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千物語 I  作者: 松田 かおる


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最後の姓が消える日

「いつか遠い将来、日本人の姓は一つになる」


ずいぶん昔、そんなことを言っていた人がいたっけ…

要は

「結婚をして姓が変わることで『旧姓』が消えていき、最後は日本で一番多い姓になってしまう」

とのことだそうだ。


言っていることは解らなくはないけど、まさかそんなバカなことがあるはずがない…と思っていたら、本当にそうなってしまった。

ましてやわたしがその「最後の一人」になるとは、夢にも思ってもみなかった。




幼い頃に両親を亡くして「天涯孤独」だったわたしは、今日これから結婚して姓が変わる。

それ自体は他のみんなの結婚と何ら変わることはない。

ただひとつ、わたしが「最後の姓」の持ち主であること以外は。

でもこればかりはタイミングの話なのだから、どうしようもないところはあった。


そしてそのことが日本中の話題になってしまい、「日本最後の別姓、ついに消える」などとマスコミの注目を浴びることになってしまった。


そのおかけで結婚が決まった時から近所の人たちはもとより、マスコミまでもが「日本最後の別姓の女性」とか言い出して、ものすごい取材攻勢に遭った。


正直なところ、他のみんなも結婚して姓が変わったのだから、姓がなくなること自体にほとんど興味はなかったけど、こうも騒がれると改めて「自分の姓がなくなる」ことを、ちょっとだけ自覚してしまった。


そんなこんなで迎えた結婚式当日。

やはり「最後の姓」がなくなるとあって、式場の周りはマスコミや野次馬で一杯になってしまった。


「日本で一番有名なお嫁さんだね」

彼は冗談なのか本気なのか判らない口調で、苦笑気味に言う。

わたしも笑いながら

「ただの普通の人の結婚式なのにね」

と答えると、彼は

「まぁ、最後の別姓がなくなる日なわけだから、それだけみんな関心があるんだろうね」

そう返した。

その言葉に、ふと

「今度からは名前じゃなくて、『住所』で呼ばれるようになるのかなぁ。『○丁目の~』みたいに」

そんなくだらないことを考えてしまった。


まぁ、他の日本中の人と同じ苗字になってもわたしはわたしに変わりはないし、彼の奥さんなんだから、名前なんかどうでもいいのかもしれない。


でも、お墓参りとか大変そうだなぁ。

どこがうちの墓なのか、判らなくなりそう…


と、随分先のことを心配してしまった。


そんな先のことより目の前の彼のことを、それこそお墓に入るまで愛することだけを考えよう。

そう言い聞かせて、わたしは式場の入り口に向かった。

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