鍵ときな粉のお餅
「あのぅ…あなたは?」
「失礼しました!あまりにも嬉しくて…もし、宜しければ、お茶でも飲みながら、お話を聞いて頂けませんか?」
「は、はい…」
その店主は私達に美味しい緑茶と、このまちの銘菓である、きな粉のお餅を出してくれた
なんだか懐かしい味がした
「私共には代々受け継がれたお役目がございまして…」
「お役目?」
「はい、貴方様は水晶と対話ができるのですよね?」
何故その事が分かったのか驚いたが何か重要な事情がありそうに感じたので心配ではあったが本当の事を話すことにした
「対話というか文字が見えたりします…お告げのような…」
「なんと!そんな不思議な仕組みとは…私共は書面は残さず口伝えで、いつしか水晶と語ることのできる水晶の化身のような方が現れると聞いていました」
「水晶の化身…?」
「貴方様の瞳とオーラは水晶のように美しい!貴方様だとすぐに分かりました!震えております!」
「……?」
「これを」
「鍵?ですか?」
その店主から差し出されたどこかの鍵には見覚えのある文字とマークが記されていた
学園の書庫と同じような…
なので確かにあちらの世界と関係のある鍵なのだとは思った
「私が受け取って良い物なのですか?」
「勿論でございます!貴方様に間違いありません!貴方様が私共の親方様です!」
「親方様って?!」
本当に受け取って良いのか悩んだが、受け取ってくれないと崖から飛び降りますと、物騒なことを言い出したので、とりあえず受け取ることにした
「いろいろ調べて私が受け取るべきではないと解ればお返しに戻ります」
深々とお辞儀をする店主に見送られて私達は次の旅先へと向かった
「それにしても、こちらの世界には魔法が無いと言うのに本当に便利で発展していますね」
「そうだね、こちらには科学というものがあるからね」
「科学?」
本当に、この世界の人々の飽くなき探求心はあちらの世界に行かないとこんなに強くは感じなかったかもしれない
「本当に素晴らしい世界ですね!でも、時おり聞こえる心の声がとても疲れて辛そうに感じるのです」
地球へ来てから数ヶ月…やはりこちらの世界も良い所ばかりでない事を最愛さんは感じ始めていた
そろそろ、戻った方が良いかもしれないと考えていたが、この水晶がはめ込まれた鍵がそうさせてはくれなかった
 




