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千物語 I  作者: 松田 かおる


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直せないもの

小さい頃から、「ネジのあるモノ」であれば何でもバラバラにしてしまう、悪い癖があった。

もちろん小さい子供なので一度バラバラにしたら元に戻せるわけもなく、その度に親に怒られていた。

大きくなっても物をバラす癖は治らなかったが、年を重ねるごとに直すことを覚え、逆に何でも直してしまう癖が身についた。

おもちゃ、時計、電気製品…

ありとあらゆる「壊れた物」を直せるようになり、いつしかそれを仕事とするようになった。

壊し方を心得ていれば、直し方も心得ている…と言うわけだ。

そして時折、「高級アンティークもの」さえも手がけるようになった。

おかげで商売としては申し分ない稼ぎも得られるようになった。


そして仕事も順調になってきたので、これを機会に長い間付き合っている彼女に「けじめ」をつけようと思った。




「別れて欲しいの」

待ち合わせた喫茶店で開口一番、彼女は言った。

突然そんなことを言われた俺は、

「え?」

と返すのが精一杯だった。


彼女曰く、

-稼ぎがあるのは知っているけど、地味な仕事が馴染めない-

-同じお金を稼ぐんだったら、もっと華やかな方がいい-

-そんな人を見つけたので、別れて欲しい-

とのことだそうだ。


結局俺は何も言い返すことができず、鞄の中から「稼ぎの三ヶ月分」を出すことなく彼女の後ろ姿を見送った。


そして風の噂で、程なく彼女は「青年実業家」と結婚したと聞いた。




そんなことがあって何年か経った頃、

「…元気だった?」

俺の仕事場に突然彼女が訪れた。


俺は少しだけ警戒心と驚きを感じながら、

「…まぁ、そこそこ」

と返した。

そして彼女は単刀直入に、

「やり直して欲しいの」

と切り出した。


「彼が事業で大失敗して、破産しちゃったの」

「彼とは離婚してきた」

「やっぱり堅実さが大事だと気づいたの」

「だからあなたとやり直させてほしいの」

俺に何かを言い返させる隙を与えず、彼女はまくし立ててきた。


俺は彼女の言い分を一通り聞いた後、

「そう、大変だね」

と返した。

彼女はそれを聞いて

「じゃあ…」

と返してきた言葉にかぶせて、

「でも、できない」

と続けた。


彼女が何も言い返せずにいるところに

「俺には機械は直せても、人間関係は直せないみたいだ」

俺はそう告げた。


彼女は何も言い返せずに仕事場から出て行き、俺はまた彼女の後ろ姿を見送った。



「あら?お客様だったの?」

「いや、ちょっと個人的な話で来た人だよ」

仕事場の奥から出てきた妻に、俺はつとめて冷静に返事を返した。

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