大つごもり
悪友が
「初日の出、見に行こうぜ」
と、俺を誘ってきたのが始まりだった。
『車は出すからさ』
との事で、俺はその誘いに乗って出かけることにした。
お互い「一緒に新年を迎える相手がいない」ということもあって、軽い気持ちで夜のドライブに出掛けた。
ところが悪友が「目的地」と言った、とある山頂に向かう道は麓と違って積雪がかなりあって、冬タイヤでもなくチェーンも持っていない車は案の定、途中でスタックして身動きが取れなくなってしまった。
なんとか苦労して、路側の待避所に車を寄せる。
これで後続車に迷惑をかけることもなくなったので、二人して少し安心した。
中途半端に山中ということもあって、携帯電話は微妙に圏外。
しかもダメ押しのように、ちょうど山腹の雲の中に入ってしまっているようで、周りは霧よりも濃い白い世界に包まれている。
まだ日も変わらない時間、初日の出にはかなり時間があるので他の車が通る気配もない。
ただガソリンはたっぷり残っているので、エンジンをかけっぱなしにしていれば寒い思いをすることはない。
食べ物も飲み物も途中のコンビニで少し買い込んできたので、空腹や喉の渇きに悩まされることもない。
問題なのは身動きが取れないだけではあるが、それが一番の問題でもあった。
携帯電話は圏外なのでネットも使えず、いよいよ何もすることがなくなってしまい、悪友は少し前に仮眠を始めてしまった。
一人で起きているのもバカバカしいので、俺もしばらく仮眠をとることにした。
どのくらい経っただろうか、悪友に揺さぶられて俺は目を覚ました。
時間を見ると「ゆく年くる年」が始まる頃合いだ。
「んー、どした?」
俺が少し眠そうな声で言うと、悪友は
「ちょっと外見てみろよ」
と、暖房で少し曇った窓ガラスを指さした。
悪友が指差す先を見ると、さっきまであたりを覆っていた雲がきれいになくなって、視界が開けていた。
ちょうど待避所の周りには木々がなく、横を見れば麓の様子がよく見て取れた。
遥か先にはうっすらと街明かりが見え、満天の星空との対比が美しい。
「どうやらここでも初日の出が見られるらしいぜ」
どこでどう調べたのか、悪友が言う。
「じゃあ、もう面倒だしここで初日の出を見ることにするか」
俺がそう言うと、悪友も
「そうだなあ、これ以上登れないことだしな」
俺の意見に同意した。
散々な大晦日が終わろうとしているが、最後はそれなりに面白い体験ができたということで、よしとしよう。




