孤高の憂鬱
今思えばその年の入学式は風が物凄く強かった…そして
いつもと違う香りがしていた…
「この3年間で全ての人を魅了し愛し愛されるステチュになれるよう学びたいと思います」
「わ〜素敵」
「流石、成績トップ入学は輝きが違うかも〜」
「カラット(ファン)になっちゃいそう」
黒髪ロングの子…あの子が今年のトップなんだ…
それにしても、ホントに目が離せないし
尋常じゃないオーラ、それにあの声、どこかで聞いたような…
トップって事はダンスも凄いって事だろうし…
水晶が騒いでいていたのはもしかして…
「入学前からファンが付いてるみたいだよ!」
「でも…気持ち分かるかも」
「ライバルって?って感じしないかも」
「素敵すぎてね!」
「あ!在校生祝辞でパール・ルームの…襲名レディステチュの『森泉こもも』様が挨拶するよ」
桃の花びらが舞ったように見えた
『森泉こもも』です
「………」ザワザワ、ザワザワ
「はぁ〜」(甘い甘いため息の後)
「天使のような皆さんに、美しい瞳で見つめられ愛しい気持ちでいっぱいです」
「どうかこれからの学園生活、先輩として出来ることがあれば私に手助けをさせてください」
囁くような、歌うような、美しい声と姿に純粋な愛情に満ちた空気に包まれた…
「め、女神」
「素敵〜」
「可愛い!!」
「優しい、美しい」
襲名レディステチュの破壊力は半端なかった…
新入生の定員は35人、ここ数年で入学希望者数は増えるばかりで倍率はかなり高くなっていた!
「私のお陰よね!えっへん!」
「あれあれ今日もご機嫌ですね!」
「あ!スミス先生」
「見ましたか?黒髪ロングの新入生!」
「見ましたとも!」
「………」
「………」
「ヤバイって!!!」
「ヤバイっすね!!!」
その少女は、なぜか小さいときから、周りの人達に遠巻きに見られることが多かった…
近寄りがたいとか、緊張するとか、しまいには怖いとか…
少しだけ背は平均より高いけれど
自分はごく普通なのにどうしてだろうと
悩むことも多くなかなか友達も出来ず苦しいと感じることが多かったようだ
しかし、その少女は歌ったり踊ったりしていると凄く楽しくてのめり込んでいった
すると友達みたいな仲間みたいな存在も少しだけれど出来始めた
だが、そんな時…両親が宇宙船の事故で無くなってしまい
今、レッドドール星のお婆様の家で暮らしていた
「お母様、この子達は誰なの?」
「その子達はレッドドール星の何て言ったかなステチュ?じゃない」
「どうしてこんなにキラキラしてるの?」
「それに真ん中で踊ってる子…とっても可愛い!素敵な笑顔で見てるだけで凄く元気になる!」
少女はレッドドール星で暮らすことになった時、一番最初に思ったのが…
ホログラムの中で楽しそうに歌って踊っていたステチュ達、そしてその中心でキラキラしていた『清之琴鳥』ちゃんに
会えるかも!という思いだった!
そんな思いが…毎日の辛い気持ちを少しだけ楽にしてくれていた…