表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千物語 I  作者: 松田 かおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/100

ベランダの来訪者

「…サンタ?」

「そう」

「誰が?」

「俺が」


目の前に立つ宅配便屋風の男を見て、俺は頭を抱えそうになった。




そもそもベランダの窓を「トントン」と叩く音にひかれて、窓を開けたのが失敗だったのかもしれない。

そうしなければ、こんな不審極まりない男と会うこともなかったのだから。

かと言ってこのまま追い返すのも忍びないので、コーヒーメーカーに残っていたホットコーヒーを振る舞ってやる。

<自称サンタ>は、

「あったまるねぇ」

そう言っておいしそうにコーヒーを飲んだ。


「さて、本題だ」

コーヒーを飲み干した<自称サンタ>が口を開く。

「本題?」

俺が聞くと、

「お前さんにこれを渡さんとね」

そう言いながら小さな包みを差し出してきた。

「なにこれ?」

「クリスマス・プレゼント」

「俺に?」

「そう、サンタさんからのプレゼント」

「なんで俺に?」

「お前さん、今年一年『善く』していたからね、サンタさんからプレゼント」


なんだか釈然としない。

「大体、サンタのプレゼントは子供に渡すもんなんじゃないの?」

俺が素直な疑問を口にすると、<自称サンタ>は

「そんなことはないぞ?老若男女や人種国籍を問わず、『善く』している人にはプレゼントを渡すんよ」

そう答えた。

「『善く』なんてしてたかなぁ」

「本当に『善く』している人は、意外と気づかんのよ」

<自称サンタ>はそう言うとコーヒーカップを掲げて、

「こういうさりげないところに、人の本当の『善さ』が出るもんなんよ」

軽くにこりと笑った。

「だから『善いこ』のお前さんに。ほれ受け取れって」

そう言って小さな包みを押し付けてきた。

特に断る理由もないので、ありがたく頂戴することにした。


「じゃあ、俺の仕事はこれで終了。邪魔したね」

<自称サンタ>はそう言って踵を返しかけたが、

「あ、忘れてた。これにサインかハンコちょうだい」

と差し出してきた紙には、「受領証」と書いてあった。


宅配便かよ…

心の中で苦笑いをしながらサインをすると、

「はい、確かに。じゃあ、良いクリスマスを」

<自称サンタ>は今度こそ背中を向けて、ひょいっとベランダを乗り越えていった。

「え!?ちょっ…!ここ四階!」

思わずベランダに飛び出すと、下からトナカイに牽かれたソリが浮き上がってきた。

ソリに乗った<自称サンタ>は、

「コーヒーおいしかったよ、じゃあな!」

そう言い残して満天の星空に消えていった。




ちなみにプレゼントは、某大手サイトのギフトカード5,000円分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ