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千物語 I  作者: 松田 かおる


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エイプリルフール

「さて、そうクン。今日は何の日でしょうか?」

「…年度初めの日?」

素直に俺がそう答えると、

「違います。『エイプリルフール』です」

あいつはそう返した。



「と、いうことで」

「はい」

「今日は嘘をついてもいい日になります。ただし、午前中限定」

せっかく二人でもらえた平日の休日、朝っぱらから呼び出されたと思ったら…


何だかもったいない過ごし方をしている気分がしてきた。


「ではそう君に質問します。あなたはわたしのことを好きですか?嫌いですか?」

あいつがそんな質問をしてきた。


このまま素直に答えるのも面白くないな…

せっかくのエイプリルフールなんだから、

「大嫌いです」

ちょっと意地悪してやろうと思って、そう答えてやった。


するとあいつは、

「う…」

とひとこと。

「う?」

俺が言葉を返すと

「うわーーーん!」

泣き出してしまった。

え?え?

「どうしたのうっちゃん?急に泣き出して」

俺が焦って聞くと、

「わたしのこと『大嫌い』って言ったーーー!」

泣きながらそう答えた。

だって「嘘をついてもいい」って言ったじゃん…

そう言いたいのをぐっと抑えて

「あああごめんごめん嘘うそ、もちろん大好きだよ」

なだめるように言い直すと、

「エイプリルフールだから、それも嘘なんだーーー!」

「そう君はわたしのこと、嫌いなんだーーー!」

余計に大声を出して泣き出してしまった。


…どうすりゃいいんだよ…

ため息をつきそうになったところで、あいつの息が酒臭いことに気づいた。

それで合点が行った。

そういえば、泣き上戸の上に絡み酒気味だったもんなぁ。休みだからって朝から…


今度こそ本気でため息をついた。

こうなるともう、適当に相槌を打ちながら放っておくしかない。

結局あいつが泣き止むまで、午前中いっぱいかかってしまった。




「ご気分は?」

俺が聞くと、

「おかげさまですっかり酔いが醒めました…お騒がせしました」

酔い醒ましのホットミルクが入ったマグカップを持ちながら、あいつは答えた。

「それは何より。もう一杯飲む?」

あいつは首を横に振って、

「仕事が一段落ついたので油断しました…ごめんなさい」

そう言うとマグカップの中身を飲み干した。

でも、いいように振り回されたのが少しシャクだったので、

「じゃあ今度は俺からうっちゃんに質問します。あなたは俺のことを好きですか?嫌いですか?」

と聞いてやった。


あいつは一瞬考えるそぶりを見せ、

「わたしはそう君のこと…」

口を開いた瞬間、壁掛け時計が正午を指した。

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