破顔
その日は夏が始まったばかりだというのにまるで初秋のような風が吹いていた
嵐がやってくるのではないかと思うほどでザワザワと不安な私の気持ちのようだった
森の地下に突如現れた扉に驚愕した私は慌てて魔法を発動し呪文やらカギやらで簡単に開かないようにしたのち逃げるように学園に戻った
「な、何で!!?」
鼓動が早鐘のように鳴って全然落ち着かなかった!
まさか本当に…夢?
この大事件に私の脳は思考停止していた
ソフィアに相談したかったが全宇宙ツアーの付き添いから戻るのは、かなり先なのでどうにもできなかった
とりあえず私は、一旦、扉のことは忘れる事にした!いわゆる現実逃避だ!(無理なんですけどね…)
「けんじゃさま、けんじゃさま、け・ん・じゃ・さ・ま!!!」
「うゎーびっくりした」
「こぼれてます!」
「あ、ごめん!ありがとうダイヤちゃん」
「けんじゃさま、ボーとしてどしましたか?」
私はあまりの出来事に、しばしばボンヤリする事が多くなり小さな失敗をするようになっていた…
「ん〜あのマサミサの2人がすぐにでもステチュになりたい!って困っててねはは」
まさかダイヤちゃんに本当の一大事を話す分けにもいかず、うっかりそんな事を口走ってしまっていた
「けんじゃさま…かわいいこにはたびをさせろ!わかいころのくろうはかってでもしろ!ひょうたんからこまです」
「あれ…それって(瓢箪から駒は何か違う気もするが)」
「そです!けんじゃさまのおことばしゅうです」
数年前に転移前の世界のことわざやら四文字熟語をこちらの世界にアレンジして教会関係者に教えたのが広まって今では本にまとめられて発行までさてれいた
「ほんとうにすごいです」
「はは…まぁ私の元いた国の先人達の言葉なんだけどね」
「けんじゃさまのいたせかいはほんとうにすばらしです!すごくすごくいってみたいです」
ステチュになれば…森の地下へ行けば…あなたも行けるかも…なんて言ったらどうなるだろう!
とダイヤちゃんの瞳の色を綺麗だなと想いながら考えていた
すると、ダイヤちゃんの顔がみるみる赤くなって興奮したように破顔した
「ん?」
キーンコーンカーンコーン…
「あ!おひるのかねだ!けんじゃさま…しつれいします」
「あ、はい」
新たな私のMyステチュの予感がするだけあって反則級の笑顔だ!
しかし、どうしてダイヤちゃんがあんな顔をして笑ったのか、そのとても切ない理由を知るのは、しばらく後になってしまった




