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0.999…9%の死

子子孤ねねこです。

初めての作人になるのでとても下手くそな文章ですが、興味を持ってくれた方に楽しんでもらえるよう頑張ります。

 血の爆風が襲った。

 死など覚悟する時間などなく一瞬にしてすべてが無になった。


「お願……子を……け……てーー」


「本当にいいのかい? 死ぬより辛いことがまっている。それでも助けてほしいと?」


 どこかの地下施設。

 医療機器がそろっていているが、医療施設というよりも研究施設といった雰囲気の場所。

 その場にいるのは、白衣を身にまとった長身で細身の男。

 髪の毛はぼさぼさで、髭も手入れが雑でぽつぽつと髭が生えている。

 白衣の男を消え入りそうな瞳で見つめる少女。

 黒くきれいな髪は血によって赤みががかっている。

 相当なことに巻き込まれたのは少女の体を見れば容易に想像できる。誰しもがその痛々しい姿に目を背けてしまうであろう。


「たす……けて」


「いいだろう。これだけはハッキリ言わせてもらうよ。君は助けられない。だが、弟君は助けられるよう最大限の努力を約束をしよう」


 白衣の男の言葉を聴き少女は柔らかく微笑んだ。

 この時、一人の少女が眠りにつき。一人の少年が目を覚ましたのだった。


 ーーーー10年後。


 男が立つその地は、科学の進歩によってつくられた海に浮かぶ大都市。

 今はまだ名前のないこの都市フロートだが、後に新たな国となる。

 当然ながらそんなことを知るものなどはいない。

 

「きれいな景色だ。去年植えられたんだっけか? ちょうどいいタイミングで移動になったもんだ」


 建物を囲むように植えられた桜の木。満開に咲いた花が風で舞って景色を色づけている。

 かすかな香りが新たなスタートを祝福するようにやさしくつつむ。


「まさかここで教師をすることになるとは思いもしなかったな。さて、職員室に行くとしますか」


 この都市がつくられた理由は特殊能力者や技術を一か所にまとめ管理、監視することで本土の治安維持のためだ。

 そして、この学校はそんな場所ならではの特殊機関の隊員育成をする専門学校。ESP育成専門学校。

 今日より男は非常勤講師として勤務となる。

 教頭に連れられてある教室の前で待つように指示され、教頭は中へ入って数分後、呼ばれるがままに教室へと入った。


「あのひとが、新しい実技講師か?」「ちょっと若すぎない?」「かっこいいかも!」「たよりなさそうだな」「なんだっていいよ。実力があればね」「彼女とかいるのかなー?」


 ざわつく教室に教頭が静める。

 静かになったところで、教頭が男に自己紹介を促す。


「初めまして、本日より実技を担当する非常勤講師の天崎守あまざきしゅうです」


 …………。


「?」「?」「?」「?」


「?」


「それだけかね?」


 教頭が天崎に尋ねる。


「えー。まーそうですね」


 天崎は何故そんな質問をされたのか理解ができていないようで、なんとも間抜けな返答をする。


「君は雨乃あまの君から聴いていた通りの人物のようだ」


 人伝に聞いた人物像に一致していることで、呆れたようにいった。


「何を雨乃さんに聞いたかわかりませんけど、おそらくその情報は間違っているかと思います」


「では、天崎君に質問のあるものはいるかね?」


 これでは先へ進まないと判断した教頭は、生徒に委ねることにした。

 突然のフリではあったはずだが、待っていましたとばかりに手が挙がる。

 2人用の長机が横3×縦4の12の教卓から見て左手の1席が未使用で計23名となっている。


「小宮君質問どうぞ」


 天崎は全く意識することなく生徒の名前を呼んだ。

 だがそのことに呼ばれた本人は驚きの表情を浮かべる。


「僕の名前覚えてるんですか?」


「今朝生徒名をを受け取ったからそれを見て全員顔と名前は一致しているよ」


「今朝……ですか?」


「今朝で覚えられるものかな?」「無理じゃないか?」「無理でしょ」


 なぜ覚えられているのだろうと、当の本人も生徒に指摘されて疑問に思っている。


「小宮君、質問は?」


「そうだった! あの、先生はESP隊員として実践を積んでいるんですよね?」


「そうだね。10年近くにはなるかな。正式期間でいえば2年だね」


 手を挙げる生徒とにどうぞとジェスチャーぜ促す。


「10年て言ってましたけど、先生の年齢はどう見ても10代から20代前半ですけど、今何歳なんですか?」


「30になる」


「「「「「「「「「「エーーーーーーー!!」」」」」」」」」」


 はたと天崎は前にも? こんなことがあったような気がすると思った。

 ハッキリとはしていないが、似たような光景ややり取りをした記憶や感覚といったものを曖昧ながらも感じている。それはもう一人の自分がいるような気持ち悪い感覚で一瞬の思考停止を天崎に与えた。

 そんな天崎の意識を取り戻したのは一つの視線であった。

 その視線は他のものとは確実に異なるもので、覚悟を含んだようなものであった。

 その視線へ顔を向けると、視線はなりをひそめた。


「先生どうしました?」


 前列に座る可愛らしい薄い青色の髪を持つくせ毛の小柄な女の子が心配そうに尋ねた。

 

「どうもしてないよ。ちょっと緊張しているみたいだ」


 平静を装いながら視線の持ち主を見ると、窓の外をつまらなそうに眺めていた。

 姫精ひなもりレイ。艶やかなセミロングの黒髪に横顔からでもわかる切れ長の目。年相応のかわいらしさを残しながらも色気を感じる。容姿だけではなく成績上位者でもある。そんな彼女が何故? と疑問がいつまでも答えをうまない。


「質問いいっすか!」


 クラス内で最も体格のいい一番後ろの中央に座る青年。

 このクラスでの唯一の実践経験者ーー大岡おおおかカイ。

 実践を経験しているが故に


「どうぞ。応えられることなら」


「先生の所属課と部隊名教えてもらっていいですか?」


 (やっぱりそれをきくよな)


 生徒一人を除いた生徒全員の視線が一点に集まる。

 教えてもらう相手の実力を知りたくなるのは当然である。実りある時間になるかは天崎にかかっているのだから。


「特命研究課、第0部隊だ」


 サラリと答えた天崎だが、理解できるものは教頭を除いて居なかった。


「特命研究課? 第0部隊? 聴いたことないっすよ! からかってます? 笑えないっすよ」


「いや、からかってるつもりは全くないけど」


 ESP研究機構を目指すものであれば知っていて当然の内容ではあるが、特命研究課、ましてや第0部隊など存在しない。大きく3つに防衛課と支援課に研究課に別れている。その中でも防衛課には76の部隊と支援課120部隊にが存在する。そのどちらにも第0部隊など存在せず。特命研究課も存在していない……ことになっている。

 何故に所属課と部隊名を気にするのか。それはランク付けされているためである。もっとも最強の部隊が第1部隊で2・3・4……とと続く。

 そんな順位にすら入れないのが第0部隊。どこにも属せなかった問題を抱える者たちの集まりである。


「一般に知られていないくらいに力のない部隊だ」


 天崎ははっきりと答えた。


「そんなやつから教えられるのはゴメンだね! 俺たちを馬鹿にしているとしか思えない」


 教室の中央部に座る細身の男子生徒が笑いながら言う。


「全くそうだね」


 またも天崎ははっきりと答える。


「あんたにはプライドがないのか?」


「ないよ」


「やっぱり馬鹿にしているな!」


 天崎は挑発するつもりでいったわけではないが、男子生徒にはそうは受け取れなかったようで、怒りの表情を浮かべて席を立った。

 こんな状態になれば流石の教頭も仲裁に入った。

 初日のつかみとしては最悪であるのは間違えない。

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