

-でもまぁ、生きてりゃまだチャンスはあらぁな-

そう自分に言い聞かせて、お猪口の日本酒を飲み干す。

と同時に、

-「あいつ」は今頃、派閥連中と「勝利の美酒」に酔いしれているんだろうか…-

そんなことを考えながらお猪口に酒を注ごうとしたが、なぜかお猪口が見当たらない。

あたりを探すと、

「旨そうなもん食ってんじゃんか」

お猪口を持ちながら横から声をかけてきた、「あいつ」の顔があった。


「お前…何でここに」

と、沸いた疑問を口に出すと、

「派閥連中の人の多さで悪酔したくないもんでね、さっさと逃げてきた」

と言い、ニヤリと笑った。


「そんなことしていいのか?いろいろ面倒なんじゃないか?」

俺が聞くと、

「大丈夫、辞めて来ちまったから」

「あいつ」は涼しい顔で答えた。


「はぁ?」

俺の間抜けな声を「あいつ」は気にせず、

「俺は派閥になんて興味ないし、それにお前がいねえと面白くねえしな」

と言った。

俺が言葉を出せないでいると、

「まぁ、生きてりゃまだチャンスはあらぁな、何とかなるだろ」

と、涼しい顔で言い放った。


「だから今日は、お前と飲みたかったわけだ」

「…しょうがねぇなぁ、お前の奢りな」

「何でよ」

不満そうに「あいつ」が文句を言う。

「お前は勝者で俺は敗者、そういうこった」

俺がそう返すと、「あいつ」は

「仕方ねぇな」

と、満更でもない表情で苦笑いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ