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千物語 I  作者: 松田 かおる


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60/100

小さな殻

「気を悪くしたらごめんなんだけど…」

デートの締めにバーで飲んでいたら、彼女がそう言い出した。


「何?」

僕が聞くと、

「最近、なんか刺激が少ないかなぁ…って感じちゃって」

彼女が少し申し訳なさそうに答えた。


「…じゃあ、今度のデートはエスニック料理でも食べに行く?」

僕がそう言うと、

「それは興味深いけど、そうじゃなくて。なんて言うかな…こう、新鮮みが足りないような気がして」

彼女のその言葉に『じゃあ、海鮮料理でも…』と思ったけど、絶対それはここでは間違っていると思って口には出さなかった。


「もちろんデートしてて楽しいよ。楽しいんだけど…」

彼女がそう言ったところでその話題は何となく終わって、ほんの少しだけ気まずさが残ったデートもお開きになった。


-なんかごめんね、最後に変なこと言っちゃって-

デートが終わって別れた後、彼女からメッセージが届いた。

-気にしないで大丈夫だよ。じゃあおやすみ-

僕はそう返しながら、彼女が言ったことを振り返ってみた。


何となく理由は解っていた。

自分自身が単調だから、面白みがないのだ。

毎日の生活が単調で同じことの繰り返しだから、そうなってしまうのも無理がない話だった。

変化を強く望まないあまり、自分自身で殻に閉じこもってしまったようになったのかもしれない。

だから彼女にあんな言葉を出させてしまったのだろう。

今更だけど、その辺は反省しないといけなかった。


かと言っていきなり生活を大きくを変えるのも難しいから、取り敢えず小さなところから変えてみようと思って、毎朝乗るバス停の二つ先、会社の最寄駅から一駅分先まで歩いてみることにした。


すると思いのほか新しい景色の中に、気に留まるものが見えてきた。

せっかくなので、彼女にも教えてあげることにした。

-途中の公園の桜の木が満開で、花見にちょうど良さそうだ-

-駅と駅の間に雰囲気の良いお店を見つけた-

などなど。


彼女の方も送られたメッセージをきちんと読んでくれて、ちゃんと返事を返してくれた。

それは義理で返してくるようなものではなく、本当に楽しんでくれているようだった。

その証拠に、僕が送ったメッセージがきっかけに次のデートコースが決まって、本当に楽しんでくれた。


彼女が楽しんでくれたのは何よりだった。

そして僕自身がこうして「小さな殻」を破ることで、思った以上に良い結果になったのが何より嬉しかった。


だから今度は、もう少し大きな殻を破るようにしてみよう。

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