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千物語 I  作者: 松田 かおる


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そんなことも知らないの?

「ちっくしょー、何が『そんなことも知らないの?』だ!あったまくんなぁ!」

そう毒づきながらジョッキのビールを一気に飲み干すと、

「おやまぁ、随分荒れてるわねぇ」

テーブルの向かいに座っている彼女が烏龍茶を飲みながら、俺に向かってそう言った。


俺は家電量販店で販売員をしているのだが、「いかにもオタク」な客に、自分の管轄以外の製品の質問をされた。

それだけならいいが、こちらがあまりその製品について詳しくないことを知ると、とたんに自分の知っている知識を早口で捲し立てて、挙句の果てに「店員なのにそんなことも知らないの?」と、まるで小馬鹿にするような口調で言い放ったのだ。


後で調べたら、その客が披露した知識は間違っていたのだが。


「知らないくせして知ったかぶりするなってーの!」

こんなことを目の前の彼女に言ったところで何の解決にもならないのは解っているのだが、つい愚痴の一つでも言いたくなってしまった。

「まぁまぁ、落ち着きなよ。そんな気分で飲んだら悪酔いしちゃうよ?」

彼女はそう言いながら、追加で頼んだ俺の分の烏龍茶を差し出しながらなだめてくれた。




目が覚めたら、俺は自分の家のベッドに横になっていた。

…いかん、全く記憶がない。

「お?目が覚めた?」

台所に立つ彼女がそう言いながら、体を起こした俺の方を見て言った。

「…えっと、俺あの後どうしてた?」

俺が聞くと、彼女はクスクス笑いながら、

「大変だったのよー。結局あなたあの後もすごい勢いで飲み続けて、歩けないくらいベロベロに酔っ払っちゃったんだからー」

「…」

「電柱に喧嘩は売るし、野良猫に向かって『おまえのかーちゃんデベソ!』とか言うし、挙げ句の果てに見回りのおまわりさんに『あの失礼な客を逮捕しろー!』とか言い出すし。ここに連れてくるまで本当に大変だったんだから」

と、言っているほどに大変ではなかったような口調で言った。

「…ごめん」

俺が素直に謝ると、彼女はにこりと笑って

「わかればよろしい、はい酔い覚まし」

そう言って、スポーツドリンクを渡してくれた。




「…でもさ、そんなに迷惑かけたのにどうして家まで運んでくれたの?タクシーに住所伝えて放り込んでおけばよかっただろうに」

俺が言うと

「そんなことできるわけないじゃない。それに『好きな人のため』だったら、大体のことは笑って許せるのよ」

彼女はそう言って、

「『そんなことも知らないの?』」

と、いたずらっ子のように笑いながら続けた。

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